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ソニー、新技術で画像センサー「世界シェア6割」堅持

ソニーグループがスマートフォンのカメラなどに使われる画像センサーを一段と高機能化する。従来は難しかった明暗の対象物に同時に焦点を合わせる技術などを実現する。世界首位のシェアは米中対立に伴う顧客の喪失や、韓国サムスン電子などの追い上げで約4割まで落としている。技術を深掘りすることで2025年度に世界シェア60%という従来目標を堅持し、競合他社の追撃をかわす。

逆光が差し込む部屋。遠くで見える東京タワーと近くの人の表情の両方に焦点が当たる――。明暗が異なる対象の撮影は難しく、従来は片方にだけ焦点が当たってしまっていた。これを解決するのがソニーの新技術だ。

ソニーグループ傘下で半導体事業を担うソニーセミコンダクタソリューションズは17日、新たな「Octa PD」という技術を報道陣に公開した。明るい場所や暗い場所などあらゆるシーンで高速で焦点を合わせることができる。従来はスマホのカメラでは明暗の対象物に同時に焦点を合わせるのは難しかった。

「すごく脅威に感じながら研究開発を続けている」。ソニーセミコンダクタソリューションズの清水照士社長は海外勢の追い上げについてこう語る。ソニーの半導体事業はカメラなどに使うCMOS(相補性金属酸化膜半導体)センサーが中核で長らく世界シェアで半数を確保してきた。

だが近年はシェアを落としてきた。20年に米中対立の影響で華為技術(ファーウェイ)向けが減り高単価商品の比率が下がった。この「ファーウェイショック」(清水社長)の影響は大きく、19年度に53%だった世界シェア(ソニー調べ)は21年度は43%(同)に減った。

海外勢の追い上げは激しい。2位の韓国サムスン電子は世界シェアの約2割を占める。3位の米オムニビジョン・テクノロジーズは車載向けが好調で、4位の中国ギャラクシー・コアは廉価スマホ向けで伸びた。

それでもソニーは5月に「25年度までに60%」という目標を打ち出し、19年に示した目標を据え置いた。シェア回復を見込む背景にあるのがスマホの変化だ。

世界のスマホ市場は飽和しつつある。一方でカメラの高画質化は進み、1台あたりの画像センサーの数は増え、サイズも大型化する。ソニーは、こうしたカメラの高画質化に照準を合わせ、競合他社と差異化する機能を深掘りしてきた。

シェア拡大に向けて生産能力も引き上げる。設備投資計画でも半導体重視は鮮明になっている。ソニー全体の22年度の設備投資額は前年度比35%増の4700億円を見込む。大半が半導体向けだ。画像センサーの主力工場の長崎工場(長崎県諫早市)では、21年に稼働した最新の生産棟で早くも2度目となる拡張工事を5月から始めている。

英調査会社オムディアによると、25年の画像センサーの世界市場は251億ドル(約3兆2630億円)と21年比で34%増えるとみる。その中心はスマホ向けで、25年は201億ドルと21年比で37%増える。

オムディアの南川明氏は「競合も必死に追いつこうとする中で、ソニーが圧倒的なポジションを確保するのは容易ではない」と見る。海外勢の猛追をどうかわすか。質と量の両面でアクセルを踏み続ける必要がある。(古川慶一)

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