米ペプシコの環境戦略、持続可能な調達で競合と連携も - 日本経済新聞
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米ペプシコの環境戦略、持続可能な調達で競合と連携も

米ペプシコは持続可能なサプライチェーン(調達網)を築くため、独自の環境戦略を掲げている。二酸化炭素(CO2)削減につながる「環境再生型農業」や環境関連スタートアップへ積極的に投資するほか、競合する食品メーカーとの協業にも挑む。最近の出資や提携から、同社が環境分野で強化している取り組みを分析した。
日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

米飲料大手ペプシコは2021年、温暖化ガス排出量を40年までに実質ゼロにする目標を発表した。地球温暖化防止の国際枠組み「パリ協定」で合意した水準を10年前倒しする。

同社の排出量の大半(92%)を占めるのは、農業や梱包、製造、外部企業による輸送の際に排出される温暖化ガスだ。ペプシコの製品は世界で1日10億個以上消費されており、同社のサプライチェーンにはサステナビリティー(持続可能性)を向上する大きなチャンスがある。

ペプシコは温暖化ガス排出に加えてリサイクルなどの他の持続可能な問題にも対処するために、環境戦略「ペプシコ・ポジティブ(pep+)」を立ち上げた。この戦略は「ポジティブな農業」「ポジティブなバリューチェーン(製品を作製・提供するための全ての活動)」「ポジティブな選択(包装容器と原材料)」の3本柱からなる。

17年にはスタートアップ支援プログラム「グリーンハウス・アクセラレーター」も発足させ、この3本柱に沿ったテーマを打ち出している。22年には循環型経済を対象とする米投資ファンド、クローズド・ループ・パートナーズと提携し、地域に根差したリサイクルの取り組みに投資する運用資産3500万ドル(約46億円)のファンドを組成した。

今回はCBインサイツのデータを活用し、ペプシコの19年以降の出資や提携活動から4つの重要戦略をまとめた。この4つの分野でのペプシコとのビジネス関係に基づき、各社を分類した。

・調達と生産

・物流

・容器包装

・廃棄物の管理

調達と生産

ペプシコは21年、同社が農業をしている面積と同等の広さの農地を対象に、土壌の生物多様性を回復させ炭素を土中に蓄える力を高める「リジェネラティブ(環境再生型)農業」に投資する計画を発表した。

22年にはリジェネラティブ農業を推進するため、米穀物大手アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)と7年半の戦略商業協定を結んだ。両社は金銭的支援やデータ追跡サービス、農家同士のコミュニティーなどを提供し、農家のCO2排出量削減を手助けする。

業界リーダーのペプシコが食品の持続可能な調達と生産を強化するために他の消費財メーカーと提携するのはこれが初めてではない。米菓子大手マースや米調味料大手マコーミックと共同で「サプライヤー・リーダーシップ・オン・クライメート・トランジション」も設立し、サプライヤーのCO2排出量削減を支援するセミナーやツールを提供している。

20年には食品の世界最大手ネスレ(スイス)、メキシコの製パン大手グルポ・ビンボ、米食品大手ゼネラル・ミルズとともに、パーム油や大豆、紙などの主要商品の原材料調達で森林破壊に対処する協定も結んだ。

さらに、直接または傘下のグリーンハウス・アクセラレーターを通じ、英ルードへルス(Rude Health)、米ヌーミルク(NuMilk)、米スーパーフラウ(SUPERFRAU)などアーリー(初期)ステージの持続可能な食品メーカーに出資している。

物流

ペプシコは直接またはクローズド・ループ・パートナーズを通じ、サプライチェーンの物流の効率化を支援する企業にも出資している。

20年1~3月期にはあらゆるモノがネットにつながる「IoT」チップを開発したイスラエルのウィリオット(Wiliot)のシリーズB(調達額2000万ドル)に参加した。この安価なチップは消費財に貼付して製品の位置や温度、在庫をモニタリングできる。ブランドや小売りはこれにより供給状況を追跡し、食の安全を確保し、廃棄を減らせる。

その2年後には英SaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)企業データマラン(Datamaran)のシリーズB(1300万ドル)に参加した。データマランはESG(環境・社会・企業統治)の取り組みや規制を追跡し、リスクを評価する。再生可能エネルギー、サプライチェーン管理、地政学的リスクなど同社が重視する分野はいずれも消費財の物流に直接影響を及ぼす。

容器包装

どの消費財メーカーも持続可能性を向上できる大きな分野が容器包装だ。持続可能な容器包装はサプライチェーン全体で持ちこたえられる再生可能な素材の使用と、消費者が処分しやすい手段への対応のバランスがとれていなくてはならない。

ペプシコは20年、直接紙にリサイクルできる再生可能な木材パルプを原料にした初の紙製ボトルを英包装テックのパルペックス(Pulpex)と共同開発し、大きく報じられた。このボトルはまだ試用段階だが、ペプシコは25年までに100%リサイクル、堆肥化または生分解が可能な包装容器を使う目標を掲げている。

同社はこの目標を達成するため、持続可能な容器包装の他の解決策を提供する企業にも出資している。詰め替え可能なモデルを手掛けるチリのアルグラモ(Algramo)や独エアーアップ(air up)、バイオ素材を手掛けるイスラエルのUBQマテリアルズ(UBQ Materials)や米オリジン・マテリアルズ(Origin Materials)、米ロリウエア(LOLIWARE)などが含まれる。

廃棄物の管理

ペプシコはここ2年、傘下のアクセラレーター(育成支援)プログラムや投資ファンドを通じて廃棄物管理に資金を投じている。食品ロス対策からリサイクルテックまで、廃棄物管理策はサプライチェーン全体に及んでいる。

米スパッジー(Spudsy)は20年、廃棄処分されそうになっていた規格外のサツマイモを原材料にしたスナックにより、ペプシコのグリーンハウス・アクセラレーターのクラスで優勝した。

アクセラレータークラスの直近のテーマは、中東と北米での容器包装ごみの削減策だ。最終選考に残っているレバノンのナディーラ(Nadeera)は地元自治体と共同で持続可能な廃棄物管理プランの策定に取り組んでいる。

ペプシコはアラブ首長国連邦(UAE)に拠点を置くスーパー大手スピニーズ(Spinneys)と提携し、客が使用済みペットボトルを返却する「リバース(逆)自動販売機」も設置している。返却されたボトルは素材レベルに分解され、従業員の制服の原材料になる。

ペプシコは22年初め、リサイクルのアクセス向上と廃棄物削減を対象にしたファンドを組成するため、クローズド・ループ・パートナーズに3500万ドルを出資した。

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