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インド零細商店の巨大販売力、米Amazonも注目

CBINSIGHTS
インドで「キラナ」と呼ばれる零細商店の巨大な販売力を巡り、大手EC(電子商取引)企業間の争奪戦が激しくなっている。キラナは人口14億人の同国の消費財販路の8割近くを占めており、EC各社はここをデジタル技術で近代化して自社の配送網などとして囲い込みを進めている。米アマゾン・ドット・コムや米ウォルマートが乗り出しているほか、スタートアップも支援ビジネスに商機を見いだしている。
日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

インドの零細商店「キラナ」の経済圏が廃れるというのは大げさだったと言わざるを得ない。

そもそも、キラナ経済圏とは何なのか。キラナとは、CBインサイツの業界アナリスト予想によると9320億ドルに上るインド小売市場のなお大部分を占める家族経営の零細商店だ。零細事業や昔ながらの生鮮食料品店、雑貨店を指す場合もある。

インドの小売りの未来はECや大型店(スーパーマーケットや百貨店など)が担うという大胆な予測もあるが、印アンビット・キャピタルの推計では、キラナはインドの消費財売上高の75~78%を引き続き占めている。もちろん、他の販売形態の台頭を受けてキラナのシェアは徐々に低下している。これは他の発展途上国でもみられるトレンドだ。だが、キラナは依然としてインドの小売売上高の大部分を占めている。

・推計によってばらつきはあるが、インドにはキラナが1200万~2000万店あるとされる。

・キラナはインドの日用消費財(FMCG)売上高の90%余りを占める。新型コロナウイルス禍でこの比率は上昇した。

・キラナはインドの国内総生産(GDP)の10%、労働力の8%を占めている。

コロナ禍で消費者が日々のニーズを満たすためにキラナを頼りにしていることは、キラナの地域におけるなくてはならない役割を示している。

もっとも、キラナの現代化には大きなニーズと商機がある。印大手財閥リライアンス・インダストリーズ、米小売り最大手ウォルマート、米アマゾン・ドット・コムなどの既存大手はいずれもこの分野に参入し、主なスタートアップは米セコイア・キャピタル、米アクセル、米タイガー・グローバルなど大手投資会社から出資を受けている。

インドで存在感を高めたいと考えている日用消費財メーカーは、こうした既存勢やスタートアップの活動を追い、キラナに自社商品を置いてもらうために各社と提携したり、この分野への戦略的出資や買収を実施したりする必要があるだろう。

この記事ではこうした商機や、キラナのデジタル化を推進しているスタートアップを取り上げる。

キラナにはどんなテクノロジーのニーズがあるか

キラナは競争に遅れないようにするだけでなく、最新の店舗や革新的な買い物方法を求める顧客のニーズを満たすために、業務と店舗を変えなくてはならない。小売業の最新のテクニックと体験を導入できるかどうかは、キラナの存続にかかわる。

とはいえ、キラナは守りに徹しているわけではない。顧客に明らかなメリットも提供している。大型スーパーよりもアクセスしやすく、便利で、速く、価格が安い場合さえある。

キラナの売り上げ増加とコスト削減を支える主なテクノロジーは次の通りだ。

・在庫管理

・デジタル決済、つけ払いの提供

・POS(販売時点情報管理)技術・デジタルウォレット(電子財布)

・店内の商品や宣伝を見えやすくするディスプレー

・購入額増加を促す抱き合わせ販売やより高額な商品の販売

・商品の配置やセルフサービスの増加など店舗のレイアウト

・入店できる人数の増加

・顧客向けと調達向け両方でのモバイルとECの導入

・テックを活用した配達

・より多くの顧客を獲得するためのオンラインやモバイルでの販促

・帳簿付け

こうしたテクノロジーの導入により、キラナは競争をはねのけ、顧客を喜ばせるデジタル化の進んだ店舗へと変貌を遂げるだろう。

アマゾン、リライアンス、ウォルマートはキラナ経済圏で何をしているのか

3社はいずれもキラナと提携し、商品の販売に加え、業務のデジタル化、商品の調達、各社のECを通じての販売、在庫管理の改善を支援している。

各社の主な活動は以下の通りだ。

リライアンス

リライアンス・インダストリーズは小売部門リライアンス・リテールと印携帯電話大手ジオの共同出資会社ジオマートを通じ、顧客とキラナをつなぐECを築いている。ジオマートで注文した商品は、リライアンスの物流部門が顧客に配達するのではなく、顧客自らが近所のキラナで受け取る。

