カネカ食品が冷凍パン通販 全国28店からお取り寄せ

カネカ食品(東京・新宿)は2021年10月20日、全国のベーカリーとパン好きな消費者をつなぐモール型電子商取引(EC)サイト「ぱん結び」を開設した。同サイトには、北海道から九州まで28店舗のベーカリーが出店しており、購入者には指定した冷凍パンがクール宅急便で届けられる。
カネカ食品は「カガクでネガイをカナエル会社」のキャッチフレーズで知られる化学メーカー・カネカのグループ企業。原材料の供給も商品の販売も地域で完結するケースが多いパン業界で、全国のベーカリーなどにパンの原材料や関連機材などを提供するのがカネカ食品の事業の一つだ。「ぱん結び」は全国のベーカリーにネットワークを持つ同社だから実現した取り組みといえる。
カネカ食品販売促進統括部長の久下豊弘氏は「長引くコロナ禍でベーカリーの意識が『(ECを)いつか始めたい』から『いよいよ本格的に始めなければいけない』に変わってきた」と話す。そんな危機感を抱いているベーカリーを支援するのがぱん結びというわけだ。
とはいえカネカ食品は、冷凍パンの通信販売としては後発になる。全国3000社以上のホテルやレストランで採用されている冷凍パンのスタイルブレッド(群馬県桐生市)が市販向けに展開する「Pan&(パンド)」や、廃棄ロスになりそうなパンを冷凍して販売しているクアッガ(東京・中野)の「rebake(リベイク)」、パンフォーユー(群馬県桐生市)による冷凍パンのサブスクリプションサービス「パンスク」など、冷凍パンを提供する通販サービスは少なくない。また個人店が「楽天市場」や「Yahoo!ショッピング」などのショッピングサイトに出品する方法もある。
どこに優位性を見いだすかが課題といえそうだが、カネカ食品では十分、競合に対抗できるとみている。その理由はカネカ食品の地域に密着したサポート体制と出店者目線のサービスだ。
ぱん結びではモール型ECサイトとして冷凍パンの通販情報を掲載するだけでなく、EC販売の環境やノウハウもベーカリーに提供するとしている。ベーカリーの負担は最小限に抑えられており、例えば適切な数の段ボールや梱包用ビニールが定期的に供給される、商品を発送する際には送り先を記入済みの送り状を届けてもらえる、指定した時間帯に集荷に来てもらえるといったメリットがベーカリーにはある。

久下氏は「ベーカリーに寄り添ったサービスを実現できているのは、ベーカリーのことを知り尽くしたカネカ食品だからこそ。出店者目線で使いやすさを徹底的に追求した」と胸を張る。
カネカ食品はベーカリーの開業支援も行っており、店舗・厨房の準備から原材料の提供、レシピの提案や技術指導・機器メンテナンスまでをワンストップで提供している。売り上げを伸ばすためにECサイトを立ち上げたものの、認知度が上がらず集客できていないベーカリーも少なくないが、パン専門のモール型ECサイトならパン好きの目にも止まりやすくなる。ぱん結びは、カネカ食品の支援を受けて開業したベーカリーの"受け皿"としても機能しそうだ。
サイトオープン時の出店ベーカリー数は、北海道から九州までの19都道府県28店舗。カネカ食品では将来的には出店数を100店舗程度まで増やしたい意向で、全国に26ある支社・支店の営業力を生かして各地の名店を開拓中とのことだ。
人気ベーカリーの中には「十分に利益が出ているのでECは必要ない」という店もあるだろう。しかし、ぱん結びに出店するメリットが大きいとなれば出店を希望するベーカリーも増えていくはずだ。カネカ食品ではSNS(交流サイト)やメディアを通じて消費者のぱん結びへの認知度向上を図るとしているが、多くの人気ベーカリーが出店し、サイトが充実してくれば、利用者は自然と増えていくに違いない。
(フリーライター 堀井塚高、写真提供 カネカ食品)
[日経クロストレンド 2021年11月10日の記事を再構成]
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