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西友で「楽天ポイント」 食品スーパー首位への野望

日経ビジネス電子版

西友が本格的に「楽天経済圏」に加わる。楽天ポイントを導入し、新たなアプリも投入。楽天グループの会員基盤を生かし、デジタルマーケティングやネットスーパーを強化する方針だ。狙うは「食品スーパー首位」の座。どんな構想を描いているのか。

2022年4月、西友が運営するスーパーマーケットの店頭の景色が変わる。楽天ポイントの大攻勢が始まるのだ。

「西友」「リヴィン」「サニー」の全店舗で4月1日から「西友デザイン」の楽天カードの発行が始まり、4月5日には電子マネーの「楽天Edy」、4月26日には「楽天ポイントカード」がそれぞれ使えるようになる。

「楽天ポイントカードを提示したら通常の5倍ポイントが貯まる」「楽天カードや楽天Edyで支払えば、楽天ポイントの還元率がアップする」。西友はこうしたキャンペーンを4月以降、店頭で次々と展開していく予定だ。

西友は運営する全店舗にスマホ決済サービスの「楽天ペイ」、来店でポイントがもらえる「楽天チェック」、レシート画像の送付でポイントがもらえる「Rakuten Pasha」を導入済み。ここに楽天カード、楽天Edy、楽天ポイントカードを加え、楽天の決済・ポイントサービスをフルラインアップでそろえる。

4月26日には「楽天西友アプリ」を新たにリリースする。既存の「楽天西友ネットスーパー」アプリを実店舗でも使えるようにし、さらに楽天ペイや楽天ポイントカードの機能も盛り込む構想だ。西友は「楽天ポイントが使えて貯まる日本最大級のスーパーマーケット」に変貌する。

ウォルマートから「楽天のスーパー」へ

「スーパーマーケットにもDX(デジタルトランスフォーメーション)が求められている。楽天のエコシステムを西友の店舗と融合していくということだ」

3月10日、東京都内。楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は戦略説明会でこう語った。

旧セゾングループの中核企業だった西友は、バブル崩壊後に業績が悪化。02年に米ウォルマートと資本業務提携を結び、08年にはウォルマートの完全子会社となった。楽天は18年1月にそのウォルマートとの戦略的提携を発表し、同年10月から西友と共同で「楽天西友ネットスーパー」を展開してきた。

楽天はその後、21年3月に米投資ファンドのコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)と組んで西友を買収。西友への出資比率は20%で、KKR(65%)と合わせて2社で85%を保有する。一方、ウォルマートは残りの15%を保有し続けている。

クレディセゾンは今回の発表に先立ち、西友との提携サービスの終了を明らかにしていた。「ウォルマートカード セゾン・アメリカン・エキスプレス・カード」の新規受付は既に終了し、西友でのカード決済で受けられる割引も3月31日までとなる。その翌月から楽天ポイントのキャンペーンが始まるのだ。

西友が楽天ポイントの導入を選択したことで、名実ともに西友のパートナーは楽天になる。セゾン、ウォルマート色は薄れ、「楽天経済圏」の仲間入りを果たす。西友にとって明確な戦略転換となる。西友は楽天と手を取り合って何を目指すのか。

「日本を代表するOMOリテーラーに」

西友の大久保恒夫社長は「デジタルマーケティングを強化して、日本を代表するOMOリテーラーになっていきたい」とその狙いを語る。

OMOは「Online Merges with Offline」の略語で、オンラインとオフライン(実店舗)の垣根を越えることを意味する。楽天グループは1億人以上の会員基盤を持ち、年間で約5300億ポイントを発行するポイント大手。楽天ポイントとの連携によってネットスーパーでも実店舗でも新たな顧客を開拓できるという思惑がある。

大久保氏は説明会で、西友が運営するスーパーにおける楽天ポイントカードの利用者数を22年に500万人超、25年には700万人超に拡大し、アプリのダウンロード数も22年に120万超、25年に500万超に増やすことを目標に掲げた。

楽天IDとひも付けてオンラインでもオフラインでも顧客の購買データを取得し、分析することで、1人1人の好みにあった商品を提案したり、アプリを通じて来店を促したりすることができる。将来的には常連客向けに何らかの特典を用意するロイヤルティープログラムを展開することも考えているという。楽天は、特定の商品を購入する可能性の高い「見込み客」を楽天会員の中からAI(人工知能)で抽出できる「Rakuten AIris(アイリス)」というサービスも手掛けている。

