米eBayが「何でも扱う」脱却 高級品売買に軸足 - 日本経済新聞
/

米eBayが「何でも扱う」脱却 高級品売買に軸足

電子商取引(EC)大手の米イーベイが「何でも扱う」路線から脱却し、高級品売買の強化に向けた新技術・ノウハウの導入に動いている。鍵となるのが、高級品が本物であることを保証する技術で、偽物を判定する認証ビジネスやNFT(非代替性トークン)アート取引サイトなどを相次いで買収した。物流大手とも提携しており、価格競争力のある配送サービスを提供し、海外の優良顧客を増やす。
日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

ECサイト大手の米イーベイは事業分野の絞り込みを進めている。

傘下にあるイーベイインディア、イーベイコリア、チケット売買サイト運営の米スタブハブ、個人売買や不動産などの広告事業クラシファイドを売却し、トルコの同業子会社ギッティギディヨルのサービスを終了した。これは何でも売る方針からの脱却を示している。収集品のオークション(競売)サイトとして有名になった同社は、本業に回帰しつつある。

もっとも、この分野にはストリートファッションを扱う米グレイルド(Grailed)や腕時計の独クロノ24(Chrono24)など、ニッチな高級品リセール(再販)サイトがひしめいている。

イーベイは競争力を維持するため、高級品を安心して買える場として自社を位置付けようとしている。2022年11月には米ニューヨーク市に高級ブランド品の査定や交換、販売ができる実店舗をオープンした。

CBインサイツのデータを活用し、イーベイの最近の買収、出資、提携から4つの重要戦略をまとめた。この4つの分野でのイーベイとのビジネス関係に基づき、企業を分類した。

・認証サービス

・各分野の専門性強化

・決済&融資

・配送&フルフィルメント(受注・発送管理)支援

認証サービス

イーベイは認証分野のリーダーを目指している。認証テックを重視したことにより、高額品の購入が最大6%増えたとされる。「真贋(しんがん)保証」のチェックマークが付いた商品が売れると、配送前にイーベイのチームの一つに送られて鑑定を受け、独自の鑑定書が作成される。

イーベイは認証サービスを手掛ける企業の買収や提携により、高額品の売り上げをさらに増やしたい考えだ。同社のECでは販売価格の2~12%の手数料を徴収する。

同社は様々な分野の認証で関係を構築している。22年7月には米国宝石学会(GIA)と提携し、500ドル超で売れた新品・中古の宝石の認証サービスを始めた。真贋保証ではすでにスニーカーや腕時計、ブランドバッグ、トレーディングカードなどを認証している。

22年5月には真贋保証でのカードゲームの認証を拡充するため、トレーディングカードの真贋鑑定などを手掛けるプロフェッショナル・スポーツ・オーセンティケーター(PSA)とも提携した。これにより、米国で2000ドル超のコレクションカードが売買されると、配送前にPSAの鑑定士チームに送られるようになった。

21年11月には米スニーカー・コン(Sneaker Con)の真贋認証ビジネスを買収した。買収額は明らかにしていない。これにより20年10月にスニーカー・コンと提携して始めたスニーカーの真贋保証を一段と強化した。購入品はイーベイのスニーカー認証チームに送られて鑑定を受けるようになった。

各分野の専門性強化

イーベイはスニーカーや車のパーツ、カードゲームなどの分野に精通している企業の買収や提携を進めている。ニッチな分野で専門知識と当事者意識を持つのが狙いだ。

22年8月には顧客が自分の車に合うパーツを注文できるようにするソフトウエアツール、米マイフィットメント(myFitment)の買収を完了した。これにより成長分野である自動車パーツ部門を強化する。この分野の年間売上高は100億ドル以上に相当する。

同じ8月にはコレクションカード取引サイトを運営する米TCGプレーヤー(TCGplayer)を2億9500万ドルで買収すると発表した。これは高額のコレクションアイテムに事業を拡大するイーベイの計画の一環だ。この分野は24年には同社の売上高の半分を占めるようになるとみられている。

22年6月にはNFTアート取引サイトを運営する英ノウンオリジン(KnownOrigin)も買収した。買収額は明らかにしていない。イーベイは21年5月にはNFT取引を導入し、同社のプラットフォームでNFTを売買できるようにしている。

決済&融資

イーベイは特殊な収集品や高級ブランド品で評価を確立する取り組みの一環として、決済分野の投資では高額品の購入支援ツールに力を入れている。

この分野での提携により、買い手は後払いや分割払いが選べるようになった。例えば、オーストラリアの後払い決済「BNPL」大手アフターペイとスウェーデンの同クラーナ(Klarna)との提携により、高額品を4回払いで購入できるようになった。

越境取引の円滑化も引き続き重要な戦略だ。中国ではイーベイに出品されている商品を買えないが、中国からの出品者は世界全体の12%を占める。国際決済の米ペイオニア(Payoneer)との21年5月の提携により、海外出品者のサプライヤーやビジネスパートナーとの両替や支払いがスムーズになった。

20年10月には、腕時計や車など高額品を購入する際の安全性を強化するため、米エスクロー・ドット・コム(Escrow.com)と提携した。イーベイのサイトで1万ドル超の腕時計を買うと、代金はいったんエスクロー・ドット・コムのエスクロー(第三者預託)口座に預けられる。買い手が商品を受け取った後、出品者に代金が入金される。

配送&フルフィルメント支援

イーベイは商品配送の速度や使いやすさ、透明性を改善する企業と提携している。

22年7月にはアジア太平洋地域から世界へ競争力ある価格でのEC配送を可能にするため、米物流大手フェデックスとの提携を発表した。30年にはこの市場の規模は353兆ドルに達するとみられている。

21年7月には、費用対効果が高い翌日配送を英国で導入するため、英物流会社オレンジコネックス(Orange Connex)とフルフィルメント業務で提携した。オレンジコネックスは英国の出品者の保護に加え、商品の保管や梱包サービスも提供している。

21年5月には、ソフトウエア開発の英ワンパッチ(OnePatch)と組んだ。ワンパッチは出品者が複数のプラットフォームでの在庫や注文、配送を管理できるサービスを提供する。この提携ではイーベイの「パートナー・グロース・イニシアチブ」を通じ、イーベイに出店している中小企業30万社以上にサービスを提供している。

その他

イーベイはこの4つの重要分野に加え、再販を推進するテックにも資金を投じている。

20年11月には返品管理ソフトウエアを手掛ける米オプトロ(Optoro)と提携し、イーベイのECにオプトロのサービス「バルク(BULQ)」を実装した。出店各社はバルクで有名小売りやブランドから過剰在庫を安く仕入れ、イーベイで再販する。イーベイは21年、オプトロの資金調達ラウンド(調達額2500万ドル)に参加した。

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン

権限不足のため、フォローできません