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石油元売り、資源高で純利益最高に 22年3月

石油元売り3社の2022年3月期連結決算が13日、出そろった。ロシアのウクライナ侵攻に伴う資源高を受け、純利益は3社とも過去最高を更新した。各社とも製油所の閉鎖や海外事業などで減損処理をし、負の遺産の処理も進める。好業績で得た資金をいかに脱化石燃料への投資に充てられるか。事業の構造転換が引き続き課題だ。

「資源価格や周りの環境によるところは大きいと思うが、コスト削減もやっている」。ENEOSホールディングス(HD)の斉藤猛社長は13日の記者会見で、4期ぶりの最高益更新の背景説明で、自主努力も強調した。

22年3月期の純利益(国際会計基準)は前の期比4.7倍の5371億円。石油備蓄の評価額が原油価格の高騰によってかさ上げされたことが最大の要因だ。在庫影響を除いた営業利益は同93%増の4156億円だった。これも資源高で石油・天然ガス開発事業や金属事業の好調が押し上げ要因となった。

最高益の構図は他社も同じだ。出光興産は在庫影響が営業利益を2332億円、コスモエネルギーHDは経常利益を723億円押し上げた。いずれも資源高が追い風になった。

ENEOSHDは自己株式を除く発行済み株式総数の9.3%にあたる3億株、金額で1000億円を上限とする自社株買いも発表した。出光は創業110周年として前期末に50円の記念配を決め、年間配当は170円となる。コスモHDも年間配当を100円と前の期実績より20円増やしたほか、最大200億円で800万株の自社株買いも計画する。

最高益と株主還元拡充の裏側で、各社は不採算の化石燃料関連の資産整理を急ぐ。

ENEOSHDは1月に和歌山製油所(和歌山県有田市)を閉鎖する方針を公表した。22年3月期中に「詳細は言えないが、3ケタ億円の特別損失を計上している」(田中聡一郎常務執行役員)。

出光は稼働率が落ちたベトナムのニソン製油所で、長期貸付金の評価損559億円を減損処理した。オーストラリアの石炭権益なども合わせて712億円の特別損失を計上した。コスモHDは出資先のカタール石油開発の原油生産量低下に伴い108億円の特別損失を出した。3社とも好業績のうちに無駄な資産を減らし、脱炭素に備える。

ウクライナ侵攻の長期化、ロシアへの経済制裁によって世界のエネルギー価格は乱高下する可能性が高い。各社とも資源高は続くものの、前期より石油備蓄の評価額が目減りするとみる。23年3月期はそろって増収減益となる見込みだ。

ENEOSHDは13日、1000億円程度のトランジションボンド(移行債)を6月に発行すると発表した。持続的な成長には再生エネに加え、水素やアンモニア、再生航空燃料(SAF)など次世代エネルギーを育てる明確な戦略がいる。製油所のさらなる統廃合や給油所の多角化も欠かせない。

(外山尚之、燧芽実)

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