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料理宅配は序章 ウーバーイーツ、外食の総合支援業へ

CBINSIGHTS
米ウーバーテクノロジーズは料理宅配代行のウーバーイーツ事業を外食業界全体の支援サービスに広げようと、テクノロジーに強みをもつスタートアップへの投資や買収、戦略的提携を進めている。自動配送やアプリへの広告配信、レストランの予約など手掛ける分野は幅広い。ウーバーの戦略を宅配のソリューション(解決策)、サービス、垂直分野の3つに分け、CBインサイツが分析した。

米ウーバーテクノロジーズが発表した2021年7~9月期決算は、調整後EBITDA(利払い・税引き・償却前損益)が初の黒字を達成した。料理宅配サービス「ウーバーイーツ」を含む配達サービス部門の利用総額は128億ドル、売上高は前年同期比97%増で、ともにライドシェア部門を上回った。

調査会社ブルームバーグ・セカンド・メジャーによると、ウーバーイーツの米料理宅配サービスの月間売上高は米同業グラブハブ(Grubhub)を超え、米同業ドアダッシュに次いで2位に付けた。ウーバーイーツは45カ国・地域で利用できる最もグローバルな料理宅配アプリの一つでもある。

日本経済新聞社は、スタートアップ企業やそれに投資するベンチャーキャピタルなどの動向を調査・分析する米CBインサイツ(ニューヨーク)と業務提携しています。同社の発行するスタートアップ企業やテクノロジーに関するリポートを日本語に翻訳し、日経電子版に週2回掲載しています。

ウーバーは外食業界全体に事業を拡充するため、自らをテクノロジーの集合体と位置づけ、提携先企業の商品を配達する「ホワイトレーベル」サービスに加え、様々な投資や買収、戦略的提携を進めている。今では自動配送など宅配の解決策やマーケティングテックなど新たなサービスを提供し、アルコール飲料や高級レストランからの宅配など料理宅配以外の分野にも手を広げている。

ウーバーイーツは外食業界の主なプレーヤーとしての地位確保に励む一方、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う人手不足や供給制約で食品サプライチェーン(供給網)が変わるなか、スタートアップ各社は飲食店を支援し、消費者に食品を届けるために革新し続けている。

宅配のソリューション(解決策)からBtoB(事業者向け)サービスまで、ウーバーイーツのサービスを構成する企業について注目する。

カテゴリーの内訳

ウーバーイーツのテクノロジーやサービスを3つの分野に定義した。

・宅配ソリューション:テクノロジーにより可能になった、商品を消費者に配達する新たな手段。

・サービス:外食企業が顧客を引き付け、維持し、事業を拡大するために宅配プラットフォームが提供するBtoBサービス。

・垂直分野:食品や料理以外も含めた新たな宅配サービスの商品。

宅配ソリューション

自動配送

スタートアップと既存各社は食品自動配送の状況を注視している。外食業界がコロナ禍で直面している「人手不足」「感染リスクの懸念」という2つの問題に直接対処しているからだ。

例えば、ウーバーイーツは21年7~9月、米サーブ・ロボティクス(Serve Robotics)との提携を発表した。ウーバーは20年4~6月に米食品宅配サービスのポストメイツを買収した際、傘下のサーブも取得した。サーブは歩道を走行して食品を配達する小型ショッピングカートの大きさのロボットを開発している。

この分野の企業は自動配送車両を自社で開発するか、既存車両にシステムを後付けするかによって自動配送を導入している。自社開発された車両は地域での食品配達に特化した小型ロボットであることが多い。一方、システムを後付けした既存車両の大半は乗用車や長距離輸送の貨物トラックだ。

ウーバーもこの1年で自動運転スタートアップ2社に出資している。20年10~12月には人を運ぶ自動運転車とモノを輸送する自動運転トラックの両方を開発している米オーロラ・イノベーション(Aurora)に出資した。さらに、カナダの自動運転スタートアップ、ワービ(Waabi)の初期段階のラウンドに参加した。

超速宅配

ウーバーは21年に入って以降、自社アプリでの食料品やコンビニエンスストアの商品の検索件数が40%増えたことを明らかにしている。これは宅配大手が料理配達以外にサービスを拡大する需要があることを示している。

ウーバーは21年7~9月、仏食品スーパー大手カルフールと超速宅配スタートアップの仏カジュー(Cajoo)と提携し、フランスで超速宅配に乗り出すと発表した。台湾の自社のダークストア(ネット販売専用の物流センター)でも即配を試験運用する。ウーバーイーツは21年、650以上の都市で日用品を宅配するデカコーン(企業価値が100億ドルを超える未上場企業)の米ゴーパフ(GoPuff)と提携した。

21年に入ってからの超即配スタートアップの合計調達額は前年比9倍以上に急増しており、今後も同じような提携が続く見通しだ。

サービス

ロイヤルティー(愛着心)と報酬

ウーバーは21年11月、料理や食料品の宅配サービスや配車サービスを利用した会員にポイントや報酬を付与するプログラム「ウーバー・ワン(Uber One)」を開始した。ウーバーイーツの加盟店に対しては、このプログラムを各社の注文プラットフォームに直接連携する。ウーバーは21年7~9月、自社の運転手にガソリンスタンドやコンビニでキャッシュバックを提供するため、ポイント付与プラットフォームの米ゲットアップサイド(GetUpside)とも提携した。

