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IFRS、のれん償却議論に区切り 迫られる日本の対応

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国際会計基準(IFRS)を開発する国際会計基準審議会(IASB)は24日、のれんを定期償却しない現行ルールの維持を決め、長年の議論が一応の区切りを迎えた。「のれんと減損」を主題とする理事会では、「コストがかかる」「耐用年数を見積もれない」など、定期償却をルール化する難しさを指摘する声が相次いだ。

ルール維持は理事11人中10人の賛成で決まった。審議は2時間を予定していたが、1時間を少し超えたところで終わった。「償却支持が数人はいると思っていたが」――。議論の様子をオンライン視聴していた日本の会計業界関係者は肩を落とした。日本は自国で採用しているのれん償却ルールをIFRSでも導入すべきだと長年主張し続けてきた。

IASBは2010年代半ばから、のれんの会計処理について改善を検討してきた。減損は計上が遅くなったり小さくなったりしがちで、利益や資産の過大表示によって投資家をミスリードしかねないという指摘があったためだ。

早めに費用化していく定期償却の再導入議論が本格化したが、議論は難航した。のれんは現在の会計ルールで明確に認識できない様々な要素の集合体であり、機械的に費用化していいのか、何年で償却すべきかなどで意見は割れた。ある会計士は「のれんの処理を巡る議論は『神学論争』だ」と話す。

収束の見えない議論の中で現行のルール維持に傾いたのは、上場企業にのれん償却を導入する方向だった米財務会計基準審議会(FASB)が、今年6月に突如議論を打ち切ったことも大きい。基準間の差異を縮める「コンバージェンス」を重視してきたIASBにとって、償却再導入の大きな動機を失った。

欧米が非償却で足並みをそろえる形となった今回の決定は、償却を続ける日本にも影響を及ぼす可能性がある。監査法人トーマツの鶯地隆継パートナーは「企業から『日本も今の償却ルールを見直すべきではないか』という議論が出てきてもおかしくない」と語る。平時の利益を押し下げる償却ルールのせいで、海外企業と同条件で競争できないという不満はくすぶっていた。

定期償却導入議論の契機だった、のれん巨額減損の連鎖が資本市場に混乱をもたらす「システミックリスク」は温存されている。QUICK・ファクトセットによると、日米欧の主要企業ののれんは21年度末で合計約6.5兆ドルに達し、純資産対比では3割を占めている。日本も非償却に動けば、リスクは一段と膨らむ。

会計処理の議論に区切りを付けたIASBは、情報開示の充実という別の道を探る。9月にはM&A(合併・買収)に関する開示の充実を暫定決定した。実施がどんな戦略的な根拠に基づいているか、目的がどれくらい達成されているか、目的達成度を測るための指標、期待されるシナジーの定量的開示といった項目が対象になりそうだ。

開示を通じてM&Aの成否を浮き彫りにすることで、のれん償却議論の新たな手掛かりができるとの期待もある。ただ、こうした開示の基準化までにはなお数年を要する見通し。温存されたリスクにどう立ち向かうかの解はまだ見えていない。

(企業財務エディター 森国司)

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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