「2方面作戦」でネットスーパー拡大

デジタルマーケティングとともに力を入れるのは、楽天西友ネットスーパーの拡大だ。西友の実店舗を利用する客は50~70代が中心で、高齢化が進んでいる。一方、楽天西友ネットスーパーは30代、40代の利用が多い。ネットスーパーの強化で顧客層の若返りを狙う。

楽天の三木谷氏が示したのは1枚の折れ線グラフだった。日本における食品のEC(電子商取引)化率は市場全体の3.3%(20年度時点)にすぎないが、世界の物販のEC化率は17.9%まで拡大している。

「日本は世界と比べてかなり遅れている状況にあるが、昨今の新型コロナウイルス禍により、食品のEC化はまさに超拡大フェーズに入りつつある。日本もついに本格的なOMOの時代に突入した」(三木谷氏)

これからのスーパー事業の成長エンジンは、間違いなくネットスーパーにあると読み、他社に先行して投資を加速していく構えだ。

楽天西友ネットスーパーの特徴はハイブリッドな配送体制にある。実店舗からと、物流センターからの2方向から商品を出荷できる体制を整えた。実店舗で周辺の住民を取り込み、物流センターからはより広域な商圏で利用客を開拓する作戦だ。新型コロナウイルスの感染拡大で巣ごもり消費が増えたこともあり、21年の流通総額は約500億円に達し、店舗出荷分が前年比26%増、物流センター出荷分が79%増と大幅な伸びとなった。

店舗出荷型のネットスーパーは現在124店舗で展開し、多くの店舗で黒字化を達成しているという。一方、物流センターは増設を重ねており、18年に千葉県柏市、21年に横浜市、22年に大阪府茨木市に開設。23年には千葉県松戸市でも稼働する計画だ。24年には当初の予定から1年前倒しでの流通総額1000億円達成を見込む。

「世界に冠たるOMOプラットフォームをつくる」と三木谷氏

ネットスーパー事業では、ライフコーポレーションがアマゾンジャパン(東京・目黒)と組んで首都圏や京阪神で配送エリアを拡大している。楽天は22年1月にネットスーパーのシステムを提供するプラットフォーム「楽天全国スーパー」を立ち上げ、ベイシア(前橋市)がこのプラットフォームに出店する形でネットスーパーに参入。いなげやも22年2月に楽天全国スーパーと契約を結んだ。楽天は西友と運営するネットスーパーで培ったノウハウを横展開して有力スーパーとの提携を増やそうとしている。

「年々、人口が減っていく非常に厳しい環境の中、スーパーマーケットは本当に大きな転換点を迎えているが、この転換点はより大きなビジネスチャンスでもある。西友とともに世界に冠たるOMOプラットフォームをつくる。このプラットフォームは西友から始まり、ほかの全国の中小のスーパーでも使えるようにしていきたい」(三木谷氏)

実際、西友の業績は上向いている。21年12月期は売上高7373億円。EBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は419億円となり、過去16年間での最高益を達成した。楽天・KKR傘下となって日本の会計基準が適用される22年は売上高7562億円、営業利益で226億円を目指す。

大久保氏は「利益を上げて、その利益を投資に回して大きく発展していこうという考え方でこれからはやっていく。その基盤がようやく整ってきた」と手ごたえを語る。

目指すは「ネットスーパーでナンバーワン、デジタルマーケティングでナンバーワン」だという。「これが達成できたときに、食品スーパーでナンバーワンになれるだろうと思っている。楽天グループと力を合わせて、お客様に喜ばれる小売業になっていきたい」(大久保氏)

西友はEDLP(エブリデー・ロープライス、毎日安売り)を掲げるなど、低価格の品ぞろえに強みがある。中でも、プライベートブランド(PB)「みなさまのお墨付き」は全品の価格を6月末まで据え置く。原材料の高騰などで仕入れ原価は上がっているが、生産段階からコスト構造を見直すことで店頭価格を維持する方針だ。

PBを拡充し、製造小売業化を進めながら「OMOリテーラー」として飛躍を期す。楽天経済圏に入るという新たな戦略で、西友は再び力強く羽ばたいていけるか。勝負のときが間もなく始まる。

(日経ビジネス 酒井大輔)

[日経ビジネス電子版 2022年3月14日の記事を再構成]

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