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自宅が病院に 在宅医療の進化に挑むスタートアップ

CBINSIGHTS
欧米などで在宅医療の利用が高齢者だけでなく、幅広い層に広がりつつある。治療を受ける側の視点に立った「患者中心の医療」が浸透し、通院負担などを軽減できる在宅医療が見直されているためで、新型コロナウイルス禍も利用に拍車をかけている。関連スタートアップも増えており、自宅で病院に近い医療を受けられるサービスや遠隔で患者の健康状態を確認するサービスなどに取り組んでいる。CBインサイツが在宅医療スタートアップの最新動向をまとめた。
日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

在宅医療サービスはこれまで、自宅など住み慣れた場所で老後も暮らし続ける「エイジング・イン・プレイス」を志向する高齢者を主な対象にしてきた。だが、業界全体での「患者中心の医療」への移行を受け、保険会社や医療機関は受診しやすさや利便性を向上し、医療費を削減するために、全ての人を対象にした同様のモデルの検討を迫られている。

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)により病院は感染拡大を防ぎ、院内治療を縮小して医療従事者の負担を減らす圧力にさらされた。その結果、在宅医療へのシフトは加速した。

医療関係者は引き続きこのシフトに注目しており、スタートアップはシフトを促すデジタルツールやプラットフォームの構築に励んでいる。

今回の記事では、CBインサイツのデータに基づいて遠隔患者モニタリングや在宅診断、医療管理プラットフォームなど在宅医療の12のカテゴリーの未上場企業を抜き出した。

この図は未上場の存続企業のみから成り、この分野を網羅するのが目的ではない。カテゴリーは一部重複しており、主な活用事例に応じて分類している。

カテゴリーの内訳

紹介支援:在宅医療の電子健康記録(EHR)や紹介管理プラットフォームなど、医療システムと保険会社、NPOなど地域社会組織(CBO)の医療連携を支援するソフトウエアシステムを開発している企業。

例えば、米ソーシャリー・デターミンド(Socially Determined)の紹介管理プラットフォームは、貧困などが原因で食事を十分に取れない状況、交通機関へのアクセス、住宅などの要因に関するデータからソーシャルリスク点数を算出して社会的・臨床的に複雑な患者を見つけ出し、こうした患者を最適なケア提供機関につなぐ。

フルサービスの在宅医療:デジタルツールや実際の訪問により、プライマリーケア(1次医療)から急性期まで様々なレベルのフルサービスの在宅医療を提供するスタートアップ。

米メディカリーホーム(Medically Home)は在宅での点滴治療やレントゲン検査、遠隔モニタリングなど急性期の在宅医療向けの様々な製品やサービスを提供している。米メイヨークリニックや米OSFヘルスケア、米マサチューセッツ総合病院など複数の医療機関と提携し、自宅でも病院と変わらぬ医療を受けられるプログラムの構築を支援する。

一方、米ホームワード・ヘルス(Homeward Health)は米国の農村部に住む患者に在宅医療サービスを提供する。メディケイド(低所得者医療保険制度)加入者が対象だ。

遠隔医療:コロナ禍に伴う診療所や病院の受診控えを補うため、遠隔医療プラットフォームの導入が加速した。この分野のスタートアップは患者が医療提供者と遠隔でアクセスし、やりとりできるようにする。

遠隔医療は当初はプライマリーケア向けだったが、各社は摂食障害(米エキップ、Equip)、心不全(米ストーリーへルス、Story Health)、物質使用障害(米オフィーリア、Ophelia)などの疾患の専門医療を開発するようになっている。

データ収集・整理(アグリゲーション):「コネクテッド(つながる)デバイス」は在宅患者の健康状態の遠隔モニタリングで中心的な役割を担っている。ただし、医療機関や保険会社がこうしたIoT機器から価値を得るには、生成した患者データを安全に収集、保存、分析、まとめる手段が必要だ。

米バイタル(Vital)や米バリディック(Validic)などは活動量計や持続血糖モニターなど様々なウエアラブル機器のデータを収集し、整理するプラットフォームを開発している。バリディックはマサチューセッツ総合病院、米医療保険大手ヒューマナ、英サルフォードロイヤル病院などの保険会社や医療機関と提携している。

