ChatGPTのOpenAIが出資する生成AI企業の顔ぶれ

ベンチャー投資は一般的には減少傾向にあるが、大人気の生成AIツール「ChatGPT」「DALL-E 2(ダリ・ツー)」を開発したオープンAIはこれに逆行している。直近では米マイクロソフトから数十億ドルの出資を受け、企業価値の評価が最大290億ドル(約3兆9000億円)になったとされる。23年の予想売上高2億ドルに対し、100倍以上のプレミアムがついていることになる。
オープンAIは今や、ベンチャー投資を強化してAIエコシステム(生態系)の中心になろうとしている。これにより同社のAIモデルに基づいて製品を開発し、使用料を払うAIスタートアップから収益を得る「フライウィール(弾み車)」を始動できる可能性がある。
オープンAIが手掛ける運用資産1億ドルの「スタートアップファンド(Startup Fund)」(マイクロソフトなどのリミテッド・パートナー=LPが出資)は2022年10月以降、主にアーリー(創業初期)ステージのAIスタートアップ12社に出資している。これには22年11月に発足したオープンAIのアクセラレーター(育成支援)プログラム「コンバージ(Converge)」を通じた投資も含んでいる。

今回のリポートではオープンAIがこれまでに投資してきた分野と、次に投資する可能性がある分野について取り上げる。
オープンAIはこれまでどんな分野に投資してきたか
オープンAIは様々なAIスタートアップに投資している。多くのAIアプリケーションとつながることで、広範な潜在顧客に自社の価値を示している。
投資先企業の大半は生成AIを活用したツールを手掛けている。主な投資テーマは次の通りだ。
・一般的な生産性向上ツール:ビジネス用ノートアプリ(米メム=Mem)や家族のスケジュール管理(米ミロ=Milo)など。
・業界向けソリューション:オープンAIの言語モデルを活用した法律アシスタントの米ハービー(Harvey)や、会計自動化プラットフォームの米キック(Kick)などへの投資を通じ、特定の業界への扉を開いている。
・開発者向けツール:AIを搭載した統合開発環境(IDE)を手掛ける米Anysphereや米カーソル(Cursor)、プログラミングチャットボットの米qqbot.devはいずれもコンバージの第1回アクセラレータープログラムに参加した。
・クリエーティブツール:米ディスクリプト(Descript)や米ダイアグラム(Diagram)などのスタートアップは、生成AIを活用してポッドキャストや動画の台本、米デザインソフト「フィグマ」のファイルなど視聴覚メディアの制作・編集を支援する。
オープンAIはコンピューティングやエンジニアリングのインフラ開発に取り組むスタートアップ2社にも出資している。半導体製造の米Atomic Semiと、行と列からなる表形式でデータを管理する「リレーショナル・データベース(RDB)」を提供するカナダのエッジDB(EdgeDB)だ。
オープンAIが次に投資対象にする可能性がある分野
オープンAIは投資計画について多くを明かしていないが、近いうちに投資を研究計画や新製品ともっと緊密に連携させる可能性がある。
例えば、22年9月には音声認識モデル「ウィスパー(Whisper)」を発表した。この製品を新たな産業や用途に広げるため、ウィスパーを活用したツールの開発で利益を得る音声AIスタートアップに出資する可能性がある。こうした企業は音声合成や音声クローンの作成、吹き替え作成などを手掛ける。
オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)は、いずれ文書から動画を生成するAIモデルを提供する計画も示唆している。このため、同社が研究を加速させる手段の一つとして、この機能の開発を手掛けるスタートアップに投資する可能性がある。これにより、オープンAIは米グーグルや米メタ、米ランウェイ(Runway)などのライバルと張り合えるようになるだろう。グーグルとメタは限定的ながらも文書から動画を生成するモデルを披露しており、ランウェイは文書での指示に基づいて既存の動画を新たなスタイルにするモデルを発表している。
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