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アサヒ「ドライ」は発売後初 ビール刷新が相次ぐわけ

日経ビジネス電子版

ビール大手4社の事業説明会が6日に集中して開催された。アサヒビールは「スーパードライ」を発売36年目で初めてとなる全面刷新を打ち出し、サッポロビールも発売45周年を迎えた「黒ラベル」のリニューアルを決めた。新型コロナウイルス禍で業務用ビールは厳しい環境が続くなか、各社が「狭義のビール」に力を入れる理由とは。

◇  ◇  ◇

東京都内が大雪に見舞われた6日、ビール業界は異様な熱気に包まれていた。この日、ビール大手4社(キリンビール・アサヒビール・サントリービール・サッポロビール)が立て続けに2022年の事業説明会を開催したのだ。各社の広報担当者は「4社の事業説明会が同じ日に重なるのは過去になく、前代未聞だ」と口をそろえる。

ビール類(ビール、発泡酒、第三のビール)市場が縮小する環境下で4社が一様に掲げた戦略は、「狭義のビール」の再成長だ。

新型コロナウイルス禍で20代や30代の「宅飲み」需要が増えるなか、若者に「まずはビール」と思ってもらうための商品刷新に全力投球する。既にキリンビールやサッポロビールなどでは、若者がクラフトビールやプレミアムビールを愛飲する傾向が顕著になってきたという。そうした流れを本格的な市場拡大へとつなげるのがビール会社の最重要課題となっている。

「変えるには勇気がいるしリスクも伴う」

「スーパードライは、これがなければアサヒビールが存続できなかったほど重要なブランドだ。嗜好品の味を変えるには勇気がいるしリスクも伴うが、(1987年の発売から)36年目にフルリニューアルを行う」

アサヒビールの塩沢賢一社長はこう宣言し、旗艦商品であるスーパードライの味やパッケージを全面刷新し、2月中旬以降の製造分から切り替えることを明らかにした。「辛口」や「シルバーパッケージ」といった特徴を残しながら、ホップの香りや飲み応えを強めた。説明会の会場では実際に新旧商品を試飲する場を設け、味の違いをアピールする力の入れよう。この新スーパードライを、3月から「過去最大規模の広告宣伝投資」(アサヒビール)で消費者に訴求していく考えだ。

1987年に発売したスーパードライのブランド力は非常に強い。しかし、ロイヤルユーザーの年齢層が50代や60代と高齢化してきた。2021年春に実施したユーザー調査では、商品の売りだった「辛口」に対する消費者の認識のずれも明らかになった。「男性的」「苦み」などのブランドイメージが強く、アサヒが訴求したい価値とは異なっていたのだ。そこで、若者層に再び商品を訴求するため、リスクを伴う味やパッケージの刷新という難題に挑んだ。

サッポロは「黒ラベル」をリニューアル

サッポロビールも発売45周年を迎える主力ブランド「サッポロ生ビール黒ラベル」をリニューアルする。「生のうまさ」を強化したという。

黒ラベルは7年連続で家庭用の売り上げが伸びており、20代の購入者数は10年比で3倍超に増えている。この動きを好機とみたサッポロは「デジタルとリアル体験を組み合わせたコミュニケーションで購入者層の若返りを図る」(同社マーケティング本部ビール&RTD事業部長の武内亮人氏)と意気込む。武内氏は会見で「26年までに現在約30万人の熱狂的な黒ラベルファンを100万人規模に増やす」との目標を掲げた。

既に「キリン一番搾り」などのリニューアルを終えているキリンビールは家庭向け専用ビールサーバー「ホームタップ」のサービス(毎月定額の支払いで自宅にビールが届くサブスクリプションサービス)を拡充。高付加価値商品のクラフトビールにも注力する。サントリービールは若者層のリピートが多い「ザ・プレミアム・モルツ」ブランドに新商品を投入し、ラインアップを一段と強化する考えだ。

26年の酒税一本化を見据える

国内のビール類の販売は長期的に苦戦している。ビール業界の推計では21年の販売数量は前年比約5%のマイナスで17年連続の縮小となった。コロナ禍で飲食店における酒類の提供が大幅に減ったことが影響した。

ただし、狭義のビールに限れば顧客が拡大傾向にある。宅飲み需要を捉えて缶商品の販売が伸びているためだ。キリンビールの堀口英樹社長は「酒税改正が大きく効いている。ビールの税率が下がったことでお客様が手に取りやすくなっている」と足元の環境を分析する。

ビール類は18年の酒税法改正により、26年10月までに3段階で酒税が変更される。第1弾となった20年10月の酒税変更では、狭義のビールは減税となり、発泡酒や第三のビールは増税となった。これによって商品間の価格差が縮まり、割高だったビールに消費者が回帰したわけだ。

アサヒの推計では、20年9月までの12カ月累計のビール購入者は3265万人だったが、酒税改正後の12カ月間累計では3635万人と11%増加している。特に20代や30代の若者層の伸びが大きい。コロナ禍で外食の機会が減ったことで、価格が手ごろになった宅飲み用の缶ビールを購入する機会が増えたことが一因となっているようだ。

酒税変更は23年、26年に控えており、26年には狭義のビールと発泡酒や第三のビールの税率が一本化される。狭義のビールが主戦場となっていく中で、これからの市場を支える若者にどれだけ定着させられるかが22年の勝負どころとなる。そこでいち早く主導権を握りたいという各社の思惑が、異例の4社同日説明会という形になって表れた。

サントリービールの西田英一郎社長はビール類市場の動向について、「20~21年はコロナ禍の影響が想定以上に長く厳しかった。加えて酒税法改正という価格改定で市場変動が読みにくくなっている」と語る。ビール各社の本領が試される1年となる。

(日経ビジネス 江村英哲)

[日経ビジネス電子版 2022年1月11日の記事を再構成]

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