検査の診断&スクリーニング:スクリーニング検査や診断検査では健康状態を測定し、高リスクの患者を早期発見する。こうした検査の在宅版は高額な費用がかかる入院を未然に防ぎ、医療費を抑える可能性がある。

アイルランドのレッツゲットチェックド(LetsGetChecked)と米ビンクスヘルス(Binx Health)は感染症や性機能など複数の検査を提供する。一方、米エビー(Evvy)は女性の健康に特化し、米レウコ(Leuko)はがん患者向けに体への負担が少ない非侵襲型の在宅スクリーニング検査機器を開発している。

在宅医療のワークフロー:医療機関の在宅医療の効率化を支援する業務フローソフトウエアを開発している企業。米エレメント5(Element5)は在宅医療機関による医師の指示書の追跡、収益サイクル管理、治療が医療保険の給付対象かどうかのチェックを支援する業務フロープラットフォームを提供している。

緊急度自己判定(セルフトリアージ)&ナビゲーション:救急外来の受診の多くは不要不急だ。この分野のスタートアップは症状発現時に患者に携わり、医療従事者が再判定することで適切な治療を提供するデジタル症状チェッカーを開発している。患者は自宅で受診できるオンライン診療の予約を指示されるようになっている。

例えば、ドイツのエイダヘルス(Ada Health)や米ジャイアント(GYANT)は患者のセルフトリアージを自動化するAI(人工知能)チャットボットを手掛ける。

透析&注入療法:看護師や医師が要請に応じて患者の自宅を訪問し、在宅で透析や点滴治療を提供するスタートアップ。

米モノグラムヘルス(Monogram Health)などの企業は慢性腎臓病の患者に透析治療を提供している。一方、米iveeは代謝のサポート、肌や髪のセラピー、睡眠補助などウエルネス全般を管理する在宅点滴を手掛ける。

医療管理プラットフォーム:病院から退院して在宅医療に移行する際などのケアのギャップを埋める医療管理プログラムは、複雑な臨床ニーズを持つ患者にとって非常に重要だ。

カナダのアライヤケア(AlayaCare)や米ペアチーム(Pair Team)などこの分野のスタートアップは、医療機関による在宅医療の管理プログラムの事業化や、患者の回復状況モニタリングを支援するプラットフォームを開発している。

中央管制システム(コマンドセンター):患者の流れや退院を滞らせる医療システムのボトルネックにより、病院は過度の負担にさらされるようになっている。この問題を軽減するため、医療機関は病床使用率や転院、急性期後の患者の受け入れ可能性などをモニタリングし、計画立案やリソース管理を効率化できるコマンドセンターの導入を検討している。

米キュベンタス(Qventus)などこの分野のスタートアップはAIと予測分析を活用し、院内で患者を移動させたり、患者を急性期後の環境(在宅)に速やかに移したり(退院させたり)する。

薬・耐久医療機器(DME)の受注配送(フルフィルメント):患者が自宅で処方薬やDMEなどの医療用品を入手できるデジタルプラットフォームを運営する企業。

米トゥモローヘルス(Tomorrow Health)や米パラシュートへルス(Parachute Health)などのスタートアップは車いすやメス、松葉づえなどの医療用品を提供している。

一方、デジタル薬局は自宅に処方薬を届け、服薬を管理する。米アルファメディカル(Alpha Medical)などの企業は複数の疾患の治療薬を扱っている。一方、米マインディッド(Minded)などはメンタルヘルスなど一つの治療分野に特化している。

遠隔患者モニタリング:コネクテッドデバイスやデジタルチャットボットなどの遠隔患者モニタリング(RPM)ツールを使えば、医療従事者は離れた場所からでも患者の健康状態を追跡できる。こうしたデバイスをオンライン診療モデルに組み込むことで医療の提供範囲が広がり、早い段階での介入やアウトカム(臨床成果)の向上を果たせる。

米バイオフォーミス(Biofourmis)のプラットフォーム「バイオバイタルズ(Biovitals)」には時計型のウエアラブル端末が付いている。このウエアラブル端末で収集した生理学的兆候は医師のダッシュボードに送られる。医師は患者の健康状態をモニタリングし、それに基づいて対応をとる。

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