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顧客管理や自動応答 スーパーアプリ活用ツール74社

CBINSIGHTS
生活に身近なサービスを一括提供する「スーパーアプリ」がアジアを中心に普及し、消費関連企業にとっても欠かせない存在になっている。買い物や決済などに使う人が増え、企業がそれをどう使いこなすかで売り上げが変わるようになってきたからだ。顧客管理や自動応答など企業向けのスーパーアプリ活用ツールも増えており、それらを提供するスタートアップ74社をまとめた。
日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

スーパーアプリはいわば「何でも屋」だ。対話やオンラインでの買い物、配車など様々なサービスを一つのアプリで提供する。

この手法はアジアで大成功を収めているが、欧米ではまだ根付いていない。もっとも、一部のテック大手はより多くの消費者に到達するモデルとしてスーパーアプリに注目している。

スーパーアプリと呼べるアプリは、中国のキャッシュレス決済サービス「支付宝(アリペイ)」や東南アジアの配車アプリ「グラブ」などいくつかあるが、消費財メーカーと小売企業が注目すべきなのは、中国のネット大手、騰訊控股(テンセント)の対話アプリ「微信(ウィーチャット)」と、米メタ(旧フェイスブック)の対話アプリ「ワッツアップ」だろう。どちらも企業による消費者との対話や商品販売、データ収集を支援するテックエコシステム(生態系)を築いている。

例えば、中国を拠点とするウィーチャットのアクティブユーザーは12億人に上るとされる。ワッツアップはさらに多く、推定で20億人を超える。

ウィーチャットはメタのSNS(交流サイト)「フェイスブック」のようなコミュニケーション機能と、オンラインショッピングや銀行などのサービスを組み合わせた対話アプリだ。企業がウィーチャット内で作製できるアプリ「小程序(ミニプログラム)」も提供している。ミニプログラムはユーザーのスマートフォンへの負荷が少ないため、処理能力とメモリーが不足しやすい低価格のスマホにとって特に有用だ。

一方、ワッツアップは多くのユーザーにとってはもっぱら日常的なコミュニケーションツールだが、スーパーアプリ的な機能を拡充している。ウィーチャットのような企業がミニプログラムを作成できるインフラはないが、多くの外部企業は自社サービスをワッツアップに統合する独自の手段をみつけている。

今回はCBインサイツのデータに基づき、「チャットコマース&キャンペーンプラットフォーム」から「モバイルコマースのインフラ」まで9つのテクノロジー分野にわたり、消費財メーカーや小売企業に役立つスーパーアプリ活用ツールを提供する企業74社を抜き出した。

各カテゴリーについての説明

カレンダー管理テクノロジー:企業や消費者がワッツアップ内でスケジュールや予約を追跡し、管理できるようにする企業。他の人とスケジュールを共有するために複数のアプリを使うのではなく、予約をワッツアップにまとめられる。

米タイムリーAI(timelyAI)はワッツアップで会議や予約を管理でき、ユーザーは簡単に予定を立てられる。ワッツアップ内で自分のカレンダーをカスタマイズしたり、日々のスケジュールをチェックしたり、会議の通知を受けたりもできる。予約のリマインダーはワッツアップ内のメッセージとして送信される。

スペインのドゥー・トリックス(Do Tricks)はワッツアップのユーザー向けにバーチャル予約管理表を開発し、中小企業のスケジュール管理を支援している。この予約管理表で米グーグルの「Googleカレンダー」から予約状況を同期し、顧客が予約可能な時間枠を表示する。美容師や技術者、歯科医、営業チームなど、顧客に予約を入れてもらうサービス業の専門職を対象にしている。

チャットコマース&キャンペーンプラットフォーム:オンライン販売やマーケティングツールを提供している企業。ワッツアップのようなSNSアプリ上のターゲット広告で顧客と関係を築けるよう支援する。ウィーチャットやワッツアップは数十億人のユーザーを抱えているため、この分野の企業はこうしたスーパーアプリの人気を生かし、消費財メーカーや小売企業の顧客基盤構築を支援しようとしている。

