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昆虫を注射1本でゲノム編集 安価・容易に品種改良

京都大学の大門高明教授らは遺伝子を効率よく改変するゲノム編集を昆虫に簡単にできる技術を開発した。卵を産む前の成虫に注射をするだけですみ、高価な装置や長期間の訓練などは不要だ。ほとんどの昆虫種に適応できるという。昆虫食といった産業への利用や病原体を媒介しないようにして感染症の流行を抑えるといった応用が期待できるという。

スペインの進化生物学研究所との共同研究で、17日に米科学誌に論文が掲載された。

ゲノム編集は生物の設計図にあたるゲノム(全遺伝情報)を自在に書き換える技術だ。従来、昆虫を対象にする場合、産卵直後の卵にゲノム編集に必要なたんぱく質などを注射していた。手技が難しく、1年ほどの訓練が必要だった。昆虫にはさまざまなタイプがあり、虫に卵を産み付ける種や卵が小さすぎる種などでは難しかった。

新技術はゲノム編集用の物質を成虫の卵巣近くに注射するだけで、成虫の卵巣の卵をゲノム編集することができる。昆虫の卵には卵黄を取り込む「卵黄形成期」と呼ばれる時期がある。研究チームはこのタイミングで成虫に注射するとゲノム編集用の物質が卵に取り込まれることを見つけた。卵黄形成期は昆虫の種にもよるが1~数日と長く、解剖すれば時期を簡単に調べられるという。

成虫は卵より大きく注射しやすく、数十分の訓練でできるようになるという。大門教授は「卵黄形成期のない単為生殖をするアブラムシなど数%の種は難しいとみられるが、それ以外のほとんどの種を扱える」と話す。必要な装置の費用も抑えられるという。

実際に、甲虫の一種のコクヌストモドキとゴキブリで実験した。目の色を黒くする遺伝子の機能をゲノム編集で失わせて、白眼の個体を作り出すことができた。コクヌストモドキでは、生まれた個体の約5割にゲノム編集がされており、卵に注射する従来法に匹敵する効率だという。ゴキブリでも約2割をゲノム編集できていた。これまでも成虫に注射する手法はあったが、生まれる個体の約1%しかゲノム編集できないくらいの効率だった。

昆虫の中には、生糸をつくるカイコや蜂蜜をつくるハチなど有用な物質を作る種類がいる。コオロギなどのように食用になるものもいる。ゲノム編集で昆虫の性質を変えて、有用物の品質や生産量を増やせる可能性がある。また、蚊などの性質を変えて病原体を媒介しないようにできれば、感染症の被害を抑える応用も期待できる。

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