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ホンダ、30年にEV生産200万台 GMと挑む難路

日経ビジネス電子版

ちょうど1年前、三部敏宏社長の就任会見で日本の自動車メーカーとして初めて「脱ガソリン車」を宣言したホンダ。その道筋を具体化し、2050年のカーボンニュートラル(温暖化ガスの排出量実質ゼロ)達成に向けて、30年時点で年200万台の電気自動車(EV)生産を目指すと発表した。協業パートナーの米ゼネラル・モーターズ(GM)と手を携え、EVシフトの難路に挑む。

「27年までにEVをガソリン車並みのコストに下げる。(GMとの)アライアンスによって達成可能であると考え、進めている」

12日、ホンダは四輪車の電動化についての説明会を開いた。今後10年間で、電動化・ソフトウエア領域の研究開発費などとして約5兆円を投じ、30年までに全世界で30車種のEVを投入する。30年時点でEVの生産台数を年200万台超とする計画も明らかにした。

社長就任会見で、販売する新車を40年までにすべてEVまたは燃料電池車(FCV)とすると宣言した三部社長。目標達成までの具体的なロードマップをようやく示した。自前主義からの脱却や販売台数に依存する事業モデルからの転換を進めながら、電動化に取り組む。

円滑にEVシフトを進めるための大きなカギとなるのが、GMとの協業拡大だ。両社はこれまで、GMのEV専用プラットホーム(車台)をベースとする、北米市場向けEVの共同開発を進めてきた。

この協業はあくまでも北米市場に限られると見られていた。ところが4月に入り、両社は協業をグローバル規模に拡大。27年以降にアライアンスを通じてガソリン車並みのコスト競争力を持つ量販価格帯のEVを市場投入し、南米や中国といった市場でも共同開発のEVを販売していく。

コストを抑え、量販価格帯のEVも実現するには生産規模の拡大が欠かせない。1台当たりの収益性の低い中小型車となればなおさらだ。そこで、中小型EVはGMと協業で開発を進めるプラットホームに集約させる。

電池の調達では、GMが開発する車載電池「アルティウム」を採用。両社で電池生産の合弁会社を設立することも視野に入れているという。かつてホンダは独自の技術開発にこだわり、業界で「孤高」とも呼ばれる会社だった。そんな過去の姿からは想像もつかないほどGMとの協業は深化する。

ホンダの独自EVはどうなる?

一方、地域ごとに求められる時期や機能が異なるという前提に立ち、GMに頼らない独自EVの開発も進める。代表例は国内で販売する軽自動車だ。24年前半にも100万円台の商用軽EVを売り出す。日産自動車のEV「リーフ」に納入実績がある中国系のエンビジョンAESCグループ(神奈川県座間市)の電池を採用する。

EVシフトで先行する中国では、独自開発のEV2車種を今年発売する。そのためのバッテリー調達では車載電池世界最大手の中国・寧徳時代新能源科技(CATL)との連携を強化する。

さらに26年の新型車から採用を目指すのが、ホンダが開発するEVプラットホーム「Honda e:アーキテクチャー」だ。こちらは「北米や中国で販売する上級モデルを中心に展開していく」(青山真二執行役専務)という。

EVと切り離すことができないソフトウエアの内製化も進める。トヨタ自動車や独フォルクスワーゲン(VW)などが開発を進める「車載OS(基本ソフト)」と呼ばれる自動車向けソフト基盤を独自に開発する。「ソフト技術を手の内に収めておくことも重要」(三部社長)との考えからだ。

GMとの協業を主軸にしつつ、それでは発売のタイミングが間に合わなかったり、地域事情などから共同開発モデルを作りにくかったりする場合は独自開発モデルで穴を埋める――。浮かび上がるのは、こうした考え方だ。

稼ぎ頭の中国では環境規制が強化されたため、早急にEVの販売を拡大しなければならない。一方、ハイブリッド車(HV)人気が根強く、EVシフトが遅れている日本では、需要を読みやすい商用車からEVを普及させていくことが望ましい。背景には、こうした地域最適の回答を積み重ねざるを得ない事情がある。

VWをはじめ電動化で先行する欧州勢などの動きを見ていると、EV開発を一手に集約し開発効率を高める戦略が一般的だ。三部社長はホンダの電動化戦略について「見た目は悪いかもしれないが、落とし所を見据えながら電動化(時代)へうまく移行していくための考え方だ」と表現した。

「脱ハード」も追求、電動化時代へ覚悟

ホンダの年間販売台数は半導体不足などの制約がなければ年500万台前後といったところ。規模の面ではトヨタやVW、仏ルノー・日産・三菱自動車連合など業界の上位勢にはかなわない。

GMの販売規模は約630万台(21年実績)。35年にすべての新車をEVにする方針を掲げるなど、メアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)の下でEVに一気に傾斜し、自動運転技術の開発にも取り組む。こうした力が借りられるのは大きい。

今後は単に電動化対応を進めるだけでなく、研究開発の効率化や事業モデルの見直しも求められる。4月からは組織体制を変更。電動化やソフトなど今後開発を加速させる領域について、事業をまたがって知見を統合できるよう研究開発体制を見直した。

電動化と並行して、クルマというハードウエアを売って稼ぐ事業モデルから脱却し、リカーリング(継続課金)やソフトなど新しい収益源も確立させる考え。3月に発表したソニーとのEVでの協業は、こうした領域に異業種の知見とノウハウを取り込む戦術といえる。

協業拡大や事業モデルの変革に踏み切り、電動化時代への覚悟を示したホンダ。今日まいた種が実を結ぶまで、ライバル各社との販売競争という難路が待ち受ける。そして、その過程で「ホンダらしさ」はいかに発揮されるのか。ファンならずとも気になるところだ。

(日経ビジネス 橋本真実)

[日経ビジネス電子版 2022年4月13日の記事を再構成]

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