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ドコモ、dポイント付与率アップ アクティブ利用増へ

日経ビジネス電子版

NTTドコモは6月から、共通ポイント「dポイント」の獲得ポイント数に応じて付与率を高めるランク制を導入する。狙いは、日常的な利用を増やすこと。2015年12月に共通ポイント業界に参入して会員数は一定の規模に成長したものの、アクティブ会員の数は競合の水準に届いていない。

「ドコモ史上、最高にたまりやすいdポイントに。それが新しいdポイントだ」。NTTドコモの伊藤邦宏マーケティングメディア部長は2月25日、6月からの共通ポイント「dポイント」のリニューアルについてこう表現した。目玉は、ポイント獲得数などに応じた「会員ステージ」を「会員ランク」に刷新し、dポイント加盟店でのポイント付与率をアップさせること。3カ月間に5000ポイント獲得して最高ランクの「5つ星」に上がると、付与率は通常の2.5倍になる。

dポイントは15年12月、ドコモの回線契約者向けだったポイントプログラムを契約者以外にも開放したもので、Tポイント、Ponta、楽天ポイントを追う形で共通ポイント市場に参入した。会員数は21年12月時点で約8721万人と、ドコモの携帯電話契約数8385万を上回っている。

伊藤氏は「会員数は右肩上がりで伸びてきた」と話す一方、会員からの声として「(現行制度で最上位の)プラチナステージの恩恵が少ない」「ランクアップのモチベーションがわかない」などの不満があったことを明かした。現行の制度では上位ステージになっても、レジャー施設などの優待クーポンが配布されたり、コンビニエンスストアの商品引換券が抽選で当たったりするだけで、恩恵を実感できる人は限られていた。

そこでドコモは「多くの会員がお得になるよう、ランクアップの条件も見直した」(伊藤氏)。一般のランク(旧「1stステージ」、新「1つ星」)から1つ上のランク(旧「2ndステージ」、新「2つ星」)に上がるために必要なポイント獲得数は600ポイントから100ポイントに引き下げられる。その上のランク(旧「3rdステージ」、新「3つ星」)へも、1800ポイント必要だったものが600ポイントで済むようになる。

確かにハードルは下がった。しかし見逃してはならないのは、ランク判定に使うポイント獲得期間が6カ月から3カ月へと短くなることだ。ここにドコモの真の狙いがある。

判定期間が短くなると、ランクダウンが起きやすくなる。ランクを維持するには継続的な利用が欠かせない。つまり、dポイント加盟店での付与率アップという実感がわきやすい特典を通じて、dポイントを日々獲得、利用してもらおうという意図がある。アプリなどを通じて「今月、あといくら使えばランクが上がる」といった告知を強化し、dポイントを使う習慣づけをしていきたいという。

ポイント付与率が1.5倍になる2つ星に上がるためには、1カ月平均で34ポイントを獲得し続ける必要がある。コンビニエンスストアのローソンやファミリーマートなど多くの加盟店の付与率は0.5%(200円で1ポイント)なので、月に7000円程度買い物しなければならない計算だ。

3つ星ならばポイント付与率は2倍になるが、1カ月平均200ポイントの獲得が条件となるため、ポイントカードの提示だけでためるのは難しいだろう。より多くのポイントがたまるクレジットカード「dカード」(決済100円につき1ポイント付与)やスマホ決済「d払い」(決済100~200円につき1ポイント付与)、ドコモの携帯電話や固定電話、電気料金などの契約への呼び水にしたいという意図が感じられる。

すでにドコモの携帯電話を契約しているユーザーに対する特典も改訂される。これまでは「ずっとドコモ特典」として、事前エントリーを条件に、会員ステージに応じて誕生月に500~3000ポイントを付与していた。6月からは「長期利用ありがとう特典」と名称を改め、会員ランクと継続利用期間に応じて、誕生月のd払い利用額に対するdポイント付与(通常0.5%)を最大20%上乗せする。上限は5000ポイントだ。

大島直樹・営業戦略部長は改訂理由について「事前エントリー制に不評の声があった」と説明した。しかし、対象をなぜd払い利用額に限るのかを問われると「長期利用の感謝の意味を込めてポイントを付与しても、ポイント残高が増えるだけ。より接触機会を増やすため、dポイントやd払いを日常的に使ってもらいたいという思いがある」と話した。

一連の改訂について、「dポイントをためるために購買行動を変えるような『ロイヤル会員』を増加させるためではないか」と分析するのが、野村総合研究所の冨田勝己上級コンサルタントだ。dポイントは会員数こそ他の共通ポイントと肩を並べるようになったが、日常的に利用する人は必ずしも多くないことが調査から見えているからだ。

dポイントのアクティブユーザーはまだ少ない

Tポイント7050万人、Ponta1億574万人、楽天ポイント1億人超、そしてdポイントは8721万人。各社が公表する会員数を並べるとTポイントが劣勢に見えるが、実は違う。Tポイントだけが直近1年間にTカードを利用、かつ名寄せした「アクティブ・ユニーク数」を公表しているが、あとの3社は登録された累計会員数で、実際に使われているかどうかは分からない。そこで、野村総研は21年8月、消費者1万人にアンケートをとり、共通ポイントの「実力値」をはじきだした。

それによると「一定期間に何らかの利用があったポイント」としてTポイントを挙げた人は全体の72%に達したが、dポイントは49%と低かった。つまりdポイントの「アクティブ会員」は分母を国民全体としても6000万人台であり、Tポイントに及ばない。さらに「積極的にためて、使うようにしている」としてdポイントを挙げた人(ロイヤル会員)も回答者の16%にとどまり、Tポイントや楽天ポイントと比べると低かった。

「dポイントの強みは、ドコモの通信料金の支払いを通じて大量のポイントが付与されること。これを売りに加盟店を開拓してきた」(冨田氏)。ドコモ自身、21年3月期はdポイントの年間利用額2493億ポイントのうち7割がドコモ以外の提携先での利用だと強調してきた。しかしドコモの一連の動きからは、加盟店で日常的に使われてきたというよりは、通信料金などでポイントがたまったら加盟店でポイントが消費されていただけという課題が浮かび上がる。

dポイントは共通ポイントとしては最後発だったため、他の共通ポイントとの選択制を許容する「マルチポイント」で加盟店を増やしてきた。例えば有力な加盟店であるローソンはPonta、ファミリーマートはTポイントと楽天ポイント、マクドナルドは楽天ポイントも扱っている。利用者に他のポイントではなくdポイントを選んでもらうために、ランク制を導入したわけだ。

共通ポイントのランク制としては、すでに楽天ポイントがスーパーポイントアッププログラム(SPU)を導入している。SPUは楽天グループのサービス利用数に応じて楽天市場でのポイント付与率が上がるというプログラムで、利用者を楽天グループで囲い込んで収益を上げる戦略だ。しかし、ドコモグループ内のネットサービスはどれも競争力が弱く、そこを優遇しても魅力アップにはつながらない。そのため、今回dポイントが導入するランク制はあらゆる加盟店での利用が対象になっている。

ドコモにとってはポイントの原資負担が増えるだけに、アクティブな会員をどれだけ増やせるのか、そして収益拡大にどうつなげるのかが問われている。狙い通り、dカードやd払いの取扱高を増やし、「25年度には収益の過半を(非通信の)スマートライフ事業と法人事業で創出する」(井伊基之社長)ことができるのか、重要なカギを握る。

(日経ビジネス 石井大智、佐藤嘉彦)

[日経ビジネス電子版 2022年3月9日の記事を再構成]

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