テレコムスクエア、Wi-Fiレンタル 非接触で完結

通信サービスのテレコムスクエア(東京・千代田)が始めた無人のスポットでWi-Fiルーターを貸し出すシェアリングサービスが好調だ。インターネット上で申し込んだ後に駅や空港の専用機器でルーターを受け取り、返却することができる。非接触でサービスが完結する簡便さが人気を集めている。今後はアジアなど国内外での展開を目指す。
東京駅のコンビニエンスストア。スマホを1分ほど操作した後、設置されたボックスから手のひらサイズの黒色の機器を引き出す――。
テレコムスクエアが2022年から展開する「WiFiBOX」はWi-Fiルーターとモバイルバッテリーが一体になった機器を専用ボックスから自分で抜き差しするだけで受け取り・返却が完了するサービスだ。22年12月に新設した東京駅構内のボックスでは帰省や旅行の需要があり、多い日で1日100個以上が貸し出されたこともある。
利用するには公式サイトで事前予約をした上で、駅や空港にあるルーターが格納されたボックスのサイネージ画面からQRコードを読み取る。申し込み内容がボックス経由でルーターにインプットされ、そのまま引き出せばすぐに使用可能だ。
空きがあれば当日、その場での申し込みもできる。専用ポーチや充電器などの付属品はなく、スマホや本体を充電する際のケーブルは端末に格納されている。
日本以外に米国や中国など約130カ国・地域で利用可能で、使用容量に応じて1日あたり300〜1000円程度のプランを選択することができる。22年12月時点で成田空港や関西国際空港、東京駅など6施設の13カ所に専用ボックスが設置されている。今年から設置場所を駅や観光案内所などに拡大する予定だ。
テレコムスクエアの田村正泰最高経営責任者(CEO)は「渡航者の伸びに応じて、インバウンド(訪日外国人)の利用者も増えている」と話す。最大で1万台程度を貸し出せる体制を整えた。
非接触でのレンタルを可能にしたのはクラウドSIMを採用したからだ。QRコードを読み取ると顧客の申し込み内容が数秒で該当ルーターにインプットされる。これまでのレンタルサービスでは対面や郵送で受け取り、返却する方法が多かった。
田村CEOは「顧客のオーダーに応じて機器にSIMカードを差し替える必要があり、人手にコストがかかっていた」と話す。従来サービスと比べて運用コストを20%削減し、低価格帯でのサービス提供を実現した。
19年ごろから構想はあったが、当時は既存サービスが好調で対面の接客に力を入れていたこともあり開発には至らなかった。しかし新型コロナウイルス禍で、海外旅行などの際に利用される機会が多かったWi-Fiのレンタルサービスは大打撃を受けた。非接触が注目されるようになる中で、新型コロナ後に受け入れられるサービスとしてデジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性を強く感じ、数億円かけて開発に至った。
「コロナ下でウェブ会議なども定着し、ネット環境はインフラとしての重要性が高まっている」(田村CEO)。Wi-Fiルーターを借りる場合、目的地ではなく出発する地域で調達する人が多い点から、今後は国内だけでなくアジアなど海外でのサービス展開もにらむ。
(鬼頭めぐみ)
