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中堅上場VCと「物言う株主」の対立激化 会社に反旗

日経ビジネス電子版
東京証券取引所上場の中堅ベンチャーキャピタル(VC)、フューチャーベンチャーキャピタル(FVC)が、経営陣と物言う株主(アクティビスト)の対立の舞台となっている。アクティビストは取締役7人全員の退陣を要求。14日、FVCの筆頭株主がアクティビスト側に付くことが判明した。FVCの株主総会を6月下旬に控え、攻防戦が激しくなりそうだ。

まずここまでの経緯を簡単に振り返ろう。

FVCは1998年創業の独立系のベンチャーキャピタル。2022年3月期の連結売上高は5億4600万円、純利益は1億4300万円だった。20年3月期まで7期連続で最終赤字を計上したが、21年3月期に黒字(2000万円)転換を果たしていた。

FVCに激震が走ったのは4月7日だった。FVCはこの日、取締役7人全員の退陣を求める株主提案を個人投資家の金武偉氏から受け取ったと発表した。FVCの実質的な第2位株主である金氏は現経営陣の総退陣と合わせて、6月の株主総会で金氏自身を含む5人の取締役を選任するよう迫った。

金氏はゴールドマン・サックス証券やJPモルガン証券に勤務した後、米ニューヨーク州弁護士。投資ファンドのユニゾン・キャピタルなどを経て、現在は自身が設立した投資会社代表などを務めている。

彼の具体的な主張は後で紹介するが、FVCのビジネスモデルや運用方針について不満を表明している。この株主提案に対し、FVCは4月21日、反対の意見を表明。「地域金融機関や企業と組んでファンドを設立し、ベンチャー企業へ投資できる環境を提供している今のビジネスモデルは、一定の顧客満足度を得られている」と反論した。

さらに「投資を通じてキャピタルゲイン(売買差益)、成功報酬を得ることを目的に、当社が意志を持って起業家を見つけ、投資リターンを上げていくことにも努めている」とした。両社の主張はすれ違い、他のFVC株主の対応が焦点となっていた。

6月14日、事態は動いた。

FVC株の約7.4%を保有する筆頭株主で、投資・M&A(合併・買収)事業などを手掛けるDSG1(名古屋市)が、金氏の提案に賛成の意向を明らかにしたのだ。同日、金氏らとの連名で関東財務局に提出した大量保有報告書で金氏側に付くことを表明した。

「(大量保有報告書の)提出者株式会社DSG1は提出者金武偉に対し、2022年6月14日付けで委任状を発行し、提出者金武偉が、提出者株式会社DSG1の代理人として2022年6月23日開催の発行者の第24回定時株主総会およびその継続会または延会に出席し、当該定時株主総会の各決議につき議決権を行使する一切の権限を付与しています」。金氏に議決権行使を一任する、という内容だ。

金氏は自身と自身が経営する投資会社との合計でFVC株の約2.5%を保有する。DSG1から一任を取り付けたことで、発行済み株式の10%近くを押さえたことになる。

3つの要求、社長の反論は?

金氏が訴えているのは、主に3つのポイントだ。

1つは「FVCは受託運用額が200億円規模なのに、ファンドの数が40超もあるのは多すぎる。数は10未満にすべきだ」ということ。「各ファンドで出資者への募集営業、定期報告、問い合わせ対応などに労力がかかり、ベンチャーキャピタルとして重要な投資案件の発掘に注力できていない」としている。

次に、投資領域。FVCが運用する40超の各ファンドが地域、投資対象、金額がバラバラで細分化されており、「成長期待のある企業に追加投資する余力が乏しい」と主張する。地方銀行とのパイプを生かした事業再生投資などの新領域へ投資を広げるよう求めている。

3つ目は、同社の収益の源泉について。金氏はファンドが管理手数料に依存しているとして、そうした体質からの脱却を要求。手数料をあてにするのではなく、投資リターンを追求するビジネスモデルへと原点回帰すべきだと指摘している。

金氏は「提案を通して一番言いたいのは、FVCは無借金経営をしていて、レバレッジの利いた大胆な投資もできるベンチャーキャピタルなのに、それができていない。宝の持ち腐れになっている」と指摘する。

さらに「過去6年間で運用ファンド総額の純増額が37億円にとどまり、株価も低迷し、収益も低空飛行。そうした現経営体制について、株主から信を問われるべきだ」と主張する。

筆頭株主が金氏に同調する姿勢を示したことについて、FVCは14日、日経ビジネスの取材に対し「当社の理念や主張を理解していただけず、残念。その他の株主の皆様には引き続き、当社の考え方や事業の進捗についてご理解いただけるよう今後もコミュニケーションを続けていく」とコメントした。

「業績、株価向上の自信ある」 FVCの松本直人社長




――株主提案についてどう思われましたか。

「驚いています。金氏とは1年以上前からコミュニケーションをしてきたのに、いきなり提案してきたというのが正直な思いです」
「一方、今回提案を受けたことへの反省もあります。私は2016年に社長になり、事業の土台づくりを進めてきました。しかし、株価が低迷しています。我々のビジネスモデルや会社の将来性についての説明を十分にしてきませんでした。ただ、業績や株価を向上させる自信はあります」

――金氏は、ファンドの多さに疑問を持っています。どうお考えですか。

「我々はそこにオリジナリティーがあると思っています。金氏は『10本未満に集約しろ』と言いますが、我々はとにかくもうかればいいという観点からのファイナンシャルリターンだけを求めてはいません」
「地域金融機関と協力し、地域の課題を解決しようとする企業や若者、女性起業家など地域活性化に必要な企業に資金を供給したいとの思いでファンドをつくっています」
「現在運営しているファンドの約半分は、地域金融機関と我々だけで運営する『2人組合』と呼ばれる形態で、出資者のニーズなどに応じてカスタマイズしたものです。思いの異なるファンドを集約することは出資者の理解を得られませんし、契約上もできません」
「10本未満に集約することは、集約できないファンドを解散させないといけないことを意味しており、我々の会社の企業価値を毀損することだと考えています」

――「投資領域が狭い」という金氏の主張については。

「何をもってそう言っているのかが分かりません。我々は、他のベンチャーキャピタルと比べると、むしろ広いと感じています。同業他社の多くはIPO(新規株式公開)を目指す企業にしか投資しませんが、我々にはそれ以外でも利益を上げられる見込みのある企業であれば、投資できる独自の投資手法があります」
「実際、(投資先の)半分程度がIPOを目指さない企業です。また、事業承継のタイミングで後継者が直系親族ではない場合、株式を円滑に後継者にバトンタッチできるスキームを提供しています。事業再生投資についても今後ニーズがあればやりたいと考えています」

編集部注:このインタビューは、大量保有報告書が出される前の6月10日に実施した

(日経ビジネス 小原擁)

[日経ビジネス電子版 2022年6月15日の記事を再構成]

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