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ニトリホームズが好発進 似鳥会長「ケチケチ作戦で」

日経ビジネス電子版

おなじみの緑ではない。オレンジ色の「ニトリ」の看板が姿を現した。

2021年6月11日、さいたま市にオープンした「ニトリホームズ宮原店」。ニトリホールディングス(HD)が島忠の「ホームズ宮原店」を全面改装し、ニトリを冠して再出発した。

オレンジ色は「ホームズ」のブランドカラーである。しかし、その中身は大きく変わった。冷感寝具の「Nクール」や、ベッドマットレスの「Nスリープ」、レディースアパレルの「N+(エヌプラス)」、キッチン用品、生活家電など、店内はニトリの売れ筋PB(プライベートブランド)が勢ぞろい。ニトリの自社工場で生産した家具がそろう「NITORI STUDIO(ニトリスタジオ)」というコーナーまであった。

ホームセンターが主体のホームズに、ニトリの商品が加わったから「ニトリホームズ」。約2100億円を投じたTOB(株式公開買い付け)を経て、島忠を傘下に収めたからこそできる、新しい店づくりだ。1階がホームセンター、2階がニトリを中心とした家具とホームファッション。計1万1864平方メートル(3589坪)の広い売り場に、ニトリと島忠のほぼ全商品を集めた。

その数、約6万3820アイテム。マットレス一つをとっても約100アイテムあり、5万円に満たない「ニトリ価格」のPBから、島忠が仕入れる10万円超のシモンズ、フランスベッドまで幅広い。ソファ売り場には、カリモクも並んでいた。

PBが中心のニトリと、NB(ナショナルブランド)を仕入れて売る島忠。それぞれの商品を、あらゆるジャンルで持ち寄ることで、ラインアップや価格帯に幅が出る。1人暮らしからファミリーまで、幅広い予算やニーズに応じた買い物ができるようにしたのだ。

ニトリHDの似鳥昭雄会長は、ニトリホームズ1号店を評してこう言った。

「新しい、本格的な、総合提案型の住生活の専門店が、日本で初めて生まれたんじゃないか」

可能性はあるが「じれったい」

実際に、出足は好調だ。6月11日の開業日から同28日までの累計販売実績は、計画比13%増で、改装前と比べると、前年比で9.9%増、前々年比で33.2%増である。

「非常に可能性があるなと思う」。21年6月末の決算説明会で、似鳥会長は早くも手応えを口にした。その半面、こうもぼやいた。「まあ、本当にじれったいような状態です」

可能性はあるが、じれったい――。独特の言い回しに、ニトリならではの悩みが透けて見える。

ニトリHDは21年2月期で、34期連続の増収増益を成し遂げた。一方、新型コロナウイルス禍による巣ごもり需要で大きく伸びた側面もあり、今期(22年2月期)は反動減も念頭に置きながら「35期連続」を目指す。

とはいえ、増収の可否を心配する必要はない。島忠が連結対象に加わるからだ。実際に今期の連結売上高は前期比21.9%増の8736億円と大幅増を見込む。問題は増益を実現できるかだ。現状の想定では、経常利益が5.8%増の1464億円、純利益は7%増の986億円。売上高ほど余裕のある伸び率ではない。

「本当は(島忠の全)60店舗のうち10店舗、20店舗と一気に改装したいが、あまりやり過ぎると経費がかかりすぎて、増収増益が危うくなってしまう。だから、やりたいけれど、やれない。背中のかゆいところを背広の上からかいているような状態でね。まどろっこしいというのが正直なところなんです」(似鳥会長)

だからこそ、まずは宮原店だけをリニューアルした。しかし、想定以上に売れ行きがよかったため、今期中にさらに2~3店舗をニトリホームズに改装する方針に切り替えた。改装費をかけても増益を確保できる目算が立ったからだ。

似鳥会長によると、ニトリホームズへの改装費は1店舗当たり2億円。投資額をすべて回収するには3年ほどかかると読む。少しでも改装原資を捻出すべく、似鳥会長が打ち出したのは「ケチケチ作戦」だ。

ひとまずニトリの改装はストップし、島忠の改装に振り向ける。チラシを月1回にしたり、出張費を抑えたりする。「ありとあらゆる経費を今、使わないで我慢している」と似鳥会長は言う。

さらに「島忠購買改革プロジェクト」を発足し、島忠の購買ルートをニトリ主導ですべて洗い直し、10億円の経費削減を目指す。ひねり出したお金で、「恐る恐る」(似鳥会長)改装を進めていく考えだ。

