/

りそなHD社長「インパクト投資で社会問題の解決促す」

日経ビジネス電子版

11月29日、三井住友トラスト・ホールディングス(HD)や新生銀行、第一生命保険など金融機関21社が、社会問題の解決を目的とする投融資を目指す「インパクト志向金融宣言」に署名した。投融資先が生み出す経済的リターンへの期待に加え、社会的インパクトが創出できたかを金融機関が測定しながら経営を支援していく。国内で約300兆円規模とされるESG(環境・社会・企業統治)投資とどう違うのか、金融機関はどんな期待を持っているのか。宣言に署名したりそなホールディングスの南昌宏社長に聞いた。

インパクト投資とは、社会問題の解決を「インパクト」と定義し、金銭的リターンとインパクトを同時に目指す投融資のこと。投資先が社会問題の解決にどれだけ貢献したかを定量化し、その数値が良くなるように投資先の経営を支援していく。2007年に米ロックフェラー財団がインパクト投資の概念を提唱した。20年の世界のインパクト投資額は7150億ドル(約81兆円)となる。

ESG投資と考え方の方向性は似ているが、成果を定量化するのがポイントだ。りそなアセットマネジメントの松原稔執行役員責任投資部長は「ESG投資は社会問題の解決に必要ではあったが、その成果の確認が十分ではなかった。志のある金融機関と連携して、ビジネスで社会問題を解決できているかを評価する仕組みづくりが必要だ」と話す。

りそなHDの南昌宏社長に、インパクト投資に取り組む理由を聞いていこう。

――投融資先の活動が社会問題の解決につながっているかを可視化する「インパクト投資」に金融機関が積極的になっているのはなぜでしょうか。

「今、気候変動や人権軽視など世界的な問題が噴出しています。日本にも少子高齢化やエネルギーミックスなどの固有の問題があります。国際機関や行政が拠出する公的資金に依存するだけでは、こうした社会問題の解決につながらなくなっている」

「社会問題を解決するビジネスを生み出し、育成する必要に迫られているのです。中長期的にゲームのルールを変えながら、社会産業構造を変えていかなければならない。社会問題に配慮しつつビジネスも成立させる『トレードオン』の考え方が必要なステージに来ています」

りそなショックが社会貢献の動機に

――まだ世間の認知が広がっていないインパクト投資について、りそなHDが先陣に立つ理由は何ですか。

「我々は03年に1兆9600億円の公的資金の支援を受け、社会に生かしていただきました。私自身も03年は企画部で次長を務め、当局と預金保険法102条1項の適用に向けて膝を詰めた話し合いをしました。その時代を経験した社員たちは、そこから再出発したという源流を常に意識しています」

「最近は企業にパーパス(存在意義)を問われますが、我々のパーパスは03年の経験から生まれた『社会への貢献』にあると考えています。それを次世代に引き継がなくてはならない」

「ではなぜインパクト投資なのか。金融機関の務めは民間企業のリスクとリターンを見極めた投融資ですが、これからは企業の行動がどれだけ社会的な問題の解決につながったのかを見極め、それを示していく必要があるはずです。インパクト投資によって、自分が預けたり、投資したりしたお金が社会を良くすることに役立っていると理解してもらうのです。社会問題を解決するための新しいお金の流れを生み出し、社会に良い化学変化を起こすための最初の歯車になりたいというのが理由です」

インパクト投資の投資信託商品を投入

――国内のインパクト投資は20年に約5126億円とまだそれほど大きな規模ではありません。300兆円規模のESG投資が次第にインパクト投資に移行するとの声もありますが、りそなHDではどのくらいの投資を考えているのでしょうか。

「まず、30年度までにESG関連の投融資で累計実行額10兆円を目標に掲げています。また、ESG型の投資商品を約3兆円販売する計画です。その一環として、社会課題を解決するインパクト型投資信託を投入する予定です」

「当然、インパクト投資について投資家やお客様に説明しなければなりませんが、我々の運用資金の性格を考えると、理解が得られるのではないかとみています。足元では約27兆円が公的年金の運用となっており、こうした資金は運用期間が30年や40年にわたります。つまり、経済的リターンをすぐに求めず中長期でインパクトを見守れるのです。インパクト投資は投資家と一緒に社会を変えて未来をつくる活動になるので、丁寧に説明して理解者を増やしていきたいですね」

――経済的なリターンは簡単に測れますが、社会的インパクトを可視化するのは難しそうです。

「目に見える形で社会的インパクトを測るのがインパクト投資の肝です。そうでなければ進捗が分かりませんから。投融資先の企業活動によるインパクト測定と、投融資先の経営を支援するマネジメントは金融機関側でしっかりと確保していきます。ただ、現在までに確立した手法があるわけではないので、手探りでの取り組みとなります」

「例えばCO2(二酸化炭素)排出量削減につながるビジネスであれば、その効果測定のために環境省とプロジェクトを組むようなことも考えられます。一つ一つのビジネスの成果を測定しながら、社会全体で何が改善されているかの流れを俯瞰(ふかん)する。そのマッチングが必要だとみています」

「いずれにしても簡単な話ではありません。金融機関にも新たな領域に対する勉強が求められるでしょう。大きなチャレンジになると思っています」

(日経ビジネス 江村英哲)

[日経ビジネス電子版 2021年12月13日の記事を再構成]

日経ビジネス電子版セット

週刊経済誌「日経ビジネス」の記事がスマートフォン、タブレット、パソコンで利用できます。「日経ビジネス電子版」のオリジナルコンテンツもお読みいただけます。日経電子版とセットで月額650円OFFです。

お申し込みはこちらhttps://www.nikkei.com/promotion/collaboration/nbd1405/

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

日経ビジネス

企業経営・経済・社会の「今」を深掘りし、時代の一歩先を見通す「日経ビジネス電子版」より、厳選記事をピックアップしてお届けする。月曜日から金曜日まで平日の毎日配信。

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン