はやぶさ2試料に風化の痕跡 小惑星表面から水蒸気放出

京都大学や宇宙航空研究開発機構(JAXA)などの研究チームは、探査機「はやぶさ2」が小惑星「りゅうぐう」で採取した試料(サンプル)を分析し、宇宙空間で風化した痕跡を見つけたと発表した。微小な隕石(いんせき)の衝突などによって表面が溶けて水が抜けていた。小惑星が含む水の量を観測で推定することなどに役立つ成果だという。
研究成果は19日付の英科学誌ネイチャーアストロノミー(電子版)に掲載された。
宇宙空間にある小惑星などでは「宇宙風化」という現象が起きる。微小な隕石や「太陽風」と呼ばれるプラズマの流れにさらされて、天体表面にある鉱物がいったん蒸発した後に冷えて表面に固まるといった変化が起きる。小惑星にはさまざまなタイプがあるが、りゅうぐうと同じ「C型」と呼ばれる水や炭素が多いタイプの小惑星から実際に宇宙風化の証拠を採取した例はなかった。
研究チームがりゅうぐうのサンプルの表面を解析すると、微小な隕石の衝突で溶けて泡立った構造や太陽風を受けて滑らかになった構造があった。人工的に微小な隕石の衝突や太陽風を模擬した実験で同様の構造ができることを確かめた。
隕石の衝突で瞬間的に加熱され、小惑星の表面から水蒸気が放出されたとみている。京都大学の野口高明教授は「小惑星が含む水の量の見直しにつながるかもしれない」と話す。宇宙風化で表面から水が抜けていると、その天体を観測した際に実際よりも少なく見積もってしまう可能性があるという。
初代はやぶさが持ち帰った別の小惑星「イトカワ」や月の試料でも風化の痕跡が見つかっているが、りゅうぐうとは異なり水を含まない鉱物を主とするタイプの天体だ。