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ハイコンテクスト文化

SmartTimes WAmazing代表取締役社長CEO 加藤史子氏

NIKKEI BUSINESS DAILY 日経産業新聞日経産業新聞 Smart Times

「こちら、弊社の会員様に今年4月にアンケートを実施させていただいたのですが、渡航制限が解除され次第すぐに日本へ行きたいという方が7割以上というかたちになっております。」先日、オンライン会議で同席をしていた私は、彼が行う顧客への説明の中で、何回の「~かたちになっております」が登場するのかを数え始めた。優に10回は登場した。

いつからか、こうした表現が特に若手のビジネスパーソンを中心に使われるようになった。「こちら100円というかたちになっております」という文の重要情報は「100円」であるが、装飾語の多い文章なので全文字数のうちの重要情報文字数シェアが下がる。つまり、話を聞く側の脳内で、何が重要情報か拾えなくなる可能性は高まる。長々と丁寧に説明したのに、相手に伝わらず記憶にも残らないのでは元も子もない。会議が終わった後、彼個人に「"させていただきます"とか"かたちになっております"の乱用はよくない」と伝えたが、こういう注意はチャットの文字ではなく、出来れば訪問先顧客から帰る道すがら、笑顔でさらりと口頭で伝えたいものだと思ったのは、私がハイコンテクスト文化を持つ日本人だからだろう。

しかし当社では日本人もローコンテクスト文化を意識しなくてはならない。台湾、香港、中国、韓国、ベトナム、アメリカ、イギリス、ドイツなどが出身地の社員が約半数を占める多様な組織だからだ。

文化人類学者のエドワード・T・ホール氏によって提唱された「ハイコンテクスト文化」と「ローコンテクスト文化」という概念がある。ハイコンテクスト文化はコミュニケーションが価値観、感覚といったコンテクスト(文脈、背景)に大きく依存している。言葉そのものには含まれないボディランゲージや声のトーン、時には話者の地位や立場までも含まれて意味が成立する。直接的でなく持って回った表現が好まれる日本はハイコンテクスト文化の国だ。「加藤さん、誠に残念ですがこういうご時世ですので」と言われれば、来週の対面アポはオンラインに変更なのかな、と相手の伝えたいことを瞬時に推察できる。逆に、ローコンテクスト文化とは、ほぼ言語を通じてコミュニケーションされ、文法も明快かつ曖昧さがない文化だ。北米、西欧はローコンテクスト文化であり、英語はその筆頭である。形式的な言葉や飾り立てた表現は必要なく端的に言語で表現することが好まれ、受け手もまた言語で表現された内容だけを文字通りに理解する傾向にある。

コロナ禍でオンライン会議が増え「空気を読む」ことが難しくなり経営における多様性も重視される今、我々は両文化をTPOに応じて意識して使いわける必要があるのかもしれない。

[日経産業新聞2021年10月25日付]

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