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美×IT「ビューティーテック」 コロナ下で勢い増す

人気のD2Cブランド、グロッシアーのショールーム兼店舗
CBINSIGHTS
化粧品・日用品業界は外出制限などの影響を受けたものの、世界のスタートアップの資金調達額は増えている。メーキャップ化粧品に代わって伸びているスキンケア化粧品を扱う企業のほか、美容サロン運営のデジタル化など美容領域にIT(情報技術)を掛け合わせた「ビューティーテック」関連企業に勢いがある。
日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大にもかかわらず、2020年の美容・パーソナルケア分野のスタートアップによる資金調達額は20億ドルを超えて過去最高に達した。21年もこの勢いは続きそうだ。21年に入って4月2日までの美容・パーソナルケア分野への投資額は合計11億ドルに達し、20年1~3月期の2億3800万ドルを大きく上回っている。

美容・パーソナルケアの投資トレンド 11~21年(4月2日時点)の新株発行を伴う資金調達

消費者はコロナ下のこの1年、セルフケアの一環としてスキンケアなどに目を向けている。コロナ前から人気が衰えつつあったメーキャップ化粧品は、外出規制やマスク着用の常態化でさらに大きな打撃を受けた。今回の分析では、美容・パーソナルケア分野のトップ投資家と、こうした投資家が資金を投じている分野について取り上げる。

(注)この分析ではエンジェル投資家、アクセラレーター(支援家)、クラウドファンディングは除外した。

美容・パーソナルケア分野のトップ投資家

15年から直近までの合計で美容・パーソナルケア分野への出資件数が最も多かった投資家トップ3は、英ユニリーバ・ベンチャーズ、米サークルアップ、米500スタートアップスだった。

美容・パーソナルケアのトップ投資家 (15年~21年4月2日の投資企業の数)

最も活発な投資家はユニリーバ・ベンチャーズで、出資したスタートアップの社数は14社になる。

同社の投資先を分析すると、美容・パーソナルケア全般に広く関心があることがうかがえる。20年にはスキンケアの英BYBI、インドのピュアプレイ・スキン・サイエンシズ(PurePlay Skin Sciences)、米トゥルー・ボタニカルズ(True Botanicals)など6社に投資した。20年1月には女性用ケアブランド、米ラエル(Rael)のシリーズAにも参加した。

ユニリーバ・ベンチャーズはスタートアップ5社については複数回投資している。その5社は、化粧品・スキンケア製品などのネット通販を手掛ける米ミラ・ビューティー(Mira Beauty)、体や環境に優しい成分を使った「クリーン」スキンケアブランドのトゥルー・ボタニカルズ、出張美容プラットフォームを手掛ける英ブロー(Blow)、育毛サプリの米ニュートラフォル(NUTRAFOL)、メーキャップ化粧品の米ビューティー・ベーカリー(Beauty Bakerie Cosmetics Brand)だ。

台頭する投資分野

トップ投資家は、(美容師と顧客をつなげる)出張美容プラットフォーム(オンデマンドプラットフォーム)からスキンケア製品に至るまで、美容・パーソナルケアの様々な分野に資金を投じている。

トップ投資家からの投資件数が最も多いのはスキンケア企業 (15年~21年4月2日の分野別の投資件数)

トップ投資家からの投資件数が最も多いのはスキンケア企業

中でもトップ投資家が最も注目しているのはスキンケア企業だ。消費者はここ数年、メーキャップよりも時間をかけて美を追究する方法を好むようになっている。さらに、スキンケア製品は男性や若者からも注目を集めている。CBインサイツの推計では、現在のスキンケア市場の規模は1840億ドル相当に上る。

トップ投資家はスキンケア分野の3つのタイプの製品・サービスに特に注目している。

・消費者に商品を直接販売するD2C企業:D2C(ダイレクト・ツー・コンシューマー)のユニコーン(企業価値が10億ドルを超える未上場企業)、米グロッシアー(Glossier)は強力なコミュニティーと熱心なファンを持つブランドの代表格だ。同社はスキンケア製品からスタートし、今やボディーケア製品や香水にも手を広げている。

・クリーンな成分(体に悪そうなものを含まない):投資家は植物由来の原料を使う米ティードラ(Teadora)やトゥルー・ボタニカルズ、腸内で人体によい影響を与える微生物であるプロバイオティクスを使う米トゥーラ・スキンケア(TULA Skincare)、英ガリネー(Gallinee)など、ユニークな有効成分を強調したブランドに出資している。

・肌の健康:米トピカルズ(Topicals)や米エピセンシャル(Episencial)などのブランドは、皮膚科で治療を受けることが多い肌のトラブルにクリーンな市販品で対処している。

投資家、法人向けの予約ツールや出張美容ツールにも注目

投資家は美容サロンやスパの運営の効率化やデジタル化を支援する企業に資金を投じている。法人向け予約システムを手掛ける企業への投資件数は全体の12%、出張美容プラットフォームは11%を占めている。こうしたプラットフォームは予約、予約の管理、業務内容の紹介、決済の受付などのツールや機能を備えている。

ユニコーンの米ゼノティ(Zenoti)は50カ国以上のサロンに運営ソフトを提供している。同社は21年のシリーズDで1億6000万ドルを調達した。一方、米スクワイヤ(Squire)は理髪店専用の運営ソフトを手掛ける。

公表ベースの調達額が4200万ドルを超える米スタイルシート(StlyeSeat)は、自社のプラットフォームを使用するサロンは売上高を70%近く増やせるとうたっている。

複数のトップ投資家から出資を受けている企業

15年以降に2社以上のトップ投資家から出資を受けた企業は以下の図表の通りだ。

2社以上のトップ投資家から出資を受けている美容・パーソナルケアのスタートアップ (トップ投資家による15年以降の投資の概要)

このうち、グロッシアー、ニュートラフォル、生理用品ネット通販の米ローラ(Lola)の3社はトップ投資家11社のうち3社から出資を受けている。このスタートアップ3社は注目される以下の新興・有望分野を象徴している。

・D2Cコミュニティーのつながり:グロッシアーは消費者と強いつながりを持つD2Cブランドのリーダーだ。

・美容製品としての栄養摂取:ニュートラフォルは、口から摂取する美容製品・サプリへの関心が高まりつつあることを示している。

・サステナビリティー:ローラは健康志向というアプローチでサステナビリティー(持続可能性)とオーガニック(有機)成分に力を入れるブランドの実例だ。ブランド戦略の一環で「生理」などこれまで表だっては話しにくかったことを話題にしやすくすることも目指している。

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