/

仏トタルエナジーズ、脱「化石燃料依存」へ連携拡大

CBINSIGHTS
エネルギー世界大手の仏トタルエナジーズが外部企業と組み、化石燃料に頼らない事業への転換を進めている。CCUS(二酸化炭素の回収・利用・貯留)では多くの共同プロジェクトに参画し、食品メーカーとリサイクル素材の開発にも取り組む。電気自動車(EV)分野では、複数の企業を買収し、充電網を広げている。水素でも製造施設建設や関連企業への出資をしている。
日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

トタルエナジーズは世界屈指の石油・ガス会社だ。2021年の売上高は2060億ドル(約27兆円)に上る。英シェルや英BPなどと同様、温暖化ガスの排出量を50年までに実質ゼロにする目標を掲げ、新たな事業戦略を実行に移している。再生可能エネルギー由来の電力供給の増強、二酸化炭素(CO2)排出量の削減、EV充電拠点の増設などが含まれる。

これらの最優先課題に対処するため、スタートアップや同業他社と共同でEVテック、プラスチックを化学分解して再利用する「ケミカルリサイクル」、CO2回収などについて研究や実証実験を進め、最終的には施設を建設する構えだ。化石燃料のバリューチェーン全体で出資や提携、買収を進めて既存事業の持続可能性を高めると同時に、新たな事業分野も探っている。

今回はCBインサイツのデータを活用し、トタルエナジーズの18年以降の買収、出資、提携から6つの重要戦略をまとめた。

・CO2の回収・利用・貯留(CCUS)

・ケミカルリサイクル

・EVテック

・送配電テック

・水素テック

・再生可能エネルギー

CO2の回収・利用・貯留(CCUS)

トタルエナジーズは温暖化ガス排出量を50年までに実質ゼロにする目標を達成するため、多くのCCUSテック企業と提携している。

CCUSテックは資本集約的な性質があるため、他のエネルギー大手と共同でこの分野に取り組んでいる。地元政府の支援がこうした連携の主な原動力であることから、プロジェクトは欧州に集中している。トタルの主なプロジェクトは以下の通りだ。

・北欧石油最大手のエクイノール(ノルウェー)、シェルと共同で、ノルウェー沖でのCO2貯留プロジェクトの事業化調査を実施した。

・北海の海底CCUSインフラの調査・建設に向け、BP、イタリア石油・ガス大手のイタリア炭化水素公社(ENI)、エクイノール、英送電大手ナショナル・グリッド、シェルと「ノーザン・エンデュランス・パートナーシップ(NEP)」を設立した。

・ベルギーのアントワープ港でのCCS設備について調べるため、産業ガス世界大手の仏エア・リキード、独化学大手BASF、オーストリアの大手樹脂メーカーのボレアリス、米石油大手エクソンモービル、欧州石油化学大手イネオス、ベルギーのフラクシス、アントワープ港で構成するコンソーシアムに参加した。

一方、スタートアップと組んで革新的なCCUSテックも導入している。例えば、カナダのGHGサット(GHGSat)と提携し、分光器を搭載したドローン(小型無人機)を使って沖合での事業のメタン排出量を観測している。

さらに、CO2回収スタートアップのカナダのスバンテ(Svante)、セメント・コンクリート大手のスイスのラファージュホルシム、米オキシデンタル・ローカーボン・ベンチャーズ(Occidental Low Carbon Ventures)とも提携し、CO2回収能力を持つセメントの商用プラントの採算性や設計を調べている。セメント製造は産業界でCO2排出量が最も多い分野の一つであるため、排出量削減の調査が盛んだ。

トタルは主にCO2回収・貯留に力を入れているが、CO2再利用への関心も高まりつつある。同社のベンチャー部門は21年初め、CO2をタンパク質に転換するテクノロジーの開発に取り組む英スタートアップ、ディープブランチ(Deep Branch)に出資した。

