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リーガル、社員2割が希望退職 コロナ前から構造的問題

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リーガルコーポレーション(写真はREGAL日本橋店)は今後、多様なワークスタイルに対応したビジネスとカジュアルの両シーンで活躍できる革靴(右2点)の展開も強化する
日経ビジネス電子版

リーガルコーポレーション社長の武川雄二氏は、100人規模の希望退職と、国内に4拠点ある靴生産工場のうち1つの閉鎖を決めた。高品質なビジネスシューズを提供し、支持を得てきた靴製造大手だが、新型コロナの影響を受けた。「コロナ前から構造的問題があった。スピード感を持って変革に臨む」と再起を期す。

◇  ◇  ◇

武川雄二氏 リーガルコーポレーション社長。1957年生まれ。80年、立教大学経済学部卒業、同社入社。子会社のフィット近畿日本社長(2019年解散)、経営企画室長、取締役営業本部長などを経て、20年4月から現職。コロナ禍での業績不振を受けリストラを決断。山梨県出身

新型コロナウイルスの影響で経営が厳しくなり、3月に50歳以上の社員を対象に希望退職者を募りました。結果、全社員の約2割強に当たる95人が応募しました。希望退職の募集は二十数年ぶりです。また、国内4製造工場のうち山形県米沢市の工場の閉鎖を決め、米沢工場を運営する子会社の米沢製靴(千葉県浦安市)を4月末に解散しました。工場の従業員47人は退職することとなりました。

コロナ禍の外出自粛や在宅勤務の広がりによって、主力のビジネスシューズの需要が減り、工場の稼働率が低下し、生産体制を縮小・集約することにしたのです。会社を去る社員一人ひとりの顔と名前がほぼ一致しますし、手続き書類を承認する際、胸がいっぱいになりました。今回退職となった皆様や、不安を与えてしまった世間の皆様に改めておわびしたいです。

希望退職に応募したのは定年を迎え再雇用した社員が多く、一緒に仕事した人もいます。「頑張って会社を立て直して」と逆に励まされたりもしました。2021年3月期は40億円を超える赤字が見込まれています。今は会社を存続させるための試練の時期と捉え、とにかく前を向くしかないです。

伝統に頼り過ぎていた

リーガルコーポレーションは、1902年の創業以来、一貫して靴の製造・企画・販売に取り組んできました。「品質重視に徹した靴作り」などを経営理念に掲げ、靴を通してビジネスパーソンをはじめとする人々の生活文化の充実に貢献してきたと自負しております。90年に社名を「日本製靴」からブランド名「REGAL(リーガル)」と同じ「リーガルコーポレーション」に変更し、リーガルのブランドビジョンである「The pride to share.」、つまり「お客様と共に誇りを分かち合う」という気持ちを持って、我々も励んできました。

しかし、長きにわたり支持を得てきた「伝統と歴史」に甘えていた部分もあったのではないかと思います。

私は、新型コロナウイルスの感染が拡大していた20年4月、取締役営業本部長から社長に就任しました。コロナ禍で売り上げが減少し経営に支障が生じたようにも見えますが、以前からビジネスシューズ業界は構造的な変化の波が少しずつ押し寄せていました。

最初の打撃は、05年に環境省の号令で本格的にスタートした、夏場にノーネクタイなどの軽装でビジネスシーンを過ごす「クールビズ」でした。

さらに地球温暖化、ダイバーシティー(多様化)、ジェンダー(性差)などへの意識の高まりもあり、スーツスタイルが当たり前だった時代から社会が急激に変化しました。私は今でも毎日電車を利用していて、通勤者の足元を見るのですが、スニーカー通勤者も多いですし、カジュアル化が進んでいるのを実感しています。

何か手を打たなければ、会社の業績は徐々に右肩下がりになるだろうという危機感を強く持ちました。リーガルブランドの主要顧客はシニア層に偏り始め、これまでも20~30代の若年層への対応をしていたのですが、十分とはいえませんでした。

こうした中、社長就任後に売り上げが前年比で4割以上下がり、根本的に会社を強くしなければいけないと考え、最悪の場合は「希望退職」「工場閉鎖」もちらつきました。20年6~7月ごろには、コロナが収まれば、それは避けられるとみていましたが、第3波が広がった20年11月ごろから「このままでは会社が持たない」と意思を固めました。

製造工場は米沢以外に岩手県に2拠点、新潟に1拠点ありますが、需要の低迷で4工場の生産稼働率を日産600~700足から500足以下にそれぞれ落としました。各工場の生産ラインプロセスも異なっており、工場の特色も違います。

「人への関わり」を基軸に

靴には100種以上のパーツが使用され、熟練した職人の作業が必要な場合も多いです。例えば、履き心地がよく形崩れしにくい「グッドイヤーウエルト式製法」(アウトソールと細革を出し縫い)が代表例です。

様々な要望に対応するため、国内4拠点の生産体制は維持したかったのですが、最終的に米沢工場は製造工程上、他工場への代替可能性が高いことから、閉鎖を決めました。米沢工場は約50年前にリーガルが他県へ最初に進出した工場であり、18年に約5億円をかけ工業団地に工場を移転したばかりでした。

2月の公表後、ファンの方々から会社に激励のメールも多く頂きました。「希望退職の報道を拝見しました。ずっとリーガルにお世話になっています。常にビジネスシューズが5足以上あり、週末は靴磨きが日課で10年以上たちます。今ではスニーカー、サンダルまでリーガルで、妻にもリーガルの靴をプレゼントしています。これからもよろしくお願いします」。そんな内容です。長年のファンのためにも会社を強くしなければとの熱い思いがこみ上げてきました。

これからは、若者向けにビジネスとカジュアルの両シーンで使えるユーティリティーシューズや、リサイクル素材を使った環境に優しいシューズの展開にも力を入れたいと思います。弊社に求められる価値、必要とされるものを知り、弊社しか作れない商品をプロ意識と自信を持って提供して喜んでいただくことを最優先にします。

靴は生活に欠かせないアイテムです。それでも、「靴へ関わる」だけでなく、「靴を履く人への関わり」に基軸をシフトさせ、単に靴を製造して納品するビジネスから、社員全員が顧客起点の発想を持たなければ、我々は生き残れません。歴史と伝統に頼るだけでなく、「革新と進化」にスピード感を持って臨むことで、断腸の思いで会社を去った皆様に報いたいと思います。

[日経ビジネス 2021年5月17日号の記事を再構成]

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