一方、グラブハブは19年、飲食店が各社のロイヤルティープログラムをグラブハブのアプリでの注文と同期できるプログラム「パークス(Perks)」を始めた。

飲食店の報酬付与スタートアップは、ロイヤルティープログラムを宅配や店内のPOS(販売時点情報管理)システム、予約と組み合わせている。

検索マーケティングと広告

ウーバーは21年7~9月期の決算発表で、広告事業の収益が事前予想の1億ドルを上回ったことを明らかにした。同社は宅配事業を手掛ける全ての市場(ドイツを除く)で、自前の広告プラットフォームを運営している。ウーバーのダラ・コスロシャヒ最高経営責任者(CEO)は22年の広告事業の収益を前年比3倍以上に増やす計画を発表した。

ウーバーは現在、プラットフォームでの検索連動広告により加盟店を顧客に売り込んでいる。飲食店がアプリやメールで顧客をターゲットにできる販促ツールも手掛けている。

米料理宅配大手ドアダッシュは21年、飲食店向けの正式な広告プラットフォームを開始した。宅配プラットフォームでの表示を巡る争いは有料化しつつある。

レストランや消費財ブランドが競争の激しい検索分野で存在感を示すには、パーソナライズされたおすすめで表示されることに力を入れたり、飲食店を探している段階の顧客を対象にしたりする方法がある。

レストラン予約システム

ウーバーイーツは19年、イートインのオプションを始めた。利用者は料理を注文し、予約時間にそのレストランに出向いて食事する。

ワクチン接種に関する基準や外食規制は絶え間なく変化している。予約システムは加盟店に席を埋め、接触を追跡できる可能性をもたらし、消費者にとっては注文や支払いを非接触でできる手段を提供するため、次第に重要になるだろう。

接客スタッフの確保

コロナ禍で飲食業や接客業の多くの問題が悪化しているが、目下の最大の問題は人手不足だ。飲食チェーン業界全体が労働者に戻って来てもらうため、最低賃金の引き上げや採用時の賞与の設定を余儀なくされている。未成年を対象にした労働法の改正を進める州政府もある。

米レストラン予約オープンテーブルは21年7~9月、飲食店が従業員を引き付けられる無料ツールを開発する人材採用プロジェクトを開催するため、求人検索エンジン大手の米インディードと提携した。

ゴーストキッチン

CBインサイツのアナリスト予想によると、宅配や持ち帰り専用の飲食店「ゴーストキッチン(バーチャルレストラン)」業界は20年の5260億ドルから30年には1兆ドルに成長する。外食チェーンや著名人はゴーストキッチンのスタートアップと提携し、自社メニューを国内の他の地域で提供したり、従来の飲食店の要素を持たないバーチャルブランドを設立したりしている。

ゴーストキッチンは労働力と宅配業務を外部委託し、不動産コストを抑え、代わりに注文に応じた分だけ収益が増える手段を提供する。ゴーストキッチンはウーバーイーツやグラブハブ、ドアダッシュに宅配を委託することが多い。

調理ロボット

ロボットを使って調理すれば、メニューの価格を下げ、年中無休で運営できる。例えば、ドアダッシュは21年1~3月、どんぶりやサラダ、シリアルなどを90秒で調理する自動販売機型ロボットの米チョウボティクス(Chowbotics)を買収した。

人手不足でも調理ロボットの利用が増えている。チョウボティクスのようなタイプや飲食店の裏手で調理できるロボットなど、様々な形態が登場しつつある。

垂直分野

アルコール飲料の宅配

ウーバーは21年1~3月、アルコール飲料の宅配サービスを手掛ける米ドリズリー(Drizly)を約11億ドルで買収した。米国では州によってアルコール販売に関する規制が異なるため、米国でのアルコール飲料宅配への参入には注意が必要だ。だが、ドリズリーは地元の酒販店から調達するため、ウーバーはこうした制約の多くを避けられる。ウーバーはドリズリーをウーバーイーツのアプリに搭載する一方、ドリズリーの販売サイトの運営を維持する方針を示している。

高級レストランからの宅配

高級レストランの料理の持ち帰りの需要は数年前からあったが、コロナ禍での屋内飲食の規制により、ニューヨーク市の「カルボーネ(Carbone)」などの有名高級レストランがテークアウトや宅配に業態を転換した際にはメディアに大きく報じられた。

ウーバーと競合各社はこの分野でシェアを獲得しようとし、高級レストランの料理宅配への消費者の期待の高まりから利益を得ている。

食料品の宅配

ウーバーは20年7月のメキシコの買い物代行サービス会社、コーナーショップ(Cornershop)との提携により食料品宅配分野での地位を高め、21年4~6月には同社を買収した。ウーバーはコーナーショップがすでに地元の食料品店と築いていたつながりを生かし、米国やカナダ、中南米各国の都市で定評を得ている。

食料品の宅配は消費者にとって一般的になりつつあるが、主要スタートアップは自社で集めた商品を提供したり、テックを使って消費者の利便性を高めたりすることで既存勢と差をつけている。

調理済みメニューの定期宅配

食品宅配といえばオンデマンドの宅配サービスを思い浮かべることが多いが、調理済みメニューもサブスクリプション(定期購入)で食事が届く便利な手段だ。ウーバーイーツは19年、幼児や乳児向けの調理済み食品を手掛ける米ヤミー(Yumi)に出資した。

調理済みメニューの宅配はビーガン(完全菜食主義者)や育児など特定の食生活や時間の制約がある消費者にとって、自宅で手軽に食事できる手段でもある。

処方薬の宅配

CBインサイツのアナリスト予想によると、オンライン薬局の市場規模は20年の550億ドルから27年には1510億ドルに拡大する見通しだ。ウーバーは医療分野での宅配に乗り出し、コロナ禍で利用が拡大した遠隔医療やオンデマンドの処方薬のニーズに対処している。

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