例えば、ドイツのベルリンに拠点を置くチャールズ(Charles)は対話アプリで顧客とチャットしたり、顧客に商品を販売したりできる消費財メーカー向けプラットフォームを運営している。電子商取引(EC)企業がワッツアップや画像共有アプリ「インスタグラム」のチャットで顧客に直接割引を提供できる機能も手掛ける。チャールズは2022年7月、シリーズAで2000万ドルを調達した。

米モーエンゲージ(MoEngage)は小売企業が顧客と意思疎通するのを支援する。購入率を高めるため、ワッツアップで一人ひとりの顧客に応じた画像や映像、ギフトなどのターゲットキャンペーンも提供できる。

トルコのインサイダー(Insider)のプラットフォームも、一人ひとりに応じた販促メッセージを送る機能によって消費財メーカーと顧客との関係構築を支援する。同社は2月、シリーズDで1億2100万ドルを調達した。

チャットボット搭載プラットフォーム:ワッツアップなどSNSでの対話を自動化し、チームを支援する企業。各社は買い手をサポートしてリピート客にするテックを活用したカスタマーサービスシステムへの投資を増やしている。

コロンビアのトレブル(Treble.ai)は営業やマーケティングチームがワッツアップで顧客と自動でやり取りできるBtoB(法人向け)ツールを提供している。このサービスは顧客情報管理(CRM)の米ハブスポットやグーグルの表計算アプリ「グーグルスプレッドシート」と連携しており、マーケティングチームが見込み客をセグメント化し、対話の内容を追跡し、データを営業ツールと同期することも可能だ。トレブルは7月、シリーズAで1500万ドルを調達した。

この分野の企業は採用や新入社員研修など、社内機能の向上にもチャットボットを活用している。例えば、ロシアのHRメッセンジャー(HR Messenger)はワッツアップや「テレグラム」「バイバー」などの対話アプリで退職者面接や面接後調査を自動で実施し、人事プロセスを効率化する。

顧客情報管理(CRM):クライアントの対話ルートを一つにまとめて顧客とのコミュニケーションを整理し、ワッツアップなどのSNSでの販売や販促のプレゼンスを支える企業。

シンガポールのプリビア(Privyr)は営業チームがワッツアップなどのSNSで見込み客を管理できるよう支援する。見込み客や一斉、個別に送信するメッセージなどについて、営業チームに自動フォローアップリマインダーを送る。同社は5月、シリーズAで600万ドルを調達した。

イスラエルのチュービス(Tuvis)は営業チームのワッツアップでのCRM機能を強化する。ワッツアップでチュービスのパネルのポップアップから会議の設定や電子メールの送信、タスクの作成ができる。同社は21年11月、アーリー(初期)ステージの資金として1100万ドルを調達した。

財務&注文管理プラットフォーム:ワッツアップなどのSNSと連携し、経理や注文、ベンダーの管理、財務報告などの機能をデジタル化する企業。

ナイジェリアのキッパ(Kippa)は国内の零細事業者向けのバンキング・会計アプリだ。ワッツアップのメッセージ送信機能を使い、銀行口座の開設、取引の追跡、請求書の送付を可能にする。ワッツアップを通じてECを開設し、注文を管理するウェブサイト構築機能の開発にも取り組んでいる。

南アフリカのスマートウェイジ(SmartWage)はパスワードで保護された給与明細書を送信し、雇用主がワッツアップで従業員に賃金を支払えるサービスを提供する。同社は4月、アーリーステージの資金として200万ドルを調達した。

ペルーのオラクリック(OlaClick)は飲食店がワッツアップで注文を受けたり、管理したりできるデジタルメニューを手掛ける。5月にアーリーステージの資金として400万ドルを調達した。

