早稲田大学、リチウム金属電池で高容量化技術

早稲田大学特任研究教授の逢坂哲彌氏の研究室が、リチウム金属電池の高容量化に向けた要素技術を開発したことが日経クロステックの取材で明らかになった。負極にリチウム金属を用いるリチウム金属電池は、次世代電池の1つとして開発が進む。
開発した技術を採用して70ミリメートル(mm)×70mmのラミネートセルを作製した場合、外装抜きの体積エネルギー密度が1リットル(L)当たり1758ワット時(Wh)、重量エネルギー密度が1キログラム(kg)当たり465Whと試算されるという。「リチウム金属電池を手掛ける海外企業を大幅に上回る体積エネルギー密度」(逢坂氏)と胸を張る。
これまでは、例えば、Enpower Japan(エンパワージャパン、東京・港)が体積エネルギー1100Wh/L、重量エネルギー密度520Wh/kgのセルを発表した他、2021年12月にホンダが共同開発契約を締結した米SESが935Wh/L、417Wh/kgのセルを発表している。
エネルギー密度を高めた手段として研究グループは、(1)正極活物質のNMC(ニッケル、マンガン、コバルト)担持率を最大化する(2)電解液量を最小化する、の2点を挙げた。
(1)については、電極形状を維持するための「バインダー」の量を減らすことで対応。バインダー量を少なくしても、厚塗り塗工できる上に乾燥工程でき裂が生じにくいプロセスを新開発したという。(2)については、一般に電解液量が減ると電解液が偏在しやすくなるが、高分散導電助剤で分散性を高めてこれに対処した。
正極にはNMC811(ニッケルとマンガン、コバルトの比率が8対1対1)を用いる。リチウム金属電池はデンドライト形成により劣化してしまう課題があるが、それにも対応しているという。ただし、「特許出願中の技術のため詳細は非公開」(早稲田大学主任研究員の三栗谷仁氏)としている。

逢坂氏の研究室では、これらの技術を採用した20mm×20mmの小型ラミネートセルを作製。このセルで得た充放電特性を基に、容量5アンペア時(Ah)、セルサイズ70mm×70mmに大型化した場合のエネルギー密度を推定した。
その結果、冒頭に述べたように体積エネルギー密度1758Wh/L、重量エネルギー密度465Wh/kgに到達する見込みが立ったとする。なお、サイクル寿命は「未測定」(同氏)である。
(日経クロステック/日経エレクトロニクス 土屋丈太)
[日経クロステック 2022年2月17日掲載]
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