日本光電、インド軸にアジア注力 新工場で検査試薬増産

生体モニターなどの医療機器を手掛ける日本光電がアジアでの収益増に乗り出す。インドに検体検査試薬の新工場を設立し、風邪の原因などを調べる試薬を生産する。投資額は約11億円で、床面積は既存のインド工場の約4倍になる。同社の日本事業は頭打ちの状態だが、アジアでは好調だ。人口増で試薬の需要が増え続けるインドを足がかりに成長戦略を描く。
日本国内の事業は頭打ち
子会社である日本光電インディアを通じ、インドのハリヤナ州に設立する。床面積は約8900平方メートルで、同国で既に持つグジャラート州の工場の約4倍。2024年春の稼働を予定している。投資額は土地取得や建屋建設、生産設備などに充てる。従業員数は約30名を予定している。
生産するのは血液中の赤血球や白血球、血小板の数などや赤血球中のヘモグロビンの量などを測定する血球計数器に使う試薬だ。感染症やがんなどの重症度、治療効果の判定に使う。インドでは人口増が進んでおり、感染症が流行している。また同国で検査機器の設置が拡大していることも後押しする見込みだ。
日本光電にとって、インドの新工場は成長の足がかりになる。同社の経営計画が示す24年3月期までの連結の成長見通しは芳しくない。連結売上高は1970億円と、21年3月期比で1%減と見ており、日本国内の事業は頭打ちの状態だ。ただ、24年3月期の海外売上高は同1%増、アジア(一部他地域含む)の売上高は同10%増と成長市場と見なしている。
インドで日本光電の純正の試薬を生産することで市場拡大を目指す。08年には試薬を生産・販売する合弁会社を設立し、純正試薬を現地で安定供給できるよう環境を整え始めた。以降も新会社の設立や吸収合併を続けてきた。
アジア市場での成長見込む
地域別の海外市場では米州の21年3月期の売上高は302億円とアジア他(190億円)より6割大きいが、24年3月期までの成長比率は6%とアジア他(10%)に劣る。欧州では中国など他国のメーカーと価格競争が起きる市場環境で、同成長比率は24%減と見通しは厳しい。
日本光電は20年に海外市場向けに血球計数器の高機能機種を発売しており、複数種類の検査を短時間でできるメリットを打ち出している。同様の分野ではシスメックスが一部競合する可能性がある。また、医療機器を遠隔で監視するシステムも海外で提供する計画だ。
同社が5月に発表した23年3月期の連結業績見通しは前期比で売上高が5%、純利益が53%減となった。新型コロナウイルス下で生じた感染者に使う人工呼吸器などの特需がなくなる。インドでの事業の成否がコロナ後の成長戦略を左右する。
(茂野新太)
