楽天の赤字過去最大 21年12月期最終、携帯投資重く

楽天グループの業績が悪化している。14日発表した2021年12月期の連結決算(国際会計基準)は最終損益が1338億円の赤字となり、過去最大の赤字となった。基地局整備などで携帯通信事業の赤字が膨らんだ。電子商取引(EC)や金融事業の競争も激化するなか、携帯事業の会員獲得やコスト削減のペースを速められるかが会社全体の黒字化を左右する。

前の期の最終損益は1141億円の赤字で、最終赤字は3期連続。営業損益は1947億円の赤字(前の期は938億円の赤字)、売上高にあたる売上収益は前の期比16%増の1兆6817億円だった。年間配当は4円50銭と前の期比横ばいとした。22年12月期の具体的な業績見通しは開示しなかった。
携帯事業の営業赤字は4211億円と前の期比約9割増えた。急ピッチで進める基地局の整備で同事業の償却費は837億円と7割増えた。自社設備が整わない地域でKDDIから回線を借りる「ローミング」の費用がかさんだことが「大きな負担になった」(三木谷浩史会長兼社長)。
ECなど「インターネットサービス」事業の営業利益は2.7倍の1075億円、金融事業は10%増の891億円だったものの携帯事業の悪化を補えなかった。

今後の焦点は楽天が23年12月期中の黒字化を目指す携帯事業だ。基地局の整備によりローミングは22年4月にも大幅に範囲を縮小するもよう。「22年1~3月期が収益のボトムになる」(楽天モバイルの山田善久社長)という。
黒字化のカギを握るのが、子会社の楽天シンフォニーだ。基地局の通信機器をクラウド上のソフトウエアに置き換える技術を使った通信網を外販する。21年8月にドイツの新興企業が採用を決めるなど、数千億円の受注を獲得した。海外展開が進めば「収益を国内ネットワークの増強に充てられる」(三木谷氏)とみる。
ただ携帯事業の黒字化への道のりは険しい。基地局整備などで同事業では前期に過去最大の5089億円を投じ、今後も減価償却が負担となる。新規契約数の伸びも鈍っている。「損益分岐の新規契約数(仮想移動体通信事業者サービスを除く)は四半期あたり100万~150万」(外資系証券アナリスト)とされるが、21年10~12月は39万と7~9月(45万)に続き目安を下回った。
他社との競争も激しく、QUICK・ファクトセットによるアナリスト予想の平均では、携帯事業は23年12月期も赤字が続く見通しだ。
好調なECと金融事業も安泰ではない。大規模なポイント還元が重荷になり、金融事業は銀行と証券ともに営業利益率が前の期比で下がった。
証券では22年4月以降に投資信託残高へのポイント付与率を見直す。これにより利用者が離れているようで、SBIホールディングスは1月に「楽天証券からSBI証券への口座移管が急増している」と明らかにした。EC事業も「成長率はZホールディングスを下回る」(UBS証券の福山健司氏)との声がある。
資金の確保も課題だ。今期以降も高速通信規格「5G」に数千億円規模の投資を予定するなど、高水準の資金需要は続く。総額3000億円の普通社債の発行などで、21年末の有利子負債は3兆4029億円と19年末からほぼ倍増した。
S&Pグローバル・レーティングは楽天の長期発行体格付けを「投機的水準」としている。岡三証券の奥村裕介氏は「これ以上の社債発行の余地はほぼないだろう」とみる。楽天は「資本性の調達にも取り組む」(廣瀬研二最高財務責任者)としており、傘下の楽天銀行の新規株式公開(IPO)も検討中だ。三木谷氏は「上場準備は順調で、22年後半にも上場できそう」と明らかにした。