NASA、300万光年先の孤立銀河 新型望遠鏡で鮮明に
地球から光の速さで300万年かかる距離にある比較的小さな銀河「WLM」の星々の鮮明な画像を米航空宇宙局(NASA)がこのほど公開した。2021年12月に打ち上げた新型宇宙望遠鏡「ジェームズ・ウェッブ」が撮影した。WLMはほかの銀河から孤立しているため、銀河の進化について研究するのに適するという。

すでに運用を終えたNASAのスピッツァー宇宙望遠鏡が赤外線で撮影した画像と比較すると、鮮明さが際立つ。WLMは標準的な銀河と比べて規模が100分の1以下の矮小(わいしょう)銀河に分類される。地球がある天の川銀河から比較的近い場所にあり、ウェッブ宇宙望遠鏡であれば一度に多数の星を撮影可能だ。同望遠鏡の画像では色、大きさ、温度、進化の段階が異なる星を区別できる。
WLMから近い他の銀河は天の川銀河と相互作用しているため研究が難しいが、WLMは比較的孤立しており、銀河の形成や進化の過程を研究するのに役立つ。さらに、ガスの成分が初期の宇宙の銀河に似ているという。WLMにある比較的質量が小さい星は寿命が長いため、一部は初期の宇宙で形成された可能性がある。米ラトガース大学のクリステン・マックイン氏は「古代宇宙のように小さな銀河で星がどのようにつくられて、進化するのかを研究するのに使える」とみる。
ウェッブ宇宙望遠鏡は米国が欧州やカナダと協力し、1兆円以上かけて22年夏に運用を始めた。地球と月の距離の約4倍遠い150万キロ先から宇宙を観測している。1990年に米国などが打ち上げたハッブル宇宙望遠鏡の後継で、感度は100倍に向上した。ほかにも赤外線をはじめ幅広い波長の光に対応するなど、性能を大幅に向上させた。
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