ジオマートはオフラインとオンラインをつなぐサービスを提供している。このモデルは多くの点で中国のEC最大手アリババ集団に似ている。ジオマートは資産をほとんど持っておらず、リライアンスの既存店舗と連携可能だ。

さらに、ジオマートは商品の仕入れに影響力を持つようになっている。このため日用消費財の卸売業者にとってはチェックが厳しくなり、利ざやが縮小することになるだろう。英日用品大手レキットベンキーザーや米日用品大手コルゲート・パルモリーブ、英ユニリーバなどの商品を卸してきた従来の業者にとっては重要な問題になる。

ウォルマート

ウォルマートは2018年5月、印ネット通販大手フリップカートの株式77%を160億ドルで取得した(後に追加出資した)。ウォルマートはこの買収を通じてフリップカート傘下のフリップカート・ホールセールで企業間取引(BtoB)のネット通販に参入し、キラナに商品を卸している。

フリップカート・ホールセールは最近、会員プログラム「セーブイージー(SaveEazy)」も始めた。提携するキラナの利用を増やし、愛着心を高めるのが狙いだ。

アマゾン

アマゾンはインドで「ローカルショップ(Local Shops)」プログラムを提供している。このプログラムに自社のキラナを登録している小売事業者は、アマゾンで買い物する地元客に商品を販売できる。こうしたキラナには地元客の目に付きやすくなる「プライムバッジ(Prime Badge)」を与えている。

アマゾンは21年3月、このプログラムをインド国内450の都市のキラナ5万店に拡大したとされる。

◇  ◇  ◇

3社のうち、リライアンスが最も活発にサービスを提供し、リードしているようだ。リライアンスは国内企業であり、政府から厳しい目を向けられにくい。一方、ウォルマートとアマゾンは中国市場を攻略できなかったため、インドで負けるわけにいかない。アマゾンはインドでの投資を活発化している。21年にはキラナのデジタル化を支援するパーピュール(Perpule) を2000万ドルで買収した。

カナダのECサイト構築支援ショッピファイなど、他の企業もキラナ向け事業に携わっている。ただし、日用消費財よりも主に衣料品や美容品、フィットネスなどダイレクト・ツー・コンシューマー(D2C)との親和性が高い分野を手掛けている。

インドのキラナ向けテックスタートアップ上位10社

キラナ向けテックスタートアップに出資している主な企業やエンジェル投資家は以下の通りだ。

・投資企業:セコイア・キャピタル、中国のネットサービス大手騰訊控股(テンセント)、米Yコンビネーター、アクセル、米ライトスピード・ベンチャー・パートナーズ、米マトリックス・パートナーズ、英ユニリーバ・ベンチャーズなど

・エンジェル投資家:バラジ・スリニバサン氏、ゴクル・ラジャラム氏、シャアン・プリ氏、スリラム・クリシュナン氏、クナル・シャー氏など

キラナのデジタル化に取り組んでいる主なスタートアップ10社(企業価値、次に資金調達総額の順)

1.ウダーン(Udaan、企業価値31億ドル):企業間取引のECサイト

2.カタブック(Khatabook、企業価値6億ドル):帳簿付けアプリ

3.ショップキラナ(ShopKirana、企業価値1億5000万ドル):キラナ向けモバイルアプリ

4.ビヤパー(Vyapar、企業価値1億1800万ドル):請求書作成ソフトウエア

5.ジャンボテール(Jumbotail、調達総額1億4000万ドル):キラナ向けの食料品や日用品のECサイト

6.OKクレジット(OkCredit、調達総額8300万ドル):キラナ向けPOSアプリ

7.フロービズ:(Flobiz、調達総額4400万ドル):中小企業向けクラウド会計ソフト

8.ドゥカーン(Dukaan、調達総額1700万ドル):ECサイト構築支援

9.ビカイ(Bikayi、調達総額1300万ドル):ECサイト構築支援

10.キラナキング(Kirana King、調達総額100万ドル):生鮮食料品店向けECサイト

キラナ経済圏はインドだけにあるわけではない。東南アジアの他の国でも欠かせない存在だ。パキスタンのバザール(Bazaar)、バングラデシュのショップアップ(ShopUp)など同様の生鮮食品店向けECサイトは東南アジア各国で台頭している。

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