ユニクロのファーストリテイリング、株式を3分割

カジュアル衣料品店「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングは15日、2023年3月1日付で株式1株を3株に分割すると発表した。同社の株式分割は02年4月以来、20年11カ月ぶり。1単元の投資金額を下げ、投資家層の拡大や流動性向上を図る。23年8月期の1株当たり配当金は従来予想の680円から分割を考慮して230円とした。
分割後の最低投資金額は15日時点の株価で算出すると約280万円。東京証券取引所が望ましい水準とする「5万円以上50万円未満」をいまだに上回っている。ファストリの広報は「現在の投資家構成を一気に大きく変えるのではなく、まずは3分割で投資家層を広げていきたい」と話した。23年8月期の年間配当予想は分割考慮前ベースで690円となり、実質的な増額修正となる。
東証は10月、上場企業の株式を売買するのに必要な最低投資金額が大きい企業に引き下げを検討するよう要請した。東証は18年に売買単位を100株に統一し、株価が上昇した銘柄については個人投資家による少額投資が難しくなっていた。少額投資非課税制度(NISA)など、個人の資産形成に関する仕組みの枠に当てはまらないとの指摘も出ていた。
最低投資金額は株価に100をかけることで計算できる。例えばトヨタ自動車は15日の終値が1978円のため、投資単位は19万7800円となる。トヨタは21年9月に1株を5株に分割しており、分割前の投資単位は約100万円だった。
東証によると、10月26日時点で最低投資金額が50万円以上の銘柄は上場企業全体の5%にあたる197社あり、うち100万円以上の銘柄は39社ある。日本取引所グループの清田瞭最高経営責任者(CEO)は11月29日の記者会見で「ファストリ株が分割されれば(他の企業にも分割が広がる)1つのきっかけになるだろう」と述べていた。

22年は商船三井が3月末を基準日として1株を3株に分割したほか、9月末には任天堂(10分割)や日本郵船(3分割)も実施した。みずほ証券の菊地正俊チーフ株式ストラテジストは「株式分割で企業価値は変わらないが、成長企業は分割で株価が一時的に下がってもその後の利益成長で株価が戻る傾向がある」と指摘する。
ニッセイ基礎研究所の森下千鶴研究員は10年1月から22年1月に株式分割を実施した約2000社を対象に株価の騰落率を分析し、株式分割の発表をきっかけに株価は上昇する傾向があることを確認した。森下氏は「投資家が売買に参加しやすくなり、流動性が上昇することを好感しているのではないか」と指摘する。