/

未来のユニコーン探せ CBインサイツがアルゴリズム

CBINSIGHTS
投資家にとって、ユニコーン(企業価値10億ドルを超える未上場企業)に発展するスタートアップ企業を見つけるのは難しい課題だ。CBインサイツは未上場のテック企業の将来の可能性を評価するスコアを開発した。このスコアを構成する指標と活用の仕方をCBインサイツがまとめた。
日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

CBインサイツは2015年、米紙ニューヨーク・タイムズと共同で未来のユニコーン50社を予測した。現時点でそのうち31社(62%)がユニコーンの地位に達している。

19年には再び50社を予測した。その後2年で58%がユニコーンになり、的中ペースが上がった。

そして20年には、米ビジネス誌ファスト・カンパニーとともに最新の予測を実施した。1年半足らずで37社(74%)がユニコーンに到達した。

新株発行を伴う調達総額は81億ドルに達した (2020年6月にリストを発表して以来、50社合計で)

ベンチャーキャピタル(VC)がこれほどの的中率を上げれば、伝説的存在になるだろう。

秘密兵器は全米科学財団(NSF)の支援を受け、10年近くかけて開発したCBインサイツの一連のアルゴリズム「Mosaic(モザイク)」だ。

モザイクとは

CBインサイツは10年、公開されている情報や「シグナル」(その企業のサイトへのアクセス状況やツイッターやメディアでの言及などの非従来型データ)を活用し、未上場のテック企業の健全性と将来の成功の可能性を評価するアイデアでNSFに助成を申請した。

NSFから3度に及ぶ助成金を受け、様々なソースから未上場のテック企業に関する情報を収集してまとめ、ばくち的な要素が少ないテックスタートアップを把握し、割り出すモデル「モザイク」の開発に取り組んだ。これはいわば未上場のテックスタートアップを対象にした信用スコア(FICOスコア)だ。

モザイクで将来成功しそうなテックスタートアップを判断できるようになれば、この分野の買収や投資を手掛ける企業に対し、適切な企業をやみくもに探すのではなく、テック企業の成功の可能性を見いだして予測する強力な武器になる。

これはどんな仕組みなのか。

モザイクの4つのM

モザイクの総合スコアは「4M」と呼ぶ4つのモデルからなる。

1.モメンタム(勢い):その企業はどれほど勢いがあるか

2.マーケット:その企業が属している業界はどれほど健全か

3.マネー:その企業の財務はどれほど健全か

4.マネジメント:その企業のリーダーはどんな人物か

各モデルは異なるシグナルに基づいている。

以下は各モデルの詳細のごく一部だ(当然ながら使用しているシグナルを全て公表するわけにはいかない)。

1.モメンタム

CBインサイツはニュース/メディア、感情(センチメント)、提携や顧客の勢い、SNS(交流サイト)など多くの量や頻度のシグナルを入手している。

これらを絶対的な評価として考察するだけでなく、同じ業界内での位置づけや同業他社などと比べた比較評価で考察する。中でも(同業内での)比較評価は重要だ。例えば、メディアの注目度が低く、消費者がSNSで費やす時間が少ない法人向けソフトウエア企業を、消費者向けテック企業とそのまま比べて不利にならないようにするためだ。

2.マーケット

企業が属している市場や業界の質は極めて重要だ。有利な業界に属していれば、その企業は追い風を受ける。逆に不人気な分野の企業は、投資家や提携企業、メディアへの露出が少ない。

別の言い方をすれば、短命で終わる企業にはなりたくないはずだ。

マーケットモデルはある業界の企業の数や資金調達、エグジット(資金回収)の勢い、その分野に参加している投資家全般の量と質について考察する。

3.マネー

このモデルは企業の財務の健全性、つまり資金が尽きると思っているかについて考察する。

バーンレート(1カ月に出ていく現金額)や、その企業に出資している可能性がある投資家やシンジケート(企業連合)の量と質、同業他社やライバルと比較した資金調達状況を考察する。

4.マネジメント

これはモザイクで最も新しいモデルで、未上場のテック企業の創業チームや経営陣について評価する。

VCや企業は特に初期段階のテック企業への投資や提携を判断する際、創業チームや経営陣を最も重視することが明らかになっている。

実際、米ハーバード・ビジネス・レビュー誌のリポートでは、投資案件の評価で最も重要な要素として経営陣を挙げたVCは95%に上った。

CBインサイツが19年に実施した顧客調査では、企業の立ち上げが失敗する理由に関する質問に対し、チームだと答えた企業は78%を占めた。

企業のパイロット運用が失敗する10の理由

結論:投資家は(投資候補の企業の)実績、具体的には経営陣の質を考慮する。

マネジメントモデルではCBインサイツのプラットフォームの人材データ(People Data)を活用し、創業チームや経営陣の過去のエグジットや資金調達ラウンド、業界経験などの業績に加え、学歴や人脈を考察する。

4Mモデルはそれぞれ0~1000点で評価し、これに基づいてモザイクの総得点を集計する(これも最高は1000点)。

モザイクの有効な使い方

企業や投資家はモザイクを活用して適切な未上場のテック企業を(投資や買収などの)候補に選んだり、評価したりする。

市場全体で提携や投資、買収対象になる様々な企業を比較する

まず自社の条件を設定し(下記の例では、企業価値が2000万ドルを超える健康IT企業)、候補を選ぶ指針としてモザイクを使う。

個々の未上場テック企業とその経営陣を評価する

最近の顧客調査では、23%が年間1000社以上を評価していることが明らかになった。これはかなり多い。

対象企業の財務の健全性、創業チーム、提携企業などの全貌を知るために様々なソースを使って検索するのは時間の有効な使い方とはいえない。

代わりに、モザイクのスコアに基づいて未上場のテック企業のプロフィルを調べれば、企業価値、ステージ、直近の資金調達額、ネットワークなどの重要な業績評価指標をすぐに抜き出せる。プロジェクト管理などを手掛ける米コーダ(Coda)の例が示すように、こうした情報は全てその企業のモザイクスコアに集約している。

初期段階のテック企業から多くのシグナルを得られない場合には、創業チームが成長し、その企業をプラスの結果に導くと信じて賭けるしかない。

自動で生成されるインタラクティブなデータ「主要な人材(Key People)」を可視化したことで、例えば米サイバーセキュリティー企業スパイダーバット(Spyerbat)の創業者で最高経営責任者(CEO)の連続起業家、マーク・ウィルビーク・ルメール氏など、あらゆる段階の企業の創業者やリーダーを簡単に分析できる。

モザイクの今後

モザイクでは今後主に2つの分野に力を入れる。

・企業自体から収集するデータを増やす:(モザイクスコアが)不透明だという課題に対処し、テック企業がモザイクで公開する情報を増やして全体像を示せるよう「アナリストによる説明に関する調査」を始めた。費用は無料だ。CBインサイツのアナリストから自社のスコアについて説明を受けたい企業は、簡単な調査により基本情報を提出する。これを受けてアナリストは関連企業を再調査し、連絡する。

・他の業界にも拡大する:消費者向け製品・サービス、バイオテック/製薬など、モザイクを他の分野にも拡大できると考えている。そうなれば、その業界特有のシグナルがモザイクに取り入れられる可能性がある。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン