9月の電力保障件数、前月比16%増 新電力撤退の余波

経済産業省は15日、大手電力傘下の送配電会社が未契約の法人に電気を届ける「最終保障供給」の利用件数が、1日時点で前月比16%増の4万1278件だったと公表した。燃料高などに伴って新電力の撤退や事業縮小が相次いだ影響で、電力の調達先に困る企業や自治体が増加。送配電会社に頼る構図が生まれている。
地域別では東京電力ホールディングス(HD)管内が1万2249件と最多で、前月より25%増えた。関西電力も27%、中部電力は14%増えた。全国の8月末時点の件数は3万7292件と前年同月の85倍にのぼった。増加は4カ月連続。
一方、四国電力は1日時点で693件と前月から半減した。同社は8月に卸電力価格を加味した暫定的な料金プランを用意し、他社からの契約切り替えの受け付けを再開した。沖縄を除く大手電力9社は通常プランの受け付けを2023年2月ごろまでに相次ぎ再開する予定で、最終保障の増加に歯止めがかかる可能性がある。送配電各社は1日から最終保障供給の料金を引き上げており、企業などに電力小売りと契約するよう促す。

燃料高や電力不足により電気の調達コストが急増し、撤退や事業縮小を決める新電力が相次ぐ。8月には東北電力と東京ガスが折半出資するシナジアパワー(東京・台東)が11月末に電力小売りから撤退すると発表した。他の電力小売会社も通常の契約だと採算が合わず契約の受け付けを停止する動きが広がり、企業などが小売りとの契約を結びづらくなっている。
最終保障供給は、1年未満の利用を想定した「セーフティーネット」としての意味合いが強い。送配電会社は需給調整用の電気を最終保障に回している。電力は需給を一致させないと周波数が乱れ、大規模な停電リスクにもつながる。最終保障の利用企業が想定外に増え続けると調整用の電気が不足し、停電を防げなくなる恐れもある。