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JR4社の最終損益3700億円下振れ 新事業探す長期戦に

日経ビジネス電子版

JR東日本などJR4社合計の2022年3月期最終損益は、黒字予想から一転、大幅な赤字見通しとなった。新型コロナウイルス禍に揺さぶられる構図が続き、下方修正の額は3700億円に上る。連結売上高は合計で約6000億円減る。固定費が高くコスト削減が限られる鉄道会社にとって逆風がやまず、新事業の種を探す試行錯誤が続く。

「22年3月期の最終黒字化は必達目標」――。多くのJRがこう公言していたが、そろって業績を下方修正せざるを得なくなった。

7月30日にすでに最大1165億円の最終赤字になると発表していたJR西日本に続き、10月27日にはJR東海が300億円の赤字、同月28日にはJR東日本が1600億円の赤字になると発表した。

JR九州は最終黒字をかろうじて確保するものの、129億円から34億円へと下方修正した。期初予想からの下振れは、4社合わせて約3700億円に達する。最終的な合計の赤字額は最大3000億円となる。

崩れた「8割回復」のシナリオ

6月ごろにワクチン接種が完了し、数カ月かけて「利用がコロナ禍前の8割前後まで回復する」という各社のシナリオはあっさり崩れた。政府が7~9月に緊急事態宣言を発出したためで、今となってもコロナ禍に揺さぶられ続ける鉄道産業の苦境が鮮明だ。

東海道新幹線の8月の利用者数はコロナ禍前の3割程度に低迷した。JR東海の巣山芳樹副社長は「21年7~9月期の運輸収入はコロナ禍前の45%に回復するとみていたが、39%にとどまり、想定より209億円下回った」と話す。

では足元の利用はどうか。緊急事態宣言解除後の10月は、各社とも前年同月を上回る利用状況となっている。ただし、これまで利用が抑制されてきた割には「意外に伸び悩んでいる」と巣山氏は話す。11月1~4日の利用はコロナ禍前の半分程度にとどまり、急回復とはほど遠いという。

巣山氏は「期初予想と比べると、利用回復のタイミングが2カ月遅れるだけで、立ち上がりのペースは変わらないとみている」と話す。JR東海の場合、コロナ禍前の8割まで利用が回復するタイミングは22年3月末までずれ込む。通年の運輸収入はコロナ禍前の52%にとどまる見通しだ。

その結果、22年3月期の運輸収入を940億円下方修正。150億円と見込んでいた最終黒字を吹き飛ばすことになった。4社合計で失う売上高は6000億円超に上る見込みだ。

コロナ禍の長期化は、単に利用回復のタイミングを遅らせるだけでは済まなそうだ。

巣山氏は「観光需要はコロナ禍前の水準まで戻るだろうが、ビジネス需要はそうならないだろう」と危惧する。「(外出抑制が)1年半と長期化した結果、テレビ会議の使い勝手が良くなった。商談はまだしも、社内会議はリモートのまま残る可能性がある」とみる。ビジネス需要が大きい東海道新幹線への影響は大きい。

そのためJR東海は観光客向けのサービスに力を入れる。インターネット予約サービス「EX(エクスプレス)予約」で11月、「EX 旅のコンテンツポータル」を開設した。提携先のサイトでホテルや観光プランを予約できるようにした。

23年夏には、アプリ内で予約や決済が完結する「EX-MaaS(仮称)」へと発展させ「コロナ禍前の100%を超える伸びしろがある観光需要を取り込む」と巣山氏は話す。

このように、JR各社は利用状況がコロナ禍前に戻らないことを前提に、新たな活路の開拓に躍起になっている。

思い切った4分間の停車延長

代表的なのが新幹線や特急列車を使った荷物輸送だ。

20年から実証実験を重ねてきたJR東日本は、21年10月から「はこビュン」というサービス名で事業化。荷物を駅で預かって列車に積み込み、到着駅から周辺の店舗までの輸送までを手掛ける。

12月10日からは、一部の上り列車で大宮駅の停車時間をこれまでの1分間から5分間に延ばし、荷物の取り下ろし時間を確保することも決めた。その分、上野駅や東京駅への到着は遅くなる。所要時間を秒単位で縮めてきた新幹線では異例とも言える取り組みだが、荷物輸送の対象エリアを東京だけでなく埼玉エリアに広げることを優先させる。

鉄道ファンや子供向けのイベントも新たな商機になりつつある。これまでは社会貢献活動の一環で、工場や車庫を一般公開してきたが、コロナ禍で中止せざるを得なくなっていた。再開するにあたり、有料イベントへ変更されるケースが目立っている。事前予約制にすることで混雑を防げることに加え、新たな収入源にもなるからだ。

廃品をオークションに

JR東日本のネット通販サイト「JRE MALL」を見ると、11月8日時点で26件のイベントが掲載されており、完売していた。最も料金の高いイベントは、新潟市にある新幹線の車両基地見学で、親子ペアで4万円。10組限定なので40万円の売り上げだ。SLの点検風景などをオンライン配信する3000円のイベントも、100人の枠が全て埋まっている。

JR九州では博多駅の駅長が司会を務める鉄道部品のネットオークションを9月23日に実施した。定員いっぱいの100人が参加し、駅名の看板、車両の照明器具など廃棄予定の部品に次々と値が付いた。最高額は車両の座席で8万3000円。合計で77万8000円の売り上げがあったという。好評だったことから、11月27日に第2弾を開催する予定だ。

収入が限られる取り組みも多いが、固定費が高くコスト削減に限界がある鉄道会社にとって、今はアイデアを生み出し続けることが欠かせない。

JR東日本の深沢祐二社長は「現場で何をやらなければいけないのか、一人ひとりが考えるようになってきた」と話す。苦境を示す大赤字ではあるが、会社を強くする好機にできるかどうかを各社が試されている。

(日経ビジネス 佐藤嘉彦)

[日経ビジネス電子版 2021年11月9日の記事を再構成]

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