ANA、再生燃料利用で証書 日本通運などとコスト分担
全日本空輸(ANA)は14日、航空機の脱炭素につながる「持続可能な再生燃料(SAF)」の利用を企業と協力して促進する取り組みを始めたと発表した。SAFを使った同社の航空機で貨物を運ぶと、SAFのコストを一部負担する代わりに証書が発行され、環境に優しい輸送を使ったことを取引先や投資家に情報開示できるようにする。まず日本通運など貨物事業者3社と始め、今後、旅客便での活用も目指す。

新たに始めた取り組みは「SAFフライトイニシアチブ」。第1弾として日本通運、近鉄エクスプレス、郵船ロジスティクスの3社が参加する。3社はすでに9月末にSAFを搭載したANAの貨物便を使った輸送を行い、このほどANAが証書を発行した。
発行する証書は環境に優しいフライトを使ったことを証明するもので、第三者機関の認証を受けた。貨物事業者は輸送での二酸化炭素(CO2)削減への貢献を取引先や投資家に開示する際に証書を活用できる。こうした取り組みは欧米の航空会社が先行するが、日本では初めて。

今後、貨物だけでなく、出張で航空機を使う企業も利用できるようにする。新型コロナウイルスの影響で出張は減っているが、将来的な再開を見込む。
旅客便を対象とした取り組みの開始時期と料金設定は調整中だが、航空機を出張で使う頻度の高い上場企業などを対象に、参加を促していく。
取り組みを始めた背景に世界的な脱炭素の流れがある。特に航空輸送を使う荷主の間で、輸送時のCO2排出量の開示を重視する傾向が世界的に強まっているためだ。今後、輸送に関わる貨物事業者も環境負荷を開示する必要性が増している。
SAFは廃油や植物を原料とした再生燃料で、航空機運航のCO2排出量の8~9割を実質減らせる。しかし、世界の供給量は航空燃料全体の1%以下。コストも既存のジェット燃料の3~5倍と高い。ANAは取り組みを通じ、SAFのコストを輸送網全体で負担できる仕組みをつくり、普及にもつなげたい考え。
ANAの平子裕志社長は同日の記者会見で「SAFに関する具体的な取り組みは欧米諸国で先行し、残念ながら日本は大きく立ち遅れている」と危機感を示した。その上で「産業界全体で認知を広げ、SAFの量産と普及を目指していく。多くの企業の皆様にご理解とご協力をお願いしたい」と話した。

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