ケミカルリサイクル

ケミカルリサイクルとは既存の製品(プラスチックなど)を分子レベルで分解し、再利用可能にする技術だ。トタルは下流の石油・ガス事業で、ケミカルリサイクルの環境技術を探っている。化石燃料由来の新品の原料の使用を削減できる。

同社は容器メーカーや、最終製品向けにより持続可能なプラスチックを調達しようとしている消費財メーカーとの提携に力を入れる。

バリューチェーンのあらゆる分野の企業とケミカルリサイクルの研究開発に取り組むため、容器包装リサイクルの仏シテオ(Citeo)、ケミカルリサイクルを手掛ける英リサイクリング・テクノロジーズ(Recycling Technologies)、食品の世界最大手ネスレ(スイス)、米食品大手マーズと連携している。20年には仏乳製品メーカーのヨープレイトとポルトガルの容器メーカーのイントラプラス(Intraplas)との提携を発表し、ヨーグルト容器のリサイクルの実証実験を成功させた。同様に、独容器メーカーのパッカー(PACCOR)との提携では、リサイクル素材を37%配合したポリプロピレンを製造した。

提携のもう一つの焦点は、世界のリサイクルプラスチックの供給を増やすことだ。これにより、より持続可能な原料への需要の高まりに応えられる。

20年にはプラスチックのリサイクル技術を手掛ける米ピュアサイクル・テクノロジーズ(PureCycle Technologies)と提携し、ピュアサイクルからの原料購入と共同での工場建設の査定に合意した。さらに、ブロックチェーン(分散型台帳)技術を活用してリサイクルが難しいプラスチックを追跡するため、サプライチェーン(供給網)やCO2のトレーサビリティーに取り組む英サーキュラー(Circulor)とリサイクリング・テクノロジーズと提携している。

22年1月には、英プラスチックエナジー(Plastic Energy)とプラスチックのリサイクル工場を建設することで提携した。プラスチックエナジーは廃プラスチックを原料に分解し、トタルはこれを食品包装に使えるポリマーに転換する。これは両社の既存の提携と合弁事業の延長だ。両社はすでに米テキサス州とフランスでケミカルリサイクル工場の建設を進めている。

EVテック

トタルは同業他社と同様に、EVテックを事業構成に加えつつある。特に強化しているのが充電事業だ。18年に業務用車両の運行管理ソフトウエアを手掛ける仏ウェイコネクト(WayKonect)と、スマートEV充電ステーションの開発を手掛ける仏G2モビリティー(G2mobility)を買収し、19年にEV充電事業を立ち上げた。20~21年には英ソースロンドン(Source London)、独デジタルエナジーソリューションズ(Digital Energy Solutions)、シンガポールのブルーチャージ(Bluecharge)をそれぞれ買収し、ロンドン、ドイツ、シンガポールに充電網を拡大した。

EVのハードウエアに革新をもたらす様々な企業にも出資している。EVの駆動装置を開発する米オクティリオン・エナジー・ホールディングス(Octillion Energy Holdings)、EVナビゲーションソフトのチャージトリップ(Chargetrip、オランダ)、EVのサブスクリプション(定額課金)サービスを手掛ける英オント(Onto)が主な例だ。

一方、充電の最適化技術や潤滑油の研究開発などの分野に手を広げるため、仏ルノーグループ、欧州ステランティス、中国の長城汽車など自動車メーカーとの提携も探っている。EVテック市場で地位を固め、EVの普及を促進するのが提携の狙いだ。

ここ数年は車載電池事業の開拓にも動いている。

・16年に仏電池メーカーのサフト(Saft)を買収し、足場を固めた。

・20年に仏自動車大手グループPSA(現ステランティス)と連携し、車載電池を開発・製造する合弁事業オートモーティブ・セルズ・カンパニー(ACC)を設立した。ACCはフランスで2つの車載電池工場を建設している。

・ベンチャー部門を通じ、全固体電池向け素材ベンチャー、米アイオニック・マテリアルズ(Ionic Materials)と電池の技術革新に取り組む仏オトノム(Otonohm)に出資した。両スタートアップは車載電池メーカーと自動車メーカーの最大の関心事である車載電池の安全性と効率性、柔軟性の向上に取り組んでいる。

