レアメタル使わない電極材開発、高電圧で動作 東北大学
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東北大学の小林弘明講師らの研究グループは希少金属(レアメタル)を使わない電極材を開発した。炭素や酸素などの元素でできた「クロコン酸」という物質を使い、4ボルト(V)の高電圧で動作することを確認した。他のレアメタルを使わない電極材に比べ高電圧で動くため、電気自動車や鉄道などの分野で実用化しやすいとみている。

研究グループがコンピューターシミュレーション(模擬実験)の一種で計算したところ、理論的にはコバルト系正極材料の4倍程度の蓄電容量を持ち、4Vの高電圧で動作するとわかった。クロコン酸を正極材に使った試作でも理論上の値には劣るものの、毎時400ワット(1キログラムあたり)の出力が可能と確認した。
リチウムイオン電池の正極材には通常、コバルトやニッケルなどのレアメタルが使われる。ただ産地や資源量が限られるため供給リスクがあり、レアメタルを使わない電極が求められている。
炭素や酸素、窒素などの有機物でできた電極は資源の制約がなく安価に手に入るため、候補の一つだ。ただ従来検討されてきた材料の多くは、電圧が2〜3Vと現行のリチウムイオン電池(3.7V)に比べて低く、実用化に至った例はないという。小林氏はクロコン酸について「有機ポリマーなどに比べ高い性能を示す可能性がある」と話す。
今回の試作は正極材料としてクロコン酸が使えるかどうかを確認するためのもので、今後、電解液や電極のつくり方を工夫し容量を増やす。今後は2025年をめどに理論上実現可能な1キログラムあたり1500ワット時程度の性能に引き上げる。
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