売り上げ主義から利益主義へ

ニトリと島忠は、もともと正反対の経営スタイルだった。似鳥会長の言葉を借りると、「島忠は支店経営で、ニトリは本部形式」である。

島忠は店長に対し、店舗運営に関わる全権を委任している。そのため、店舗ごとに並んでいる商品が大きく異なる。対してニトリの場合は、どの棚にどの商品をどれだけ並べるかまで、事細かく本部が指示を出している。そうすることで売り逃しを防ぎ、無駄な在庫を抱えないようにしているのだ。

「島忠は、売り上げ主義。うちは利益主義ですから、坪当たりの粗利益や営業利益を見て売り場の拡大、縮小を判断していく。これを全部店長に任せたら、赤字が出ているのも分からないで、一生懸命商品を売ることになる」(似鳥会長)

ニトリホームズへの転換は、島忠を「売り上げ主義から利益主義に変える」という狙いもある。島忠の弱点は、利益率が高いPBを一切扱っていないこと。他のホームセンター大手がPBの開発に力を入れる中、島忠は完全に取り残されていた。

それが利益にも表れている。21年5月時点の粗利率はニトリが56.9%に対して、島忠は35.3%。PBを増やすだけでも、利益面で底上げが見込めるのだ。

まずは家具やホームファッションでニトリのPBを入れ、島忠の本業であるホームセンター部門では、電源タップや段ボール、自転車、ハンドソープを皮切りに、島忠オリジナルのPB開発を推進する。

島忠の会長には、ニトリで店舗開発を担ってきた副社長の須藤文弘氏を据えた。須藤氏は島忠出身で、関西島忠の代表取締役を務めた経歴があり、ニトリと島忠をつなぐ重要なパイプ役になる。

あの手この手で、島忠の経常利益率を20年8月期の6.6%から、5年後の26年2月期には12%まで引き上げるのが目標だ。「(島忠はニトリと)別の世界というか、全く違いますから。どんどん数字が変わっていく。非常にやりがいがある」と似鳥会長は言う。

衣食住すべてを強化「流通業なら何でもやる」

島忠事業に注目が集まりがちだが、実はニトリの既存店でも静かな変化が起きている。PBの家電が徐々に増えているのだ。

テレビ、洗濯機、冷蔵庫、エアコン、電子レンジ、炊飯器、オーブントースターと広がり、家電の売上高は2年前の3倍以上になった。エアコンだけで1週間に400台売れる規模になっているという。

今期の出店戦略ではニトリを40店増の507店に、インテリア雑貨を扱う「ニトリ デコホーム」を40店増の146店にする。住だけではなく、衣と食にも意欲的だ。

19年3月のブランド旗揚げから2年が過ぎた「N+」は今期4店増えて計21店舗になる見込み。来期は、一挙に20店舗をオープンする計画で、攻勢を強める。

外食事業も強化する。240グラムのチキンステーキが500円のワンコインで食べられる「ニトリダイニング みんなのグリル」は、ニトリ梅島ショッピングセンター(東京・足立)、ニトリ相模原店(相模原市)に続き、21年7月にはニトリ成増店(東京・練馬)に併設予定。既存の2店舗は月平均1万2000~1万3000人が来店する繁盛店になっているといい、「今年中に島忠の店舗も含めて、7~8店舗まで増やしたい」(似鳥会長)と熱を入れる。

中国大陸進出も本格化する。売れ行きが上向いてきたことから今期は13店増やし、47店体制にする。上海を中心にドミナント(集中出店)を進める戦略だ。台湾は7店増の42店舗とし、マレーシアには1号店を構える。米国には似鳥会長の名前にちなんだ「アキホーム(Aki-Home)」が2店舗あるが、「ニトリ」に統一した。

島忠を立て直しながら、衣食住すべてに事業を広げ、なおかつ海外展開も加速するニトリHD。「2032年に3000店舗、売上高3兆円」という野望を胸に、似鳥会長は3カ月前の決算発表会で、こう語っていた。

「3000店、3兆円を達成するには、今のホームファッションだけでは不可能なんです。可能性のあるものは、どんどんやっていく。駄目だったら、やめればいい。全く違う異業種も、流通業であればやっていきたい。場合によっては、さらなるM&A(合併・買収)もなきにしもあらずだ」

(日経ビジネス 酒井大輔)

[日経ビジネス 2021年7月12日号の記事を再構成]

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