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無印良品「中食」に挑む 弁当・総菜…本社に実験店

日経ビジネス電子版

デパ地下のようであり、コンビニやスーパーマーケットのようでもある。

「無印良品」を展開する良品計画が2022年1月14日、新たな小型店をオープンした。店名は「MUJIcom(ムジコム)東池袋」。場所は本社ビルの1階だ。まさにお膝元に構えた新店舗は、さまざまな食の提案を詰め込んだ実験店だった。

「ただいま焼きたてです!! 本日のやきいもは紅はるか 税込み250円」

店内に入ってすぐの場所で売られていたのは焼きいもだった。その近くには青果が並び、青森県の契約農園から届いた「不揃い(ふぞろい)りんご」を1個100円(税込み、以下同)で販売している。ポップにはこうあった。「形や色は不揃いでも味は変わりません!」

「本日ののり弁」「本日の混ぜご飯弁当」は500円のワンコイン価格だ。弁当は全部で8種類あり、そのうち2種類を日替わりで販売する。弁当5個2300円の「デジタル回数券」を買えば、1食当たり460円になる。

店内の中ほどに進むと、ショーケースがあり、総菜の量り売りをしていた。

「ごろごろ野菜のラタトゥイユ」(100グラム360円)、「ふろふき大根ゆず風味の鶏そぼろ」(100グラム360円)、「ざくざく和牛コロッケ」(1個120円)……。

実は、弁当も総菜も店内で調理している。いわゆる「中食」の領域に初めて斬り込んだのが、この新店舗の特徴だ。イートインスペースもあり、店内で食事もできる。

総菜コーナーの隣には「50種のごちそうレトルトバー」が併設されていた。その名の通り、カレーや八宝菜、ユッケジャン、麻婆豆腐など、無印良品ブランドのレトルト食品を50種類そろえており、店舗スタッフがその場で温め、ご飯とともに器に盛りつけてくれる。

この他、白米や玄米の量り売りコーナーがあり、牛乳、チーズなどの乳製品、豆腐や野菜、食パンなども扱っていた。埼玉県産の放し飼い卵は1個から購入できるという。

良品計画は弁当や総菜、レトルトバーなどからなる、この中食サービスを「MUJI Kitchen」と命名。野菜を中心に旬の食材を使った健康的なメニューを提供するというコンセプトで運営していく。

「実生活に近づきたい」

既に全国で30店近く出している小型店のMUJIcomは、無印良品の数ある商品の中から、日常生活に欠かせない必需品を食品、日用品、衣料品の各カテゴリーからえりすぐって販売する業態だ。ところが、東池袋店はこれまでとは違う意味合いを持つ店舗なのだという。

「今までのMUJIcomは、駅の商業施設内や、駅近など、自然と人が集まる場所に出してきた。よりお客さんの実生活に近いところで、どんなニーズや要望があるのか試したいと思っていた」。良品計画営業本部販売部長の片木志倫氏はこう語る。

東池袋店も、東京メトロ有楽町線の東池袋駅から徒歩3分という駅近立地だが、一方で住宅とオフィスが混在したエリアでもある。片木氏によると、周辺には約2万5000世帯の住民がいて、約6000の事業所がある。

「ここに住んでいる方、働いている方にとって必要な商品やサービスって何だろうと考えた」(片木氏)

東池袋店の売り場面積は約400平方メートル(117坪)。無印良品の標準店は約1650平方メートル(500坪)で、旗艦店は約3300平方メートル(1000坪)を超えるため、小ぶりの店舗だ。それでも食料品に関しては、無印良品の全ラインアップを集めた。結果、店内にある約1300アイテムのうち6割の約800アイテムが食料品で、残りが日用品と衣料品という、かなり「食」に力を注いだ棚割りになった。

特に冷凍食品コーナーは、一見の価値がある。チョコクロワッサンやみたらし団子、五目いなり、韓国風のり巻きの「キンパ」、さらには新商品となるうなぎ巻き、たまご巻きまで、バラエティーは豊富。店外には冷凍機能を備えたロッカーを設置しており、ネットで注文すれば、冷凍食品を24時間、いつでも受け取ることができる。

「地域のコミュニティーセンターに」

食の充実と並んで目立つのは、「地域とつながる」取り組みの数々だ。良品計画は今回の店舗を「地域密着型小型店」と位置付ける。

例えば「つながる屋台」では、池袋周辺の名店の自慢の一品を月替わりで販売する。22年1月は西池袋の和菓子店「三原堂」の「池ぶくろう最中(もなか)」と、南池袋の自家焙煎(ばいせん)コーヒー店「ぽんでCOFFEE」の一口パン「ぽんで」を紹介していた。

「つながる掲示板」は地域の回覧板的なスペースで、池袋の飲食店やイベントのチラシなどを掲示。「つながるコーヒー」は来店者同士でコーヒーを贈り合う試みだ。1杯50円で購入できるコーヒーチケットにメッセージを書き込んでボードに張ると、後で来店した人はそのチケットをレジに持っていくだけでコーヒーが飲める。1枚のチケットは前に訪れた誰かが置いていった気持ちであり、その気持ちをまた誰かがチケットに託して、人と人がつながっていくというアイデアだ。

「つながりがつながりを呼び込んで、人の輪が広がる。そんな地域に溶け込んだコミュニティーセンターを目指していきたい」と良品計画の片木氏は意気込む。

この他にも、マイボトルを持参すれば無料で水がくめる給水機を設置したり、家庭で余った食品を回収し、地元のNPO法人を通じて子ども食堂などに提供する「フードドライブ」を展開したりと、思いつく限りの実験的なサービスを盛り込んだという印象だ。専用アプリに手持ちのクレジットカードを登録することで使えるキャッシュレス決済「MUJI passport Pay」や、セルフレジも導入している。

2030年に3兆円企業目指す

良品計画はファーストリテイリングの幹部を務めた堂前宣夫氏が21年9月1日付で社長に就き、30年に売上高を現在の6倍となる3兆円に高める目標を掲げた。そのために24年8月期までの中期経営計画では、地域に密着した個店経営に軸足を移し、日本国内で年平均100店舗の純増を続ける方針を示した。

地方のロードサイドでは、集客力のある地場スーパーの隣に店を構える戦略で出店を拡大しているが、「都市部はどんな形の出店がいいのかを探求し続けている状況だ」(片木氏)という。

MUJI Kitchenを備えた今回の店舗は、その試みの1つ。「現時点では、はっきりと何店舗まで増やすという展望はなく、まさにこれから。トライアルを重ね、お客さんとのギャップを確認しながら修正し、このフォーマットを広げていきたい」と片木氏は先を見据える。

総菜も弁当も競合は多いが、良品計画は「Cafe&Meal MUJI」というカフェ業態を展開し、世界旗艦店の「無印良品 銀座」ではレストラン「MUJI Diner」を運営している。メニュー開発の蓄積を生かし、中食でもMUJIブランドを確立できるか。実験店を次なる成長へと導くフォーマットに昇華させることが、3兆円企業を目指すうえで避けては通れない挑戦となる。

(日経ビジネス 酒井大輔)

[日経ビジネス電子版 2022年1月14日の記事を再構成]

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