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ソフトバンク、「通信キャリアは買わない」 非通信加速

世界デジタルサミット2021から

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞
宮川潤一 ソフトバンク社長

――「電子政府ランキング」が世界1位のデンマークは幸福度も高いという調査もありました。

「デジタル化が進めば便利になる。企業がデジタル化で商業化できるところを追求してきた。今度は国という単位でもう少し横串を通して行政サービスのデジタル化を急がないといけない。デジタル庁に期待している。議論を引っ張り、皆がいいと思うデジタル社会像をもっと示すと、国民はついてくる」

「他の国にはできて日本にはできていないと不満につながるが、デジタル化が成熟期になれば日本らしいデジタル化が必要だ。海外でも本当の成功例はなく、どの国も実験的にやっている。日本も早く考える側に回るだけの底力が必要だ。例えば日本の田園風景にあわせたデジタルのニーズについて、自動運転車だったら台数をどうするのかなど必要なテーマになる」

――情報格差をどう考えていますか。

「基本は平等でないと意味がない。平等で使えることがデジタルでもAI(人工知能)でも、自動運転にしても大切だ。そうした環境を提供する会社として、つながる人とそうでない人がいると格差を生むので、格差を是正することを絶対にやりたい」

「エリアによって使える環境はあるが、使わないという選択肢は私は好きだ。ベースは平等にあって、その上で知恵があればいい。多分寺の息子の性かもしれないが。もうかることだけやればいいという思想にはいつもならない」

――自治体側との取り組みが増えています。

「かなりある。自治体側にとって新型コロナ禍でデジタル化をしないといけないと(危機感を)押し上げた。今回のパンデミックはデジタル化を加速させ、もっと違う意味での進化がはじまるのかもしれない」

――便利さを実感できる場をどう広げていきますか。

ソフトバンクグループで投資してるユニコーン企業はまさにデジタルの申し子だ。金もうけという視点でなく、そのサービスが日本にあったら便利だなというものに投資したい。日本にないサービスをいれるということは、マーケット的にブルーオーシャンであり、既存の仕事と重複することもない」

ソフトバンクが注力するHAPS事業の無人航空機

――通信事業者のソフトバンクとしてはどうですか。

「事業をやる会社として都市の基本ソフト(OS)なんかも皆ソフトバンクで開発する。日本発の事業を製造業以外で起こしたい。テクノロジーを前提とした産業作りを挑戦したい。そのために少々背伸びしても投資していく。社内では『ビヨンド・キャリア』『ビヨンド・ジャパン』ということしか今は話さない。携帯電話だけ売ってても仕方がなく、いろんな分野を新規にやり出して会社全体で生み出せるようになった」

「例えばHAPS(高高度疑似衛星)事業は世界中に飛行機を飛ばす。飛行機をつくるという製造業もあれば、部品も全部特殊だから、例えばソーラーパネルやバッテリーの技術とか、世界最先端のものを集めて膨大になる。ここの要素技術は全部日本製でやり、ないものは社内で作る。HAPSを通してもたくさんの産業が必要になる」

――企業への提案力の必要性が高まっています。

「コンサルティング契約をしてデジタル化の仕事を設計していく。相手の企業に対して単なる携帯電話の販売では感謝されない。企業と企業の本当の意味での信頼関係を築かないといけない。今は汗をかく時期で、あえて人を配置する」

「国外展開ではデジタルマーケティング関連で東南アジアに出始めたが、通信キャリアは買わないことを宣言する。スマホ決済『PayPay(ペイペイ)』を輸出しそこの国のパートナーと一緒にやるとか、LINEで交流サイト(SNS)展開を手伝うなどの形で海外に出て行きたい」

世界デジタルサミットでインタビューした。

■記者から
 ソフトバンクの宮川潤一社長が海外で通信キャリアの買収を今後行わないと明言した背景に、「ビヨンド・キャリア(脱通信)」を進める明確な戦略があるためだ。
 ブロードバンド通信や携帯と会社の形を変え続けるたびに、経営の中核を担ってきた宮川氏。通信技術のプロとして知られる一方で、新規ビジネスの旗振り役でもあった。
 携帯ビジネスはキャッシュカウ(金のなる木)となったものの契約数が飽和状態になりつつあり、政権による携帯料金の値下げ要請もある。通信事業の成長は鈍化する可能性が高い。
 同社は企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)支援を強化する。海外でもスマホ決済「PayPay(ペイペイ)」など技術を軸に現地企業との協業を重視する意向だ。
 アントレプレナーシップ(起業家精神)を持つ宮川氏は日本初の製造業以外の産業創出を描く。米スプリントの再生も手掛け海外に精通するなか「日本流のデジタル化」を主張する。新型コロナ禍でデジタル機運が高まるなか、宮川氏の手腕の見せどころになりそうだ。(太田明広)

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