出光が山口製油所23年度停止 脱炭素で拠点再編加速

出光興産は14日、グループ会社である西部石油(東京・千代田)の山口製油所(山口県山陽小野田市)を停止すると発表した。グループで原油処理能力の約13%を減らす。同日記者会見した出光の丹生谷晋副社長は「北海道・東北以外のエリアはすべて余剰にある」と述べ、製油所再編はこれで終わりでないとの考えを示した。
今回、稼働を停止する山口製油所の処理能力は日量12万バレル。出光は西部石油に38%出資していた。14日にUBE(旧宇部興産)や中国電力などから株を買い集め、出資比率を66.9%まで引き上げた。今後、残りの株式もすべて買い取って完全子会社化した上で、2024年3月期に精製設備を止める。
新型コロナウイルス禍によるガソリン需要の縮小もあり、出光の22年3月期の製油所の稼働率は77%と、昭和シェルとの統合直後の20年3月期から10ポイント減少していた。山口製油所の機能停止により、丹生谷副社長は「単純計算で90%の稼働率になる」と説明した。

石油連盟によると、21年3月末時点の日本の原油処理能力は1日当たり345万7800バレルで、直近20年間で35%減った。一方、同期間に国内の燃料油販売は38%減少しており、能力削減のペースが追いついていない状況だ。
脱炭素や電気自動車(EV)の普及、ガソリン価格の高騰など石油元売り業界への逆風は強まっており、丹生谷副社長は「30年までにグループ内で30万バレルの余剰が発生する」と予測。さらに18万バレルの能力削減が必要になるとの見方を示した。
人口減少や自動車の燃費向上で需要が縮小する中、製油所の数を減らして稼働率を引き上げるのは石油元売り各社にとって共通の戦略だ。業界最大手のENEOSは20年に大阪製油所(大阪府高石市)を停止し、根岸製油所(横浜市)の能力削減と和歌山製油所(和歌山県有田市)閉鎖を発表している。3年間で、全体の2割近い能力を減らす計算だ。
今後は、化石燃料に頼らない事業構造への転換が急務となる。出光は製油所跡地を次世代エネルギー拠点として活用する構想を示しており、山口製油所は燃やしても二酸化炭素(CO2)を出さない水素やアンモニアなど、今後の需要拡大が見込まれる次世代エネルギーの受け入れ基地にすることを検討する。丹生谷副社長は「20年代後半には動き出していきたい」として、整備を急ぐ考えを示した。