スムーズに使える決済テクノロジー:ワッツアップやウィーチャットを通じて個人や企業に送金や決済サービスを提供する企業。

中国の筒米(Ping++)は法人向けの収納代行サービスを手掛ける。ウィーチャットなど多くのルートを使ってオンライン事業を運営する企業を対象にしている。

中国の思店(Sidian)も法人向けの収納代行を手掛ける決済プラットフォームだ。このサービスにより、各社はウィーチャットやアリペイなど複数の決済ルートを一つにまとめることができる。思店は21年7月、アーリーステージの資金として200万ドル近くを調達した。

オーストラリアのロイヤルペイ(RoyalPay)は越境決済プラットフォームで中国とオーストラリアの企業をつなぐモバイル決済事業者だ。オーストラリア企業から商品を購入する中国の消費者のために、各社にウィーチャット、アリペイ、「翼支付(ベストペイ)」対応のPOS(販売時点情報管理)端末やQRコードを提供している。

マーケティング・インテリジェンス(市場戦略情報)&分析プラットフォーム:ワッツアップやウィーチャットなどSNSでのユーザーの行動の背後にあるデータを理解するツールを提供する企業。

中国の星雲有客(Xingyun Youke)はアパレルや美容、食品・飲料業界などの企業を対象に、ウィーチャットからの顧客データに基づいて需要やトレンドを分析するインテリジェント・マーケティング基盤を運営している。3月にシリーズAで1500万ドルを調達した。

米イースト・ゴーズ・グローバル(East Goes Global)は消費財メーカーや小売企業を対象に、欧米と中国のメディアマーケティングのギャップを埋めようとしている。同社はウィーチャットや中国のSNS「微博(ウェイボ)」などと提携しており、中国のSNS網で欧米のアーティストや著名人のマーケティングやブランディングを手掛ける。8月にアーリーステージの資金として100万ドルを調達した。

モバイルコマースのインフラ:消費財メーカーや小売企業によるミニプログラム作製を支援したり、ワッツアップやウィーチャットなど既存プラットフォームでのモバイル事業構築ツールを提供したりする企業。

インドのショップ101(Shop101)は独自仕様のオンラインストアで個人が商品を販売できるECプラットフォームを運営する。ワッツアップやフェイスブック、インスタグラムで取扱商品を簡単に共有できるため、多くの人に閲覧してもらえる。商品が売れた後、売り手に代わって配送や代金回収を担うサービスも手掛ける。

中国の即速応用(Jisu)はウィーチャットのミニプログラムやアプリでのECプラットフォーム構築ツールを手掛ける。共同購入や料理宅配など様々な分野の売り手を対象に、ミニプログラムのテンプレートや編集機能へのアクセスを提供している。EC開設後も注文の詳細をチェックしたり、店舗の販売戦略を管理したりできる。

オムニチャネル(実店舗とECの統合)テクノロジー:ワッツアップのようなスーパーアプリは到達範囲が広く、使い勝手も良いため、実店舗とネットを融合させる販促手法「オンライン・ツー・オフライン(O2O)」と相性が良い。

例えば、ブラジルのヘルスケア企業ISAラボ(ISA Lab)は、患者が自社アプリやワッツアップのメッセージ送信機能から診察や検査、ワクチンを予約できるシステムを提供している。サービスの利用者は住所などの情報や決済情報を入力し、予約にかかる時間を短縮できる。同社は8月、シリーズBで1200万ドルを調達した。

フランスのドゥーブ(Duve)はホテルのオンラインでの予約やチェックイン、決済サービスを提供し、接客業を支援しようとしている。ワッツアップや電子メールなど様々なルートからの宿泊客の問い合わせをつなぐコミュニケーション拠点によってホテルが顧客データを1カ所でチェックできる機能も提供している。

カナダのスナップコマース(Snapcommerce)は旅行の予約で同様のサービスを提供している。消費者はワッツアップで格安旅行をチェックし、購入できる。同社の主力サービス「スナップトラベル」を使い、旅行を予約するために目的地や日時などの希望をオンライン旅行会社にメッセージで送信できる。

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