自閉症に関わる遺伝子、名古屋大学など特定
名古屋大学の木村大樹講師らは、自閉スペクトラム症(自閉症)の患者では神経細胞に関わる遺伝子のグループに変異がみられやすいことを証明したと発表した。日本人の患者と健常者各約300人について、全ての遺伝子を解析して変異の有無を比べた。自閉症に強く関わるとみられる遺伝子を調べれば、症状のメカニズムの解明や診断法への応用が期待できるという。
神経細胞の接合部分「シナプス」の機能に関わる遺伝子のグループに変異が多かった。このうち「ABCA13」という遺伝子の変異は、5人の患者に見られたが健常者には見られなかった。この遺伝子が自閉症に特に強い影響を持つ可能性があるという。一方で一つの遺伝子のみが自閉症の発症や症状を決定するわけではないとみられる。
シナプスの機能に関わる遺伝子に変異が生じると、遺伝子を基に作られるたんぱく質がうまく働かなくなり、脳の発達などに影響する可能性がある。遺伝子の機能を調べることで発症の仕組みの解明や治療薬の開発につなげられる。
これまでに欧米では自閉症患者について遺伝子の変異を大規模に調べた例があり、発症に関わるとみられる約100個の遺伝子が見つかっている。ただ病気に関わる遺伝子は地域や人種によっても異なる可能性があり、日本人集団での解析が求められていた。研究には横浜市立大学、理化学研究所なども参加した。