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ダイハツが移動販売支援 レンタルで「軽離れ」防ぐ

日経ビジネス電子版

軽自動車メーカーが、軽自動車の新たな使い方を提案し始めた。軽自動車の国内新車販売台数で首位のダイハツ工業は商品を並べる荷箱を備えた軽トラックを小売事業者らに移動販売車として貸し出すサービスを始めた。2位のスズキも移動販売や車中泊、リモートワークなどに使いやすい軽自動車を発売した。利便性をアピールする背景には、これまで強みとしてきた低価格などの魅力が薄れ、「軽離れ」が進みかねないとの危機感がある。

ダイハツ工業は荷箱付きの軽トラックを移動販売車として貸し出す新サービス「Nibako(ニバコ)」を9月6日に始めた。「事業者と消費者の間に立ち、両者をつなぐ懸け橋になりたい」。同社の奥平総一郎社長はこう抱負を語った。

新型コロナウイルス禍を受けて新たに移動販売をしたいと考える事業者が増えているとみて、事業化を決めた。スピード感を持って取り組むため、意思決定の自由度を高めた、専門のバーチャルカンパニーを設けて事業化の準備を進めてきた。

2年後の黒字転換目指す

まず、東京都、埼玉県、千葉県、京都府を中心に販売店を通じてサービスを提供し、全国に広げる。2024年度には2000台を貸し出す規模に拡大し、この事業を黒字転換させることを目指す。

車両のレンタル料は1日プランで1万3200円から、1カ月プランは6万6000円から。野菜、総菜、小物、衣料品など様々な業種の移動販売に利用できる。ダイハツの販売店が移動販売の事業相談などにも応じる。利用者は、販売店が開く市場「ダイハツマルシェ」に無料で出店できる。

ダイハツが狙うのは、事業者と消費者とをつなぐことによる地域活性化というが、それだけではない。車だけを売るという販売店の在り方を変え、顧客との接点を増やす仕掛けづくりだ。

奥平社長は「この事業は、車を開発、生産、販売する本業にも働きかけ、仕事を変えていくというダイハツにとっての新しい役割も担う」と話す。モノづくりだけでなく、サービスなどで新たな価値を提供して収益を得る新たな事業モデルを構築するきっかけにする考えだ。

利用者の評価は上々だ。コーヒー卸、MICEコーヒーサービス(大阪府東大阪市)の西垣重延社長は「これまで小売りをしたことがなかったが、おかげで事業の幅が広がった。レンタルなので初期投資はほとんどいらず、移動販売は十分商売として成り立つ」と語る。

ダイハツはニバコ会員専用のサイトを開設し、事業者同士がつながる無料のサービスも提供する。サイトでは出店場所を提供する事業者、商品を生産するメーカー、イベントなどの主催者、消費者らも結びつける。ニバコを中心とするエコシステム(生態系)をつくり上げ、ダイハツファンを増やす算段だ。

ダイハツがニバコを始めた背景には、軽トラックの販売減少に歯止めがかからないという事情もある。21年の軽トラックの国内市場規模は16万4000台、20年前の01年(28万4000台)から4割以上少ない。ダイハツの関係者は「軽トラ市場はじり貧だ。ニバコのような事業によって顧客との接点を増やし、軽離れを食い止めたい」と語る。

スズキは商用・乗用の「二刀流」

一方、スズキは軽商用車「スペーシア ベース」の販売を始めた。軽自動車の「スペーシア」シリーズで初めての商用モデルだ。外見は乗用車と同じくデザイン性にこだわりつつ、車内の荷室空間を広く取った。

移動販売、荷物運搬などの商用だけでなく、車中泊やリモートワークなどの用途にも対応できるようにしたのが特徴だ。スズキによると、スペーシアや軽商用「エブリイ」などで4人乗車する割合はここ数年で低下し、1~2人での利用が増えているという。ソロキャンプ人気など生活スタイルの変化が背景にあるようだ。

こうした変化に注目し、スズキが考えたのが乗用と商用のいいとこ取りだ。後部座席は最低限の装備にしてシンプル化。座席をたたむと広い荷室を確保できるようにした。付属のボードは、テーブルや移動販売用の棚などとして使える。ボードを設置する高さは3段階に変えられる。ボードは荷室の前後の間仕切りとしても使え、荷室を様々な形にアレンジできる。

国内新車市場の約4割を占める軽自動車は庶民の足として手軽な移動手段だったが、環境対応や安全装備の追加で価格は上昇傾向にある。総務省の小売物価統計調査によると、8月の軽自動車の平均価格は約152万円。10年前(約108万円)に比べて約4割上昇した。

価格優位性が相対的に下がる中、軽自動車の多用途化などによってその魅力を引き出して活路を見いだそうと知恵を絞るダイハツとスズキ。三菱自動車日産自動車が軽EV(電気自動車)車を発売するなど、電動化の流れも押し寄せている。軽自動車の付加価値をどう打ち出すか、模索は続く。

(日経ビジネス 小原擁、薬文江)

[日経ビジネス電子版 2022年9月9日の記事を再構成]

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