技術人材で地球益に貢献
SmartTimes 公益資本主義推進協議会副会長 田中勇一氏
「ナンバーワンよりオンリーワン」を掲げ、橋梁架設工事の会社で独自の施工技術を磨き国内外で信用を積み重ねつつ、会社の社会貢献性を高めているのは野田クレーン(岐阜県大垣市)の野田重秀さんだ。祖父が創業し、父が社長を務める野田クレーンに入社したきっかけは阪神大震災。大学の機械システム科で学び、プラントエンジニアリング大手に勤務していた野田さんに、大震災の大規模な復興工事をすることになった父から、力を貸してほしいと連絡があったのだ。

野田さんは工事に必要な機械を自分たちで独自に開発する分野で本領を発揮。独自性のある機械をどんどん生み出し、特許も5本取得した。さらに、野田さんは、独自の機械をつくり多くの企業で役立てるには信用信頼が必要なことを痛感した。社内で誰も持ってない難関資格である技術士の取得を目指す。
そして、5年がかりで技術士の資格を取得し、社内外から信用信頼が集まることになる。また、野田さんは社会が技術に何を求めているのか、技術士として社会に役立つにはどうするのかも考えさせられた。そのなかで公益主義資本主義推進協議会(PICC)大久保秀夫会長に出会う。
PICCの活動を通して地球益への貢献という大きなテーマに向かう大切さを理解した野田さんは、地球益に貢献する会社になるための在り方について、社員と共に考え創りあげる体制を築く。
テーマ実現のため海外進出の必要性を感じるようなった時、三菱商事から相談がくる。それは、インドネシアにクレーン会社を設立したものの、そのオペレーションや安全管理の方法がよくわからないので教えてほしいというもの。即応し事業を見学した野田さんは、三菱商事が現地の雇用や発展につながるように人や会社を育てている様子をみて感銘を受ける。
さらに、ミャンマーにもクレーン会社をつくったので見てほしいと打診され現地に行った際に、現地でのオペレーション人材育成にビジネス機会を見いだす。三菱商事の協業が本格的になったこともあり、野田さんは、ミャンマーの人材を日本に派遣し技術を学ばせ、日本での人手不足を解消しつつ、母国に帰ってその技術を生かすことができるようにするための会社を設立した。
野田さんは海外だけでなく地域貢献にも余念がない。限界集落である旧根尾村越波(おっぱ)にある廃校を再生。かつての分校で学んだ旧村民を中心にワサビ田の整備をした。また、野外キャンプ、自然生態系調査の宿泊研修にも利用可能な活動拠点とし、夏には社員も宿泊し、地域住民と交流を深めている。
「いずれミャンマーの人たちで野田クレーンミャンマーを運営していきたい」と熱く語る野田さんの今後の活動から目が離せない。
[日経産業新聞2022年6月24日付]

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