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三菱電機・パナソニックが空調シフト ダイキンを追う

日経ビジネス電子版

電機大手が空調事業に重点をシフトしている。三菱電機は空調冷熱システム事業の売上高を2025年度に約1.5倍に引き上げる目標を掲げた。パナソニックは、旧松下電工との融合を狙った社内カンパニー、空質空調社を新設。空気の衛生面など新型コロナウイルスの感染拡大で需要が高まる空調事業に各社が力を入れ始めたが勝算はあるのだろうか。

三菱電機は11月11日、空調冷熱システム事業の説明会で25年度の売上高を20年度の約1.5倍となる1兆2600億円にする目標を明らかにした。欧州と中国、アジアに研究開発拠点を新設、地域特性に合った商品開発ができる体制を整備する。生産体制では、潜在成長力が高いインドに工場を建設することを検討、25年度までの5年間で製造設備に約1800億円を投じる予定だ。

三菱電機、重点5事業で空調を最大の売上高に

三菱電機の空調事業への力の入れようは、工場の自動化や自動車の先進運転支援システム(ADAS)など他の重点4事業と比較して25年度の売上高目標が最大であることから見て取れる。脱炭素の環境規制によって省エネ性の高い空調の需要が高まり、担当者が「欧米の目標を、今年6月の数値から1500億円分、上方修正した」と明かすなど成長へアクセルを踏む。

国内では11月1日、液晶テレビ事業を縮小すると発表。決断の背景として、「成長分野である空調事業へ資源を割く必要性がまずあった」(同社関係者)という。現在、液晶テレビの生産拠点である京都製作所(京都府長岡京市)の従業員1人1人に空調事業への異動を打診している。全社を挙げて成長市場である空調事業へ人や資金を集中させる。

パナソニックは業務用空調に注力

22年4月に持ち株会社制になるのを前に、この10月、組織改編が行われたパナソニック。グループで最大の事業会社となるのが家電分野を担う「パナソニック」で、その傘下の5カンパニーのうち、最も成長余地が大きいと期待されるのが空質空調社だ。

「空調は1丁目1番地だ」。10月下旬、空質空調社の幹部は、従業員にそう発破をかけた。空質空調社は、旧松下電工の組織と旧松下電器産業の組織を融合したカンパニー。国内トップクラスの販売台数を誇る家庭用空調に対し、業務用空調の国内シェアは1ケタにとどまる。新カンパニーの発足を最後のチャンスと捉え、同社はこの数年で国内の業務用空調シェアで上位に食い込む考えだ。

海外の業務用空調は、企業向けが強い旧松下電工の販路を生かせそうだ。微粒子イオンをつくる旧松下電工の「ナノイー」のほか、三洋電機、旧松下電器の流れを組む、次亜塩素酸を用いた「ジアイーノ」といった除菌・消臭技術をラインアップとしてそろえ、新型コロナで増える顧客の細かなニーズに対応する。

事業会社「パナソニック」をつくる主眼の1つは旧松下電工と旧松下電器の融合。この融合の成否が、空質空調社の成長を左右しそうだ。

50年に現在の約3倍の台数に増えると予想される世界の空調市場。温暖化によって途上国では新設需要が膨らむほか、新型コロナによって衛生が重視されるようになり、先進国では換気や除菌など付加価値が付いた空調の需要が増加するとみられている。こうした市場の成長をにらみ、電機大手は空調シフトを鮮明にするものの、立ちはだかるのが専業メーカーで世界首位の売上高を誇るダイキン工業だ。

ダイキンは最高益更新へ

11月4日に発表した22年3月期の連結純利益2030億円は過去最高となる見込みだ。それでも、ダイキンは「最低限の必達目標」(十河政則社長)と慎重に見積もり、上振れする可能性がある。昨年から今年にかけて、コロナ禍の危機を糧に、より強固なサプライチェーンを築いた。半導体確保にもいち早くめどを付けたことも業績に貢献。21年3月期に約2兆2700億円だった空調の売上高は24年3月期に2兆8150億円まで伸ばす計画だ。

三菱電機やパナソニックは自社の空調事業の成長に期待をかけるが、ダイキンの動きは他社より早い。三菱電機が今回移行を明らかにした地域ごとの開発体制は、ダイキンは10年以上前に構築。換気、加湿機能の付いた空調も、ダイキンはすでに約20年前に発売しているが、パナソニックは今秋に初めて展開した。各社がダイキンの背中を追いかける構図だ。

三菱電機は「欧米での成長率が高い」とするが、米国の空調大手グッドマンを買収したダイキンでさえ、消費者の空調の新製品への感度が日本ほど高くない米国市場での事業拡大には苦戦している。空調を手掛ける別の電機大手首脳は「なぜ我が社の空調は、ダイキンのように事業拡大できないのか」と悔しさをあらわにしたこともあった。

地域特性が商品開発に強く反映される空調は現地企業が強いという傾向もある。市場に追い風は吹いているが、魅力ある事業には参入者も多くなる。空調市場を巡る競争は一段と激しさを増しそうだ。

(日経ビジネス 中山玲子)

[日経ビジネス電子版 2021年11月17日の記事を再構成]

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