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EV用電池の原料確保へ55社連携 トヨタ系など新団体

規格づくりでも中国に対抗

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日産自動車のEV「リーフ」

トヨタ自動車グループや住友金属鉱山など55社が車載用リチウムイオン電池の国内供給網の整備で連携する。電池需要は電気自動車(EV)の普及に伴い増えており、原料確保から再利用までの一貫した体制づくりが課題だった。川上から川下まで主要企業が集まりEVなど電動車の普及に備える。

55社は14日、新団体「電池サプライチェーン協議会(BASC)」(東京・中央)の設立総会を開いた。会長には住友金属鉱山の阿部功・電池材料事業本部長が就任。ほかにパナソニックとトヨタが共同出資する電池会社プライムプラネットエナジー&ソリューションズ(東京・中央)やホンダ日産自動車三菱商事、三菱ケミカル、旭化成などが加わった。

「電動化に向け、電池関連産業の裾野を広げる」。同日開いた記者会見で阿部会長は新団体の意義を強調した。狙うのはEV用電池のサプライチェーン(供給網)の強化だ。国内での電池や部材の増産、リチウムなど原料の安定調達に向けた方策を今夏以降に順次まとめ、政府に提言する。

政府は35年までにすべての新車をEVなどの電動車とする目標を掲げる。同協議会によると国内新車販売の約半分にあたる年250万台をEVに切り替えた場合、国内で電池や電池部材の生産体制を整えるために関連業界で総額4兆円弱が必要という。民間部門だけでの負担は重く、政策提言を通じ資金面の援助も求める方針だ。

こうしたなかで課題なのが、電池やその原料の安定調達だ。リチウムイオン電池の原料であるレアメタルの多くは海外で生産する。電極に使うリチウムはオーストラリアが世界の生産量の約6割を占める。コバルトの生産量も7割近くをコンゴ民主共和国が占める。

車載電池も中国に依存している。世界のリチウムイオン電池の大規模工場の生産能力のうち中国が7割を占める。リチウムなど電池に不可欠な資源権益の獲得も国を挙げて加速しており、中国に依存したままのEVシフトは安定調達でリスクがあるとの見方は多い。

日本企業も対策に追われている。日産はEV向け電池で、コバルトを使わない低価格品を20年代半ばにも実用化する。供給懸念のあるコバルトを使わずに電動車を生産できるようにする狙いだ。

原料の調達面ではトヨタグループの豊田通商はアルゼンチンでのリチウム生産事業の権益25%を取得。オーストラリアの資源開発会社オロコブレと組み、リチウムを生産している。住友商事もマダガスカル共和国で採掘から製錬まで一貫するニッケル鉱山開発事業「アンバトビー」に出資している。

新協議会では原料確保にむけ、使用済み電池からレアメタルを回収するリサイクル網の整備でも連携する計画だ。さらに国際規格の策定でも協力する。まずは中国が議論の主導権を握るとされるリチウム関連の国際標準化機構(ISO)のルール策定の議論に参画。中国に有利な形で生産設備や分析手法の規格が整備され、日本勢の負担が増えるのを避ける。

電池の供給網整備を急ぐのは日本や中国だけではない。欧米では域内での供給網構築の動きが相次いでいる。欧州連合(EU)では欧州委員会が17年に産業育成策「欧州バッテリー連合」を打ち出し、域内での工場建設を資金援助している。

米国でもバイデン米大統領が2月に中国依存の脱却のために電池や半導体など重要部材の供給網を見直す大統領令に署名した。3月に打ち出した8年間で2兆ドル(約220兆円)規模をあてるインフラ投資計画でもEVが対象となっている。

各地での動きの背景にあるのは、世界的に広がる電動車の普及政策と、その市場拡大だ。英調査会社のIHSマークイットは、25年のEVの世界生産台数が1184万台強と20年の5.3倍に増えると予測する。ハイブリッド車(HV)など電動車も含めると約4078万台と4.1倍になる見通しだ。

そのなかで電池や電池原料の需給も逼迫。コバルトのロンドン金属取引所(LME)での3カ月先物価格は約2年ぶりの高値圏にある。電池についても「海外メーカーに頼らざるを得ない」と国内の自動車大手幹部は打ち明ける。電動車シフトに備え、電池の供給網整備の議論を日本でも急ぐ必要がある。

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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