送配電テック

トタルは送配電テックも探っている。再生エネシステムを常に稼働させるには複数の柱からなるデジタル化されたアプローチが必要だからだ。

19年には蓄電池を送電網につなぐシステムを強化するため、傘下のサフトを通じてマイクログリッドシステム(小規模な電力ネットワーク)の米ゴー・エレクトリック(Go Electric)を買収した。ゴー・エレクトリックのマイクログリッド制御装置は突然の停電時にも顧客の送電線を守り、業務を通常通り運営できるようにする。

トタルはここ数年、ベンチャー部門を通じて送配電テックスタートアップ数社に出資している。エネルギー管理ソフトを手掛ける米オートグリッド・システムズ(AutoGrid Systems)、再生エネ電力の調達プラットフォームを運営する米レベルテン・エナジー(LevelTen Energy)、エネルギー需給管理システムの英グリッドビヨンド(GridBeyond)が主な例だ。

水素テック

トタルは石油・ガスにとどまらないエネルギー大手としての地位確立を目指し、エネルギー会社や水素製造会社との提携など水素事業の構築に取り組んでいる。水素は製造業や輸送業、送配電分野で太陽光や風力にはできない形で化石燃料を代替できる。

水素の製造では、水電解槽を手掛ける独サンファイア(Sunfire)、独調査機関フラウンホーファー研究機構、仏エネルギー企業エンジー、アラブ首長国連邦(UAE)の再生エネ大手マスダール(Masdar)、独シーメンスエナジーと提携し、世界各地で水素製造の実証実験に取り組み、水素製造施設を建設している。

水素の供給では、燃料電池トラックの導入を加速し、燃料電池車の燃料を補給する水素ステーションを欧州全域で利用できるようにするために、独ダイムラーのトラック・バス部門ダイムラートラックや燃料電池トラックメーカーの米ハイゾン・モーターズと提携している。

直近では、エネルギーメジャー数社とともに、水素ステーションを運営する独H2モビリティー(H2 Mobility)の資金調達ラウンドに参加した。エネルギー業界は水素インフラの構築に共同で取り組み、この事業をどう伸ばすかを探っている。水素プロジェクトは今後も進展するだろう。

再生可能エネルギー

トタルは再生エネ、特にCO2排出量の少ないバイオ燃料(バイオメタンなど)や太陽光への投資を増やしている。依然として再生エネを重要な長期戦略の一部と捉えていることを示している。

バイオ燃料では、米クリーン・エナジー・フューエルズ(Clean Energy Fuels)と合弁事業を立ち上げた。両社は米国でバイオメタン製造工場の建設を進めている。この工場では、現地の農場から家畜のふん尿を調達する。

さらに、世界各地でバイオガスプロジェクトを進めるため、水ビジネス世界最大手の仏ヴェオリアとも組み、25年までに1.5テラ(テラは1兆)ワット時のバイオメタン製造を目指している。

低炭素燃料では、21年9月に仏航空機器大手サフランと提携した。両社はトタルが供給する再生航空燃料(SAF)に対応するエンジンの研究開発に取り組んでいる。SAFは航空会社のCO2排出量を削減する主な手段として、企業や投資家の注目を集めている。

太陽光では、22年2月に米太陽光パネルメーカー、サンパワーの商業産業部門を2億5000万ドルで買収すると発表した(トタルはサンパワーの過半数株も保有している)。トタル・カーボン・ニュートラリティー・ベンチャーズはその1カ月前、太陽光の電力供給プラットフォーム、米ソルスティス(Solstice)のシードラウンド(調達額310万ドル)を主導した。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

カーボンゼロ

温暖化ガス排出を実質ゼロにするカーボンゼロ。EVや再生可能エネルギー、蓄電池、各国政策などの最新ニュースのほか、連載企画やデータ解説を提供します。

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

関連企業・業界

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン