HISの11~4月、最終赤字269億円 海外旅行回復に遅れ
エイチ・アイ・エス(HIS)が13日発表した2021年11月~22年4月期(22年度上期)連結決算は最終損益が269億円の赤字(前年同期は235億円の赤字)と、同期間として過去最大の赤字となった。海外旅行の回復が遅れているうえ、電力小売事業を手がける子会社が不振だった。
5月の電力小売子会社HTBエナジー(福岡市)の売却に伴う損失引当金などで特別損失が膨らんだ。繰り延べ税金資産も取り崩した。助成金収入が68億円あったが補えなかった。
売上高は684億円だった。今期から「収益認識に関する会計基準」を適用し、航空券販売で燃油サーチャージなどを売上高から除外した。新基準を適用しない場合の売上高は57%増の1022億円だった。半分を占める旅行事業が2倍強伸びて全体を押し上げた。
ただ主力の海外旅行取扱高は新型コロナウイルス禍前の3%程度の水準にとどまった。日本の入国者数制限や円安の影響を受けている。

営業損益は281億円の赤字(前年同期は316億円の赤字)だった。事業別では旅行事業が147億円の赤字(同185億円の赤字)となったほか、エネルギー事業は卸電力価格の高騰で赤字幅が広がった。
財務も悪化した。4月末の自己資本比率は6%と21年10月末と比べて4ポイント低下した。新型コロナ前は15~20%ほどだった。コスト削減や資金確保のため、従業員の他社への出向や不動産や子会社売却を進めた。選択肢の一つとしていた日本政策投資銀行からの借り入れは目立った進捗がない。同日の記者会見で矢田素史社長は「一番は本業の回復だが、(資金調達の)手段を幅広く持つ必要がある」と述べるにとどめた。
10月期通期の業績予想は引き続き未定とした。足元では回復の兆しも出ている。国内旅行は3月下旬に行動制限が全面解除されて以降、自治体が地域内の旅行を支援する「県民割」の追い風もあって伸びている。
海外旅行も今夏から回復を見込み、約40カ国・地域でツアーを再開した。23年10月期に旅行事業全体で黒字化し、24年10月期には新型コロナ前まで戻るとはじく。沢田秀雄会長は「夏に海外旅行を立て直して反転攻勢に出る。2年間力を入れてきた国内旅行も継続して伸ばし、海外と国内を二本柱にする」と話す。