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日本郵政 政府保有株の大量売却でも大崩れしないワケ

日経ビジネス電子版

日本郵政の大株主である政府が10月6日、保有する日本郵政株の一部売却(売り出し)を決めた。対象は発行済み株式総数の27%に上る。株式市場での需給悪化が懸念されるが、それでも政府が売却に動くのは、東日本大震災の復興財源に充てるという当初の目的を粛々と実現するためだ。

今回の売却は、政府が2013年1月に郵政株売却で4兆円を調達するという決定に沿ったものだ。これまで15年11月の上場時と17年9月の2次売却で合計約2兆8000億円分を確保し、今年6月には郵政の自社株買いで約2500億円分を売却した。残る9500億円分を、今回の売却で目指すことになる。

売却価格は現時点で未定。証券会社を通じて投資家の需要を探り、10月25~27日の間に売り出し価格を決める予定だ。9500億円を確保するには、1株当たり920円程度で売却することが必要になる。

日本郵政の株価は、売り出し公表の翌7日に一時885円と前日終値比4%強下落。この日の日経平均株価が上昇したなかでの逆行安で、需給の悪化を懸念した売りに押された格好だ。それでも、その後は下げ幅を縮め、8日には売り出し公表前の水準に回復した。

相場全体の地合いが改善したことや、売り出しに合わせて日本郵政自身が1000億円の自社株買いの枠を設定したことも下支え要因だが、それだけではない。日本郵政株が大崩れしなかったのはなぜか。

実は上場時から株価の水準が大きく下がったことで、郵政株には「配当」という下支え要因がある。

日経電子版のデータによると、日本郵政の予想配当を現在の株価で割った「予想配当利回り」は5%を超え、東証1部のうち上位20位前後に位置する。1株当たり年間50円という今の配当水準が維持されれば、という前提条件付きだが、実質的に年間5%の利回りが得られると考えるなら悪くない投資先ともいえる。

売り出し先、海外比率を25%に

振り返れば、郵政株は上場直後の15年12月に1999円の高値を付けたあと、大きく下落してきた。この間配当は基本的に年50円を維持(特別配当を除く)。相対的に「配当利回り」でみれば魅力が高まり続けている。

実際、今回の売り出しに当たっては、国内販売分が75%、海外販売分が25%と、前回から海外販売分の割合を増やした(前回は20%)。売り出しに加わる外資系証券会社が増えた側面もあり、実際の需要動向はこれから探るとはいえ、証券会社からするとそれなりに「さばける」との目算がうかがえる。

では、外国人投資家が郵政株を買う「理由」は何だろうか。日本郵政の中長期的な成長に向けた種まきは着実に進んでいる。郵便局のデジタル化加速に向け、外部企業との連携を前提にした戦略子会社「JPデジタル」が活動を開始しているほか、楽天グループとの連携、SGホールディングスとの連携強化も相次ぐ。

民営化後に累積損失を出し続けてきた「かんぽの宿」についても、フォートレス・インベストメント・グループなど外部に売却することを決め、「負の遺産」の整理も進んでいる。

もちろん、中長期的な課題はなお多い。郵便事業の採算改善や、いずれ株式を手放さなければならない「ゆうちょ銀行」「かんぽ生命」に代わる収益源の育成はなお途上だ。それでも外国人投資家は郵政株に魅力を感じているのかどうか。今回の売り出しの行方は、政府による資金調達だけでなく、割り当ての増えた外国人投資家が日本郵政をどう見ているかの「通信簿」にもなりそうだ。

(日経ビジネス 三田敬大)

[日経ビジネス電子版2021年10月8日の記事を再構成]

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