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勝ち組スシロー、自社デリバリー拡大はいばらの道か

日経ビジネス電子版

回転ずし「スシロー」を手掛けるFOOD&LIFE COMPANIESが、自社デリバリー網の整備を進めている。9日に開いたテークアウト戦略説明会では、外部のデリバリーサービスだけではカバーできない需要を取り込むと狙いを語った。

新型コロナウイルス禍にあって業績が好調なFOOD&LIFE COMPANIES。11月5日に発表した2021年9月期の業績は、売上高に当たる売上収益が前期比17.5%増の2408億円、営業利益が同89.9%増の229億円となった。外食業界が苦境にあえぐ中でも積極的な出店を継続。21年9月期はテークアウト専門業態の「スシロー To Go」を含め、国内で新たにスシローブランド52店舗を開いた。

売上収益の88.5%を占める国内スシロー事業をさらに成長させる戦略の1つとして取り組むのが、自社デリバリー網の拡大だ。21年11月9日時点で自社デリバリーを導入済みなのは33店舗。20年9月末から1年余りで30店舗増やした。今後も「出前館」や「ウーバーイーツ」といったフードデリバリーのプラットフォーマーが進出していない地方などを中心に自社の配達網を広げる考えだという。

すしはファミリー層や年代を問わないハレ(祝い)の日需要も狙える商材で、「出前」との親和性も高い。自宅で食事を取りたいという需要がコロナ禍で高まったこともあり、国内スシロー事業のデリバリー売上高は急伸している。20年9月期は前期比6倍の12億円、21年9月期はその2.5倍の30億円となった。

これまでスシローでは6ブランドの外部デリバリーサービスを導入し、持ち帰り専門店を除く全国601店舗のうち482店舗をカバーしている。それでも自社デリバリー網を整備するのは、「スマートフォンのアプリでの注文になじみがない高齢者や、外部のデリバリーサービスが対応していない地方のデリバリー需要を取り込みたい」(堀江陽・FOOD&LIFE COMPANIES常務執行役員)と考えたからだ。

11月12日に発表した3カ年の中期経営計画では、国内スシロー事業のデリバリー売上高を24年9月期に50億円まで拡大する目標を掲げる。

一筋縄ではいかない自社デリバリー

外食デリバリー市場は、コロナ後も伸長すると予測されている。日本能率協会総合研究所(東京・港)の推計によれば、フードデリバリーサービスの市場規模が22年度は3300億円、25年度は4100億円となる見込みだ。

ただし、市場拡大のけん引役となるのはデリバリーのプラットフォーマーだというのが業界の一般的な見方だ。自社デリバリーを前提に店舗展開を進めた宅配ピザなどの企業を除き、現時点で自社デリバリー網を整備できている外食大手は多くない。

大々的に導入している企業の代表格は日本マクドナルドホールディングスすかいらーくホールディングスだ。両社ともにコロナ禍の前からデリバリー事業に本格的に取り組んできた。

それを追いかけるような形になったスシローだが、自社デリバリーを採算に合う形にするのは容易ではないだろう。人手不足と、オペレーション負荷増大という2つの課題を乗り越えなければならない。

緊急事態宣言が10月に解除されたことを受けて、外食業界は再び人手不足に陥るとの見方が強まっている。求人サイト「バイトル」を運営するディップによると、10月最終週の飲食業関連の求人件数は、緊急事態宣言下だった8月第1週と比べて7割以上増加した。

「第6波への警戒感からか、求人募集への反応も芳しくない」(外食大手関係者)との声も聞かれる。スシローが自社デリバリー網を担う人材の採用を思うように進められなければ、潜在需要の掘り起こしが画餅に帰す恐れがある。

オペレーションの負荷増大も無視できない難題だ。スシローの自社デリバリーで受け付ける電話やFAXの注文は、アプリ経由での注文のようなデジタル技術による省力化が難しい。堀江氏も「オペレーションが複雑化することは事実。そうした部分はうまく整理して解決したい」と話す。

ある外食大手トップは「勝ち組とされるマクドナルドですら、デリバリーの現場はバタバタしている」と指摘する。日本マクドナルドの関係者からは「ライダーの配置など人員確保は相当に大変。特にランチタイムなどピーク時は人繰りがままならない時も正直ある」との声も漏れ聞こえてくる。

店舗当たりの売上高を重視

こうした難題が待ち構える「いばらの道」とも言える自社デリバリー網の整備。それでもスシローが取り組むのは、店舗当たりの売上高をさらに高める余地があるとみるからだろう。

FOOD&LIFE COMPANIESの21年9月期の決算説明会資料には興味深いデータが掲載されている。それは「日本国内におけるスシローのポジション」と題した資料。スシローの店舗当たり年平均売上高が3億6100万円で、他の回転ずし大手の2億円~2億8900万円を上回る水準だと示している。こうしたデータを対外的に示していることも、同社が1店舗あたりの売り上げの最大化を重視していることの表れだろう。

持ち帰り専門店を展開するほか、持ち帰り客用の「自動土産ロッカー」を169店舗(11月9日時点)に展開するなど、スシローでは店内飲食以外での売り上げの積み増しを狙った施策が目立つ。入店まで1時間、2時間待ちとなるケースもある回転ずしチェーンでは、混雑で入店を諦めてしまう消費者から得られたはずの機会損失も小さくない。電話での注文受け付けや地方部でのデリバリーには確かに需要がありそうだ。

ただ、市場原理では採算が合わないからこそサービスの空白地帯になっていたともいえる。そうした課題はスシローも承知しているだろう。デリバリーのプラットフォーマーに任せるだけでは実現できない新たな価値を生み出して、自社デリバリーで採算を確保できるか。外食業界がデリバリーを自社でやるか他社に任せるかを判断する試金石になる。

(日経ビジネス 神田啓晴)

[日経ビジネス電子版 2021年11月17日の記事を再構成]

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