ジヤトコ、クラッチに2種類の「生物模倣」で微細加工
自動車の変速機大手のジヤトコ(静岡県富士市)は16日、湿式クラッチのスチールプレートにカエルとキリギリスの足裏を参考にした微細な表面形状をつくり込み、摩擦特性と耐久性を両方とも向上させる技術を開発したと発表した。スチールプレートは摩擦材が付くフェーシングプレートに対向する部品で、クラッチの性能向上はこれまで摩擦材側の改良に頼っていたが、新技術によりスチールプレート側の改良でクラッチ性能を高める。
カエルとキリギリスの足裏にはそれぞれハチの巣のような六角形模様の微細構造があり、カエルの足にはぬれた接触面をグリップする機能、キリギリスの足には接触面と引っかかったり滑りすぎたりせずに一様の摩擦を生じる機能があるという。同様の六角形模様をスチールプレート表面に加工すると排油性が高まり、クラッチとしては低温時の伝達安定性と耐久性が高まる。同社は社内試験で大幅な特性向上を確認した。


「2種類の動物からヒントを得て開発するのは、(生物の体表面の形状を製品の高機能化に応用する)バイオミメティクス(生物模倣)としては珍しい」(ジヤトコ)としている。ジヤトコは今後、自動変速機(AT)、無段変速機(CVT)や電動車両用駆動モジュール(電動アクスル)のほか、さまざまなモビリティー関連製品に適用を検討していくとしている。量産技術はマイクロプレス技術を持つ特殊発條興業(トクハツ、兵庫県伊丹市)と共同で開発している。
(日経クロステック/日経ものづくり 木崎健太郎)
[日経クロステック 2022年5月17日掲載]
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