ゼンリー、23年2月終了 成長に向けた青写真必要
読み解き 今コレ!アプリ フラーAppApeLab編集長 日影耕造氏
もうすぐ年の瀬。2022年のアプリ関連ニュースで筆者が最も衝撃を受けたのは、位置情報共有アプリ「zenly(ゼンリー)」の突然の終了アナウンスだ。ゼンリーを運営する米スナップは9月、事業整理の一環でゼンリーの提供を終了することを同社のウェブサイトで発表。12月にはゼンリーの日本公式ツイッターが23年2月3日にサービスを終了する告知を投稿した。
アプリの成長度合いを見る限り、ゼンリーは突然終了するアプリには到底思えなかった。

フラー(新潟市)が手がけるアプリ分析ツール「AppApe(アップ・エイプ)」によると、22年9月のゼンリーの月間利用者数は過去最高で、前年同月に比べ55.3%増と順調だった(数値はすべてiOS・アンドロイド合算)。
月間利用者数の性年代別構成(22年11月)を見ると、最も多いのは10代男性の24.9%で、以下、10代女性15.4%、20代男性15.0%、20代女性11.3%と続く。
10~20代の若者が6割を占めており、SNS(交流サイト)上に"住んでいる"とも表現されるソーシャルネーティブのZ世代が使うアプリとしてニーズが存在したのは間違いない。
実際、ゼンリー終了発表直後の10月利用者数は前月比6.8%減となったものの、11月は2.1%増と大きく下げておらず、引き続き利用が旺盛だ。
スナップはゼンリーと同様の位置情報共有機能「Snap Map」を搭載する同社のSNSアプリ「Snapchat(スナップチャット)」への移行を呼びかけている。
ただ、日本国内ではスナップチャットの利用者数(22年11月)はゼンリーの約15分の1にとどまり、右肩上がりで成長してきたゼンリーとは隔たりがある。
それでも運営元のアプリが同様の機能への移行を促した効果は強力で、スナップチャットの12月3~9日の合計利用者数は前週の11月26日~12月2日に比べ2.5倍に増えた。
ゼンリーの後継アプリも登場し始めた。ゼンリーとよく似た機能の「NauNau(ナウナウ)」は、起業家でエンジニアの片岡夏輝氏が個人で開発したSNSアプリだ。
ベータ版で開発の余地はあるものの、Google PlayとApp Storeの双方のストアランキング(無料アプリ)で総合1位となった。
人気絶頂の最中でのゼンリーの終了は、ヒト、モノ、カネのうち、ヒトをいくらアプリに集めても次につながるモノやカネの道筋が見えなければ先がないことを示していると筆者は感じている。ユーザーの声に耳を傾け、アプリの提供価値を常に見直し、ユーザーとともに成長していくための青写真を描くことが求められる。
ゼンリーによってZ世代を中心としたユーザーのニーズがすでに顕在化しているだけに、位置情報共有アプリはマネタイズのポイントがクリアできれば爆発的な成長が見込めるはずだ。今後、ユーザーが選ぶのはどのアプリなのか、あれこれ想像しながら年を越そうと思う。
[日経MJ2022年12月19日付]