ソディックの金属3Dプリンター 2時間で材料交換

ソディックは16日、使い勝手を高めた金属3Dプリンター「LPM325S」を開発したと発表した。10月に受注を開始する。
材料である金属粉末(以下、粉末)を自動で供給・回収するユニットであるMRS(マテリアル・リサイクル・システム)を開発し、標準装備した。利用者自身がMRSを付け替えるだけで粉末の種類を変更できる上、所要時間は2時間以内と短い。そのため、手軽に製品の幅を広げることができる。
これに対し、従来の金属3Dプリンターは1種類の粉末に対して1台の機械を割り当てており、粉末を切り替える場合は2日ほどかかっていた。
新製品は多品種少量生産に向く。例えば、航空宇宙産業ではエンジンのタービンブレードを代表にニッケル基合金「インコネル」を使う製品が、医療業界ではインプラントのように生体親和性の高いチタン合金やステンレス鋼を使う製品が多い。新製品は1台で様々な粉末を扱えるため、設備費を抑えながら製品の種類を増やし、事業展開の幅を広げられる。設備稼働率の向上も期待できる。
新製品は切削機能も備えている。粉末の積層造形と基準面加工を 1 台の機械で行えるため、次工程で仕上げ加工を行う際に段取りの負荷を減らせる。「切削機能を併せ持つ金属3Dプリンターで、かつ複数種類の粉末を1台で扱える製品は業界初だろう」(同社担当者)。
従来に比べてメンテナンスの頻度を約半分と大幅に抑えたのも特長。レーザー照射時に造形空間に発生するヒューム(ガス化した金属の集積物)を吸い込む仕組みを変え、効率よくヒュームを回収することで、製品の不良や機器の不具合によるメンテナンスを発生しづらくしている。

オプションとして造形不良を防ぐモニタリング機能の追加とデュアルレーザーの搭載が可能。モニタリング機能で造形物の状態などをセンサーで常時監視すると、造形不良を未然に防げる。また、データ解析により保守点検の時期も予測できる。一方、デュアルレーザーを搭載すると従来比で2倍以上の造形速度を達成できるという。
最大造形物寸法は幅と奥行き、高さの全てが250ミリメートル。最大積載質量は120キログラム。レーザー最大出力は500ワットで、デュアルレーザー搭載時は合わせて1000ワットとなる。機械寸法は周辺機器を含めて、2160×2235×2240ミリメートル。鋼系、ステンレス合金系、64 チタン合金、インコネル716、コバルトクロム、アルミニウム合金の粉末を造形できる。
標準価格は6000万円(税抜き)から。同社は年間で新製品を12台生産する目標だ。
(日経クロステック/日経ものづくり 岩野恵)
[日経クロステック 2021年9月16日掲載]
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