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絶好調のモス、コロナ後見据え「カフェ事業リベンジ」

モスフードサービスは新業態としてモスバーガー&カフェの出店を拡大している
日経ビジネス電子版

東京都品川区の大崎駅前のオフィスビルの一角にある「モスバーガー&カフェ」(以下&カフェ)。モスフードサービスの本社のお膝元の店舗だが、通常のモスバーガーとは少し趣が異なる。

店頭のメニュー表は半分近くをスイーツやカフェ系飲料の写真が占めている。記者が店を訪れたのはランチタイムの午後1時。ハンバーガー類を食べている客だけでなく、カフェメニューを注文してパソコンを操作している人も少なくなかった。

&カフェはモスフードサービスが拡大展開を推し進めている新業態だ。19年11月に1号店がオープンし、7月15日時点で首都圏を中心に34店舗が展開されている。ブレンドコーヒー(250円)、カフェラテ(350円)などのカフェドリンクや「モスのスフレケーキ」(560円)、「バスク風チーズケーキ」(340円)といったケーキメニューをそろえる一方で、野菜の下処理から店内で行っている「こだわりサラダ」やホットドッグといった「比較的オペレーションに負荷のかかるメニュー」(安藤芳徳・上席執行役員マーケティング本部長)はラインアップから外している。

ひじ掛けを備えた椅子を置き、通常の店舗よりもテーブルを数卓減らして、来店客がゆったりと過ごせるようになっている。内装もカフェの雰囲気だ。「平たく言えば『なんちゃってカフェ』」。安藤氏は&カフェの特長をそう表現する。

このカフェ業態を、モスフードサービスは21年度末までに80店舗、2024年度に300店舗まで拡大する構想を掲げている。「ハンバーガーを食べないお客さんでも気軽に入れるような店舗設計とする」と安藤氏は語る。

モスバーガー&カフェは通常の店舗とは異なり、スイーツやカフェドリンクのメニューが充実している

コロナ後を見据えた変革

新型コロナウイルス禍で外食の苦境が連日報じられる中、モスバーガーは好調を維持し続けている。既存店売上高は19年8月から21年6月まで23か月連続、前年同月比プラスで推移している。特に21年4月以降は既存店の売上高と客数が共に2桁成長を維持。まさに絶好調といってもいい状況だろう。

これはハンバーガー業態がもともとテークアウトに強く、アルコール提供とも無縁だったために、コロナ禍で需要が増えた持ち帰りやデリバリーのニーズをうまく捉えられたという点が大きい。ちなみに、日本マクドナルドも20年1月以降で既存店売上高が前年を下回ったのは20年3月と同6月のみだった。

ではなぜ、そんな中でモスバーガーは店舗戦略を大きく変えようとしているのだろうか。

コロナ禍が収束すれば、店内飲食の需要が急激に回復し、持ち帰り需要が減退することで「しっぺ返し」を受ける――。同社はこう懸念しているようだ。「持ち帰り専門バーガーショップのようなものもあるが、モスは持ち帰りも店内滞在も、両方に対応できるバランス感覚、適応力を持ち続けることが重要だし、それがモスの強みだと考えている」(安藤氏)。つまり、コロナ後に店内で飲食・滞在することへのニーズが回復することを見越し先手の対応を打つ、というわけだ。

2度目のカフェ挑戦

実は、モスがカフェ事業に本格参入するのはこれが初めてではない。同社は2006年7月に「モスカフェ」の1号店を神奈川県藤沢市にオープンさせている。つまり、15年前にはすでに同社はカフェ事業を本格的に手掛けていたことになる。

モスカフェは一時、「20年までに100店舗」といった目標を掲げていた時期もあったが、結局、銀座や羽田空港などの一等地を中心に最盛期の2014年でも全国11店舗の展開にとどまり、現在では4店舗に縮小。安藤氏は「モスカフェは失敗だった」と断言している。その理由は「カフェとハンバーガーの『いいとこ取り』を狙うというコンセプトそのものに無理があった」のだという。

モスカフェは丼メニューやスイーツなど、幅広いメニューを揃えたが店舗網の本格拡大には至らなかった

モスカフェのメニュー構成はモスバーガーとは大きく異なるものだ。「タコライス」や「モスの焼肉ごはん」といった丼メニューが看板商品の「カフェフード」で、ドリンクもホイップクリームの入ったアイスラテやモスカフェ限定のスムージーなど幅広く取りそろえている。高性能なコーヒーメーカーを導入し、ブレンドコーヒーは1杯370円。これは通常のモスバーガーよりも120円も高い。

10年11月の西銀座店(東京・中央)の開業時のメニュー例や報道を見ても「デミグラ煮込みハンバーグごはん」(680円)、「チキンスープカレー(ライス付き)」(680円)などの「カフェごはん」や8種類ある「カップケーキ」などを前面に押し出す一方で、バーガー類はハンバーガーやテリヤキチキンバーガーなど4種類に抑えられており、バーガーショップというよりは本格カフェという印象を持った。

だが、高い知名度を持つ「モス」の看板を掲げている以上、消費者の目にはハンバーガーチェーンの印象が根強い。結局、モスがハンバーガーショップとコーヒーチェーン両方の良さを取り入れようと試みたモスカフェは本格的に店舗網を拡大することなく、事業の縮小を余儀なくされたようだ。

つまり、モスが今後店舗を拡大する&カフェ事業は2度目の挑戦ということになる。

「なんちゃって」に勝算あり

「『カフェチェーンの料理はおいしい』という印象を消費者は持っていない。同時にハンバーガー店のコーヒーがおいしいという印象も同じように持つことはできないだろう」(安藤氏)。UCC上島珈琲の専務を務めた経験も持つ安藤氏のこの言葉が示す通り、モスバーガーがいくらカフェチェーンに寄せたコーヒーメーカーを導入したところで、消費者の意識を変えることは難しい。

「モスだけど、必ずしもバーガーを頼まなくてもいい。&カフェはカフェ使いもできる『なんちゃって』がコンセプト」と語る安藤氏

だからこそ、&カフェはその店名が示す通り「カフェ使いもできるバーガーショップの『なんちゃってカフェ』」という位置づけを狙っているのだろう。&カフェは1店舗あたりの初期投資額も通常のモスバーガーと大きな差は無いという。モスカフェが通常店よりも3~4割高い投資が必要だったことと比べれば、店舗網拡大のハードルもモスカフェに比べれば低いと言えそうだ。

現在、モスバーガーの売り上げの5割は午前11時から午後2時のランチタイムが稼ぎ出している。そこから午後5時までのティータイムの売り上げは現状では2割にとどまっている。&カフェがこの割合をどこまで高められるのかは未知数だが、ハンバーガー目的以外の客層を獲得することに意義があるとモスは考えている。21年3月以降は客層の拡大とPRを目的に完全受注生産の高級食パン事業にも乗り出すなど、同社はバーガー以外の需要の開拓に注力している。

カフェ事業は料理の素材・質や商品の「味」よりも、設備や居心地といった「空間」が重視される点において、ハンバーガーチェーンとは異なる点も多い。そんな中で、新たに始まった「モスカフェのリベンジ」とも言える&カフェ。今度こそ、成功を収めることはできるだろうか。

(日経ビジネス 神田啓晴)

[日経ビジネス2021年7月15日号の記事を再構成]

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